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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1396/2051

第1396話 新たな生活3(4)

「でも、少し意外でした。帰城さんが霧園さんの事をそんな風に思っているなんて。確かに、霧園さんはいい人ですし、男子にもあの隔てない気遣いが人気ですけど・・・・・・帰城さんは今日初めて霧園さんを知った感じですよね?」

「ああ。基本後輩と関わる事がなかったしな。だから、後輩にどんな奴がいるのかは全く知らなかった。だから霧園もお前も今日初めて知った。霧園が善人だっていうのは、まあ話してる内に分かったよ。悪意を感じなかったからな」

「へえ・・・・・・凄いですね、帰城さんは。僕にはとてもそんな観察眼はないです」

「別に観察眼って程じゃないぜ? ただまあ・・・・・・色々と観てきたからな。それくらいは分かるつもりだ」

 影人はキラキラとした目を向けて来る海公にそう言うと、正面を向いた。

「さて、話はこれで終わりだな。じゃあな、春野。本当なら飲み物1つでも奢ってやれりゃ良かったんだが・・・・・・生憎と今は金欠なんだ。許せよ」

「いえ、そんな事はお気になさらないでください。今日は本当にありがとうございました」

 海公が律儀に頭を下げ立ち上がる。影人も立ち上がると「いや、礼はマジでいい」と言い首を横に振った。そして、影人はベンチを離れスッと海公に振り向かずに手を振った。

「また明日な、春野」

「っ! はい、また明日!」

 影人のその言葉に、海公は明るい笑みを浮かべ自身も手を振ったのだった。













「・・・・・・柄にもない事を言っちまったな。ったく、恥ずかしいもんだぜ」

 海公と別れた帰り道で、影人は先ほどの自分の言動を思い出しそう呟いた。全く何様のつもりだ。先輩風を吹かすなどという行為は大体は嫌がられる行為だというのに。

「はっ、尊敬してますなんて言われて、調子に乗っちまったか帰城影人。情けない男だな」

 自分にそう言いつつも、影人は笑みを浮かべていた。何だかんだ、影人も人間。海公に尊敬していると言われた事は嬉しかったのだ。

「ふっ、明日何か春野にお菓子でも――」

 やるか。影人がそう呟こうとして一歩を刻もうとした時だった。突然、本当に突然、


 ――何の前触れもなく世界が変わった。真夏の陽光が降り注ぐ神社の境内へと。


「っ!?」

 その現象に、その風景に影人は驚いた顔を浮かべ呆然と立ち尽くした。影人が立っているのは参道の真ん中。そして、その右側にあるのは――

「やあ、影人。5日ぶりだね。吾は変わらずに、ずっとお前に恋焦がれていたよ」

「・・・・・・いずれまたお前が来るとは分かってた。だけどやっぱり、お前には2度と会いたくなかったよ」

 影人は怒りと嫌悪を込めた声でそう言うと、自分の右側、そこにある大きな石の上に座っている女を睨み付けた。その前髪の下の両の目で。

「零無・・・・・・!」

「ふふっ、そう照れるなよ」

 怨嗟に満ちた影人の言葉に、零無は笑みを浮かべ、その透明の瞳でジッと影人を見つめた。


 ――日常とは唐突に、そう本当に唐突に壊れやすいものだ。特に、帰城影人の日常は。

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