第143話 月下激戦(3)
「分身ごときが・・・・・・」
提督はその右手を避けると、素早く2丁の拳銃を分身の胸へとあてがった。そして2つの引き金を同時に引いた。
ゼロ距離からの射撃はフェリートの分身体に多大なダメージを与え、分身体は霧散した。
「随分と舐めてくれるな、フェリート・・・・・・!」
「決してあなたを舐めているわけではありませんよ・・・・・・!」
フェリートに向かって銃を乱射する提督。フェリートはそれらを全て回避してみせた。
(俺も撃っとくか)
少し軽めの気持ちで、影人も未だに両手に持っていた拳銃をフェリートに向け発砲した。フェリートに闇色の弾丸と、提督の銀色の弾丸が殺到する。
「これは容赦のない! ですが、無駄です。執事の技能が1つ、加速」
突然、フェリートが消えた。いや、正確には消えたように見えたというべきか。
「!?」
提督は驚いてるようだが、影人の金の瞳は全てを捉えていた。
(超速のスピードか! ちっ、提督の後ろに回りやがったか!)
影人の金の瞳がフェリートの正確な位置を捉える。フェリートはナイフで後ろから提督の首を刎ねようとしていた。
(ちっ! 間に合うかっ!?)
「鎖――」
影人が言葉を紡ぎきる前に、フェリートのナイフが提督の首に触れた。
提督の命は尽きた。そう思われた時、奇妙な事が起こった。
何の前触れもなく、そのナイフがフェリートの手首ほどまで凍ったのだ。
「っ!? これは・・・・・・!」
「悪いが3位の名は伊達ではないのでな」
提督は素早く振り返ると、接近していたフェリートに銃撃を浴びせた。フェリートは軽やかにその銃撃を避けると、再び何事か呟き宙へと浮いた。
(何が起こった? 視ていても分からなかったぞ・・・・・・・)
影人は正確に詳細に事態を視ていた。ナイフが提督に触れたその瞬間、突如としてフェリートの手首ほどまで凍ったのだ。それこそ何の種もなくだ。
「っ・・・・・・・・そうでしたね、あなたにはそれがありました」
「さっさと降り直してこい。興が冷める」
(光導姫『提督』・・・・・・・・俺が思っている以上に底が知れない人物みたいだな)
影人は提督に対する評価と危険度を内心上方修正した。
(まだか? そろそろ3分くらい経ったと思うが・・・・・・・)
いやに3分が長く感じる。おそらく、あと少しのはずなのだ。影人は冷静に状況の俯瞰に努めた。
(残り時間は1分と仮定。その間は全力で提督をさりげなく守る。これは変わらない。だが、問題は提督も俺を攻撃してくるということ。しかもどういう理屈か提督に近づけば凍っちまう。だから、俺も近づいても中距離くらいにしないとな)
先ほどまで不用意に提督に近づいていた自分の甘さを修正する。これからは出来るだけ提督には近づかない。
「闇よ、拡散し追い狂え」
脳内でイメージを固め、それを言葉へと出す。この言葉は闇による創造のための言葉ではない。この言葉は、闇による一撃の強化のための言葉だ。
影人は右手の拳銃をフェリートに向ける。影人の持つ闇色の拳銃の銃口に闇が渦巻く。そして影人は引き金を引いた。
弾丸はフェリートに向かって1直線に飛んでいく。だが、フェリートは自分の攻撃を予見していたかのように、その弾丸を避けた。
だが、影人の放った弾丸は空中でカーブを描くと、2つに分裂して再びフェリートへと襲いかかった。
「くっ・・・・・・・・・!」
フェリートは宙を移動しながら再びその攻撃を避けた。しかし、またしても弾丸たちは空中でカーブすると、さらに分裂した。
「・・・・・・・・そいつらは無限に増えてお前を追ってくるぞ」
「何とも厄介ですね・・・・・・!」
避けることを諦めたのか、フェリートは左手のナイフで飛来してくる弾丸を迎撃している。右手はまだ凍ったままので、あれではいつか限界が来るだろう。
(まあ、あんなのでフェリートをやれるとは思っていないが10秒くらいは稼げるだろう)
今の状況なら10秒でも値千金だ。さてどう動くかと影人が考えた時には、もう1人の敵は影人に攻撃していた。
「お前を見逃していたわけではないぞ、スプリガン」
「・・・・・・・だろうな」
銃撃を行いながら、自分に近づいてきた提督。影人は中距離を保つために、バックステップで後方へと移動する。その際、こちらも2丁の拳銃で応戦する。
提督は銃弾を避けながら近づいてくるが、提督が影人に触れることはなかった。
なぜなら提督の体が光に包まれ始めたからだ。




