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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1440/2051

第1440話 黒衣の怪人、彼の名は(4)

「やる事ってなんだ? そのニュアンスじゃ、零無を斃す事を指してるんじゃないだろ?」

「最終的にはそれに繋がる事だがな。確かに、お前の言う通り直接的ではない。あくまで、我が言ったのは間接的なものだ。影人、ソレイユの所に行け。行けば後は分かる」

「っ?」

 ソレイユの元に行け。そう言われた影人は更に疑問が深くなった。だが、ここは行くしかないだろう。影人は光導姫や守護者、闇人たちの間を潜り抜け、ソレイユの元へと向かった。

「こら帰城くん! さっきはよくもやってくれたわね!? 終わったら説教だから!」

「すいません会長! 分かってます!」

 その途中、声を掛けて来た真夏にそう言葉を返し、

「いやいい体験をさせてもらったよ。仮死体験なんて中々出来る事じゃない。感謝するよ帰城くん」

「ああ、そうかい! やっぱ変わってるよあんた!」

 ロゼにそう言葉を返し、

「お兄さん! ここは私たちに任せてください!」

「ありがとよ聖女サマ!」

 ファレルナにそう言葉を返し、

「帰城くん! 今度こそ一緒に戦うよ!」

「そうだな! サンキューだぜ香乃宮!」

 光司にそう言葉を返し、

「帰城影人! 仮死とは言えレイゼロール様を殺した事は後で償ってもらいますよ!」

「分かってる!」

 フェリートにそう言葉を返した。それ以外にも影人に声を掛けて来る者はたくさんいたが、正確に誰が何を言っているのかまでは今の影人には分からなかった。

「影人!」

「ソレイユ! レイゼロールにお前の所に行けって言われたんだが・・・・・・」

 ソレイユが影人の名を呼ぶ。ソレイユの元に辿り着いた影人は自身もソレイユの名を呼ぶと、そう言葉を述べた。

「ええ、分かっています。特例中の特例として、()()はシトュウ様が出してくれました。神界の神々たちも仕方なく納得するでしょう。だから、1度戻りますよ」

「ちょ、ちょっと待て! 話が全く見えてこねえ。戻るってどこにだよ?」

 訳が分からないといった感じで影人がソレイユにそう聞き返す。影人の問いかけにソレイユはこう答えた。

()()にです。でなければ、()()は出来ませんからね」

 そう言うと、ソレイユは影人の手を握った。

 次の瞬間、影人とソレイユが光に包まれた。












「はあー・・・・・・ったく、何でこうも邪魔が入るかね」

 新たにこの場へとやって来た数十人の者たちを見た零無は面倒くさそうにそう言葉を漏らした。そして、不機嫌を隠さない様子でその者たちに向けてこう言った。

「お前らか? 影人を止めようとしてた奴らは。何で生きてるんだよ。影人は全員殺したって言ってたぜ」

「ふん。いくら愚か者のあいつでも、そんな事はするわけがないだろう。あくまで我たちを少しの間無力化していたに過ぎん」

 零無の言葉に答えたのはレイゼロールだった。レイゼロールは不愉快極まりないといった目で、零無を睨みつけていた。

「ちっ、そうかよ。というか、口の利き方がなってないなレイゼロール。影人が知ってたって事は、お前も知ってるんだろ? お前を創ったのは吾だぜ。創造物が創造主に逆らってんじゃねえよ」

「だから何だ? 貴様のような奴が例え我の創造主だとしても、貴様を殺す事に躊躇いはない。醜い怪物め、貴様と話していると反吐が出る」

「言うじゃないか。たかだか吾の暇潰しに創られただけの存在が」

 零無とレイゼロールがそんな言葉を交わしている時だった。突然天から光の柱がある場所に降り注いだ。その光景を見た零無は「っ?」とその顔を疑問から歪めた。

「あの光は転移の光? いや、神送還の光か?」

「行ったか・・・・・・」

 その光の柱を見た零無はそう呟き、レイゼロールはそう言葉を漏らした。零無の言う通り、それは地上に降りていた神が神界に帰る送還の光だった。

「さて、気張るぞお前たち。あいつが戻って来るまでの間、我たちがこいつの相手をする」

 レイゼロールの言葉に各々がそれぞれの反応を示す。その反応は人によって違っていたが、総じて了解の意を示すものだった。

「ああ? 何だ、お前ら雑魚が吾の相手をするだと? いらねえよ、早く影人を出せ」

「悪いけど、彼は今はいないんだよ。ソレイユと共に1度神界に行ったからね」

 苛つく零無にラルバがそう答える。ラルバの言葉を聞いた零無は「は?」と声を漏らした。

「ちっ、さっきの送還の光に影人もいたのか。ふざけやがって」

 零無は不機嫌で仕方ないといった様子でそう吐き捨てると、ゴミを見るような目をレイゼロールたちに向けた。

「だが、あの子が吾との戦いから逃げ出す事はあり得ない。何を企んでいるかは知らないが、いずれ戻って来るだろう。それまでの間にお前ら全員殺しておくか。ゴミ掃除だ」

 零無が全身から透明のオーラを放つ。同時に圧倒的なプレッシャーも放たれる。臓腑が握り潰されるような、そのプレッシャーをぶつけられた者たちの顔が歪む。多くの者たちの戦意が挫かれそうになる。

 だが、

「・・・・・・負けない。帰城くんはずっと1人で戦って来たんだ! 今度は私たちが帰城くんを助ける!」

「そうよ! 私たちの大切な人のためにも、私たちはあなたに立ち向かう! それが私たちの為すべき事だから!」

「恐怖に立ち向かえる勇気があるのが人間の強さだ! 友達のために僕は戦ってみせる!」

 ここにいる者たちは、そのプレッシャーに挫かれなかった。陽華、明夜、光司は力強い声でそう言った。

「ははっ! いい化け物具合じゃねえか! 興奮して来たぜ!」

「尋常ならざる強者か。面白い」

 冥や葬武などの戦闘狂が続いてそんな声を上げた。それ以外の者たちも、プレッシャーに抗う意志をその顔に宿していた。

「クソッタレの命知らず共が。お前らに真の恐怖を教えてやる」

「ふん、ほざけ」

 レイゼロールが『終焉』を解放し、場の緊張は最大まで高まった。

 そして、

「死ねよ」

「お前がな」

 零無とレイゼロールが最後にそう言葉を交わし合うと、戦いの幕は開かれた。

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