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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1425/2051

第1425話 彼の者は闇に堕つる(3)

「・・・・・・無駄だソレイユ。恐らく、今のこいつには何を言っても通じん。今のこいつは・・・・・・感情の闇に捉われている。少し前までの我のようにな」

「・・・・・・そうね。レイゼロールの言う通りだわ。今の影人には残念ながら、言葉は通じないでしょうね」

 影人の様子を見たレイゼロールとシェルディアがその事を悟る。それ程までに、影人は頑なだった。

「・・・・・・ならば、方法は1つだけだ。このバカに力づくでも我たちの価値を教えてやる」

 レイゼロールがスッとその目を細め、その身から闘気を放つ。その闘気を感じ取ったシェルディアが軽く目を瞑る。

「・・・・・・悲しいけれど、道はそれしかないようね。残念だわ。あなたとこういう形で戦うような事は2度とないと思っていたけれど・・・・・・」

 シェルディアも自身の重圧を解放した。途端、圧倒的な強者としての波動が放たれる。2人のその様子にソレイユは戸惑った表情を浮かべた。

「ま、待って下さい2人とも! 本気で影人と戦う気ですか!?」

「ああ。それしか方法はないからな。バカ者は殴って正気に戻してやるに限る」

「そういう事よ。何、決着は一瞬でつくわ。今の影人はスプリガンではない。ただの、一般人なのだから」

「そ、そんな・・・・・・」

 既に覚悟を決めた2人の言葉を受けたソレイユが、どこか呆然とした顔になる。まさかこんな事になるとは。もう自分たちが戦い合う理由なんて何もないはずなのに。ソレイユはその事が悲しくて、悲しくて堪らなかった。

「ところでだ影人。お前はこの場にいるのが、我たちだけだと思っているようだが・・・・・・それは間違いだ」

 レイゼロールはそう言うと、パチンと右手を鳴らした。すると、

「――やっとかよ。だが、はっ、面白い事になって来たじゃねえか」

「――ははっ、同意するぜ」

「――ふん」

 そんな声がどこからか聞こえて来た。声と同時に、レイゼロールの周囲、或いは上空に複数人の男女が現れた。その数は全部で9人。今声を発したのは、その中の道士服の男と赤みがかった黒髪の男、そして紫紺の髪の少女だった。

「っ、お前らは・・・・・・」

 その9人に見覚えがあった影人が前髪の下の目を軽く見開いた。そう。彼・彼女らはかつての影人の敵。全員と直接戦ったわけではないが、その実力が尋常ではない事を影人は知っていた。

「最上位闇人ども・・・・・・『十闇』か」

「ええ、そうです。お久しぶりですね、スプリガン。いえ、今のあなたの名前は帰城影人でしたか」

 影人の呟きに執事然とした男、「十闇」第2の闇『万能』のフェリートが頷いた。フェリートは軽く口角を上げた作り笑いを浮かべると、影人の名前を呼んだ。

「・・・・・・はっ、お前らまで揃いに揃ってかよ」

「うん。でも、俺たちだけじゃないよ。ここに、君のために集ったのは」

 影人の少し呆れたような、困ったような言葉に、今度は黄色に近い金髪に一部が黒髪の少年、「十闇」第1の闇『破壊』のゼノがそう言葉を返して来た。

「っ?」

「ほら、レール。全員の透明化を解いてあげなよ」

 意味が分からないといった顔を浮かべる影人。そんな影人を見てか、ゼノはレイゼロールにそう言った。

「ああ、分かっている」

 レイゼロールが再び右手を鳴らす。それも2度。すると、ソレイユとラルバの周囲にまた複数人の人間たちが現れた。

「っ!?」

 更に新たに現れた複数人の男女。その人物たちの姿を見た影人は再びその前髪の下の両目を見開いた。

「何で・・・・・・お前らの、その姿は・・・・・・」

 その男女たちにも影人は見覚えがあった。ただ、影人が真に驚いたのは彼・彼女らの纏うその装束だった。コスチュームのようだったり、軍服のようであったり、和装のようであったり、彼・彼女らの纏うその装束は、いわゆる普通の服とはどこか違っていた。

「光導姫、守護者・・・・・・」

 そう。それはかつてレイゼロール率いる闇側の勢力と戦っていた者たち。レイゼロールとの最後の戦い以来、この世界から消えたはずの者たち。その者たちが、どういうわけか今影人の前に現れた。

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