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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1424/2051

第1424話 彼の者は闇に堕つる(2)

「・・・・・・なあ嬢ちゃん。悪い、何も聞かずにそこをどいてくれないか。それで、家に帰って夜風にでも当たって茶を飲めばいい。きっと、そいつがいいぜ」

 シェルディアの問いかけに、影人は答えを返さずにそんな言葉を放った。影人にそう言われたシェルディアは少しだけ怒ったように、その目を細めた。

「真面目に答えて影人。冗談を言う場面じゃないわ」

「冗談なんかじゃない。俺は大真面目だぜ。頼むよ嬢ちゃん。事情が、情勢が変わったんだ。俺は1人で零無に会いに行く。そうしなきゃならないんだ」

 影人は真剣な表情でシェルディアの言葉を否定した。そう。先ほどの言葉は影人の心の底からの言葉だ。シェルディアにはここで帰ってもらいたい。でなければ、きっと。

「――バカ者だな。普段のお前もバカ者はバカ者だが、今のお前は本当に心の底からの大バカ者だ」

「っ!?」

 そんな時、急に第三者の声が響いた。その声に影人が再び驚いた顔になる。すると、シェルディアの横の空間に、その人物は突然現れた。まるで、今まで透明にでもなっていたように。

「レイゼロール・・・・・・お前もいたのか・・・・・・」

 長い白髪にアイスブルーの瞳。現れたのはレイゼロールだった。レイゼロールは影人をジロリと見つめると、こう言葉を放った。

「我だけだと思うか? ふん、だから貴様は愚か者なのだ」

「っ?」

 レイゼロールの言葉を聞いた影人が意味が分からないといった顔になる。すると、

「――ええ。レールの言う通り、今のあなたは愚か者ですよ影人」

「・・・・・・俺はノーコメントかな。何も言える立場じゃないからね」

 レイゼロールと同じように、レイゼロールとシェルディアの横に更に2人の人物が現れた。桜色の長い髪の女性と金髪碧眼の男性、ソレイユとラルバだ。

「お前らもかよ・・・・・・」

 新たな2人の登場に、影人が思わずそう言葉を呟く。という事は――

「――私もいますよ」

「・・・・・・だろうな。シトュウさん」

 ソレイユとラルバの隣からオッドアイの女性、シトュウが現れた。透明化していたという事は、恐らくレイゼロールの力によるものだろう。

「まずは謝罪を。申し訳ありません帰城影人。私のせいで、事態は非常に厳しいものとなりました。そして、そのせいで零無は何らかの方法をとってあなたに連絡を取った。そうでしょう?」

「・・・・・・」

「その結果、あなたは今から1人で零無と戦いに行く。全ては、私の責任です」

 影人の無言を肯定と取ったシトュウが言葉を続ける。その言葉に影人はこう言葉を返した。

「気にするなよ。こうなっちまったもんはもう仕方がねえんだ。・・・・・・取り敢えず、どいてくれよ。俺は先を急いでるんだ」

「どきませんよ。あなたが1人で零無の所に行こうとしている限り。行くならみんなでです。影人、私たちは言ったはずですよ。今度はあなたの力になると」

 ぶっきらぼうな口調の影人に、ソレイユが毅然とした態度でそう言葉を返す。ソレイユの言葉は、()()()()()()()()()()()()()()()()

「・・・・・・そうだな。お前らはそう言ってくれた。あの時の俺も、それをありがたいと思って受け入れた。素直に心強いって思えたよ」

「だったら・・・・・・!」

 影人の言葉を聞いたソレイユが言葉を挟もうとする。だが、それよりも早く影人は言葉を述べた。

「だけどな、状況が変わっちまったんだよ。俺は1人で零無と戦う。それが俺が決めた事だ。悪いが、俺は1度決めた事は基本的には曲げねえぞ。それは、お前が1番よく知ってるだろ。ソレイユ」

「っ、影人・・・・・・」

 ソレイユがなぜといった顔を浮かべる。今の影人はソレイユが知っている影人ではない。確かに、影人は少し常人とは違う感覚を持っているし、基本は1人で行動する人間だ。

 しかし、その奥底には常に善意と人を理解する精神を持っている。普段の影人ならば、渋りはするかもしれないが、頭を下げて一緒に戦ってほしいと言うはずだ。それがなぜこれほどに悪い意味で頑ななのか。ソレイユには分からなかった。

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