第1413話 邪智胎動(4)
「『時』の力よ、私を加速させなさい」
シトュウがそう唱えると、シトュウが爆発的に加速して、零無に接近した。その速度は神速すらも超える超神速。シトュウは左手に複雑な魔法陣を纏わせ、零無に触れようとした。
「おっと。そう簡単には喰らわんよ」
だが、零無はそのシトュウの速さに反応し、ひらりと回避した。零無はシトュウが加速したのと同時に、自身の反応速度を上げたのだった。
「次は吾の番だな」
零無が軽く右手を鳴らす。すると、シトュウの周囲に透明の魔法陣が複数展開した。次の瞬間、尋常ならざる爆発が起きた。普通ならば零無もただでは済まない距離だが、爆発が起こる前に零無は自身の全方位に障壁を展開していた。
「『時』の力よ」
だが、シトュウは爆発が起きた瞬間に、自身の意識を時の力で加速させ、自身の反応速度を爆発的に上げていた。そして、その意識を以て新たに力を行使する。その力の行使によって、
「ん?」
爆発は消え去った。その光景に零無は一瞬不思議そうな顔になったが、すぐさま納得がいったような顔を浮かべた。
「ああ、爆発を巻き戻して起きないようにしたのか。時の力で。お前はその力を使うのが1番得意だったからな」
「ええ。あなたが『無』の力と親和性があるように、私は『時』の力と親和性があります」
右手に今と同じように時を巻き戻す力を纏ったシトュウは、その右手で障壁に触れ、障壁が展開される前の時間に戻した。結果、零無を守っていた障壁が消える。シトュウはそのまま零無に格闘を放った。
「くくっ、何だかんだそれも便利な力だよな。まあ、吾の力ほどではないがな」
シトュウの放つ格闘を避け、時には反撃しながら零無がそう呟く。そう呟きながら、零無は透明の巨大な魔法陣を上空に展開した。
「奔れよ、夢想」
零無のその言葉と同時に、魔法陣からぼんやりとした透明の何かが複数現れた。それは影のような、形容し難い何かだった。
「っ」
シトュウがその影に反応する。シトュウの反応と同時にその透明の影のようなものは、その全身から透明の炎や雷を纏いシトュウに突撃してきた。シトュウは1度後方に飛び、零無から離れた。
「ははは、気をつけろよ。そいつら1体1体が何かに触れた瞬間、全てを焼くぜ。それこそ、夢想のようにな」
「・・・・・・趣味が悪いですね」
シトュウは自身に向かって来るそれらに、時を巻き戻す力を付与した両手で触れた。シトュウが触れた瞬間、それらはその存在を発生する前に巻き戻される。
「・・・・・・!」
だが、その内の1体がシトュウの背中から突撃をかけてきた。触れないと思ったシトュウは、無造作にその1体を避けた。避けられた1体は、地面に激突した。
その瞬間、
無限に続く亜空間を焼き尽くすかのような爆雷が発生した。
「っ!?」
これには流石のシトュウも驚いた。まさか、地面に触れてこうなるとは思っていなかったからだ。
「ふっ・・・・・・!」
しかし、ただ驚いただけだ。シトュウは先ほどと同じように爆発が起きた瞬間に、時を巻き戻した。その結果、爆発は再び不発になる。
(今の爆発は、地上世界なら世界の半分が焼かれていましたね。亜空間にしていて本当によかった)
シトュウは『空』の力の恐ろしさを再確認した。そして、シトュウは戦いが始まってから抱いていた違和感のようなものについて、その思考を割いた。




