第1427話 彼の者は闇に堕つる(5)
「はっはっは! 久しぶりね帰城くん! この私が助けに来て上げたわ! ちなみに今は大学1年よ!」
「お兄さん。また会えて嬉しいです」
「けっ、面倒だがてめえには世界を救ってもらった恩があるからな。借りを返しに来てやったぜ」
「同じく私もですわ」
「・・・・・・私は贖罪のためにだ」
「私も今まであなたに受けた恩を返すために」
「私は何か人が困ってるようだから来たよ」
「私もだぞー!」
真夏、ファレルナ、菲、メリー、アイティレ、風音、エルミナ、メティたち光導姫は影人にそう言って来た。
「そういうこった。スプリガンさん、あんたにこの世界を救われた以上、俺たちはあんたに返しきれないくらい大きな借りがあるのさ」
「ふん、普通なら報酬をもらうところだが、今回だけ特別にタダで働いてやる」
「お前は真の一流だ。俺は真の一流には敬意を払う。そして、力にもなろう」
「ま、俺も皆さんと同じ理由だなー」
「俺もまた戦うのなんて面倒くさいし死ぬほど嫌だけど・・・・・・まあ、ここで断るほど人間堕ちちゃいないから」
「何でか知らないけど、メルクーリ家には『前髪が長すぎて顔の上半分が見えない奴は助けろ』って家訓があるんだよ。だから、嫌だけど助けてやる」
「戦いがあるから来た。以上だ」
「帰城影人さん。微力ながら、僕もお力添えをさせていただきます」
刀時、ハサン、エリア、ショット、イヴァン、ノエ、葬武、プロトたち守護者も影人にそう言ってきた。
「まあ、レイゼロール様の命令ですがお助けに来ましたー。こんなピエロが力になるのは難しいかもしれませんがね」
「嫌だけど、本当に死ぬほど嫌だけど、レイゼロール様とシェルディア様の命令だから戦ってあげるわよ」
「己はあの時レイゼロール様を救っていただいた恩義を返しに」
「僕もそういう理由かな」
クラウン、キベリア、殺花、響斬たち最上位闇人も影人にそう言って来た。
非常に多くの者たちからそんな言葉を送られた影人は、驚いた顔になりながらも、フッとその口元を少しだけ緩ませた。
(ったく、こいつらは。本当に揃いも揃ってよ・・・・)
お人好しで、俗に言えばいい奴ら。影人はそんな感想を胸の奥で呟いた。
(正直に言えばありがたい。これだけの奴らが力になってくれるなら、零無に勝てる可能性も上がるかもしれない。だけど・・・・・・だからこそ・・・・・・)
影人はここにいる者たちを死なせたくはなかった。ただ単純に、自分の為に戦ってくれた誰かが死ぬのは気分が悪いから。
ゆえに、
「・・・・・・邪魔だてめえら。どんな奴だろうが、今の俺の道を阻む者に俺は容赦はしねえ。今すぐにどきやがれ」
影人は冷たい声で全員に対してそう言った。
そして更に、
「そうしないって言うなら・・・・・・俺は無理やりにでもそこを通るぜ。てめえら全員を叩き潰してでもな」
影人はこの場にいる全員にそう宣言した。
――彼の者は闇に堕つる。深く昏い、優しさゆえの闇の中に。




