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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1445/2051

第1445話 神と影は己を信じ、ただ笑う(4)

『ニョ! キシ、キシシ!』

 陽華が未だにどこか呆然としていると、突然陽華の服の裾が何かに掴まれた。陽華が視線を下に向けると、そこには不思議な生物がいた。人間の5歳児くらいの大きさで、体型も子供と同じだ。だが、体の色は闇一色で、顔に当たる部分には、両目と口の位置に白い穴が空いていた。その不思議な生物は、口の部分にある白い穴を三日月状に歪ませ、笑みを浮かべていた。

「わっ!? な、何この生き物!?」

 その生物を見た陽華は再び驚愕した。その生物を見たシェルディアは「ああ、大丈夫よ」と言って、言葉を続けた。

「その子たちは無害な生き物らしいから。前に影人が言ってたわ。だから、心配とかはいらないわ」

「そ、そうなんだ・・・・・・よく見ると、ちょっと可愛いかも」

「ええ、何だか悪戯っ子感があって可愛いわね・・・・・・」

 シェルディアの説明を受けた陽華と明夜がそんな感想を漏らした。どうやら、この謎の生き物は他の場所にも現れているらしく、「な、何よこの生き物」、「うわっ、真っ黒な変なやつが」といった声が聞こえて来た。声の主はキベリアとイヴァンだった。

『キシシ!』

 陽華と明夜たちの近くにいたその生物は笑い声のようなものを上げると、ひょこりと壁の縁に手を掛け階下を覗き始めた。他の場所にいた生物も同じ行動を取っていた。

「・・・・・・どうだ零無。これが俺の『世界』、何者をも必ず殺し滅する『影闇の城』だ」

 階下中央には黒衣に身を包んだ金眼の男、この『世界』の顕現者にして『影闇の城』の城主でもある影人が立っていた。その背後には、影人が着くべき空の玉座があった。

「知ってるよ。レゼルニウスの記憶で見たからな」

 影人のその言葉に、同じく階下におり影人と対峙していた零無はそう言葉を返した。

「確かにお前の『世界』は強力だ。神だろうが何だろうが全てを滅する力がある。だが、それでも勝つのは吾だという確信がある。だからこそ、吾はお前を妨害しなかったのさ」

「・・・・・・そうかよ」

 続けてそう言った零無に影人はそう言葉を返事をすると、こう言葉を述べた。

「その慢心がお前の敗因だ。零無、今からお前に俺が決定を下す。死という決定をな」

 次の瞬間、影人に変化が訪れる。徐々に影人の体がぼんやりとした闇に覆われ始めた。闇は足元から影人の体を上り、やがて胴体に、そして顔に至り、影人の全身を覆った。影人は影のような姿になった。唯一、両目と口の部分に白い穴が開き、そこが顔であるという事を認識させた。

『お前の魂に死の安寧をくれてやる』

 影と化した影人はスッと右の人差し指を零無に、いや正確には零無の胸部に向け、笑みを浮かべる。零無の胸元には白い炎のようなものが灯っていた。それは、まっさらに浄化された零無の魂だった。

「悪いがいらないよ。吾は死を望んでいないからね。吾が望むのは、お前と過ごす未来だけだよ」

 零無がフッと笑みを浮かべると、次の瞬間零無の全身から凄まじい透明のオーラが噴き上がった。そのオーラはこの世のものとも思えぬ輝きを放ち、零無自身も淡く発光していた。

「っ、何て力・・・・・・」

 零無の力が爆発的に上昇した事を感じたシェルディアが、驚いたようにそう言葉を漏らす。シェルディア同様、零無の爆発的な力の上昇を感じとった者たちは驚いた(まあ中には興奮している者たちもいたが)顔を浮かべていた。

「今の吾の全ての力を解放した。その代わり、長くは持たないがね。言っただろ。正面から受け止めてやるってな。今のお前は不死なんだろ。なら、多少は無茶が出来るってもんだぜ」

『はっ、てめえの無茶が俺に届くかどうか見ものだな』

 透明の輝きを放つ零無と影と化した影人。その両者が対峙している姿は、まさしく光と影。神と悪魔。対照的なものだった。

「・・・・・・陽華、明夜。よく見ておきなさい。これから始まる最後の攻防は、恐らく至上の戦いの1つとなるわ」

「っ、うん・・・・・・!」

「しっかり見届けるわ・・・・・・!」

 シェルディアの言葉に陽華と明夜が頷く。場を最高潮の緊張が満たす。

『・・・・・・』

「・・・・・・」

 影人と零無が無言で互いを見つめ合う。そして数秒後、

『シッ・・・・・・!』

「フッ・・・・・・!」

 両者は地を蹴った。影人と零無、両者の因縁が真正面からぶつかり合い、最後の火花を散らせた。

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