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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1454/2051

第1454話 ある感情の行方(1)

「眠い・・・・・・しかも、昨日動き過ぎたせいで全身とんでもねえ筋肉痛だし・・・・・・」

 4月24日水曜日、昼の12時過ぎ。昼休みを知らせるチャイムの音を聞きながら、影人は自分の机に突っ伏し、そう言葉を漏らした。

「だ、大丈夫ですか帰城さん・・・・・・? 何だか、凄く疲れていらっしゃるようですが・・・・・・」

 そんな影人に、隣の席の海公が少し心配そうな顔でそう聞いて来た。

「あー・・・・・・大丈夫だ。いや、正直大丈夫じゃないんだが大丈夫だ・・・・・・」

 海公の問いかけに、影人は死んだような声でそう答えを返した。昨日の零無との激闘のせいで、影人の体は尋常ではなく疲労していた。昨日帰ってすぐに爆睡したのに、疲れは全く取れていなかった。なんならば、今日は普通に遅刻しそうになったほどだ。

「そ、そうですか・・・・・・」

 影人の答えを聞いた海公は、そう言ってそれ以上は深く聞いてこなかった。そして、海公は自分の鞄から弁当箱を取り出した。海公の気遣いに影人は心の中で感謝した。

『おいおい情けねえな。へばってんじゃねえよ。それでも若者か、ああん?』

 あまりの疲れから、影人が意識の半分を暗闇に明け渡していると、影人の中にそんな声が響いて来た。その声の主――イヴにそう言われた影人は、残り半分の意識を使い、ボソリとこう呟いた。

「仕方ねえだろ・・・・・・普通に今日学校来てるだけでも奇跡みたいなんもんだっての・・・・・・」

「? 何か言いましたか帰城さん?」

 影人の呟きに隣の海公が反応した。反応を見るに、正確な言葉までは聞き取れてはいないようだ。

「いや、別に・・・・・・じゃ、また後でな春野・・・・・・」

 影人はムクリとダルそうに上半身を起こすと、鞄から弁当と水筒を取り出した。そして、それを持って無理やり立ち上がると、ヨロヨロとゾンビのように教室を出た。教室にいては昼飯を食わずに寝てしまうと確信したからだ。弁当を丸ごと残してしまっては、作ってくれた日奈美に申し訳がない。ゆえに、外で食べようと影人はなけなしの思考で考えた。

「あ、はい。また後で」

 海公はゾンビのような影人の背中に、そう言葉を掛けた。











「よし、ここでいいだろ・・・・・・」

 数分後。相変わらずゾンビのような足取りで、中庭にやって来た影人は、中庭の端のコンクリートの上に座ると、軽くため息を吐いた。ここまで来るだけでもかなり疲れた。

「はあー・・・・ったく、今日もいい天気だな・・・・・・」

 弁当と水筒をコンクリートの上に置いた影人は、前髪の下の両目を軽く細めながら空を見上げた。今日も天気は快晴。春日和だ。

「ダメだ。春の陽気を直に感じたら、さっきよりも眠たくなって来た・・・・・・詰んでやがる・・・・・・」

 再び強烈な眠気が襲って来る。だが、ここで寝てしまえば放課後までぐっすりコースだ。影人は荒療治ではあるが、自分の右頬を自身の右手でパンッと叩いた。結構な力で。

「痛え・・・・・・だが、目は軽く覚めたな。また眠気が襲ってくる前に、飯食っちまうか」

 ヒリヒリと痛む頬を感じながら、影人は弁当を開け箸を取り出し昼食を摂り始めた。今日のおかずはきんぴらに卵にウインナー、そしてちくわの磯辺揚げだ。ご飯には海苔と卵のふりかけが掛けられている。影人はのんびりと、だがいつもより少し早めに孤独のグ◯メ(まあこいつの場合はただのぼっち飯だが)を終えた。

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