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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1394/2051

第1394話 新たな生活3(2)

「・・・・・・ふっ、俺は孤独な一匹狼だ。何者にも止められやしないんだよ」

 昇降口で靴を履き替えた影人は、クールにそう呟きながら(あくまで本人はクールだと思っている。滑稽だが)、正門に向かった。少しハッキリ言い過ぎたかもしれないが、あのような人種はアレくらい言わないと分からないだろう。なにせ、悪気はないが無自覚だからだ。

「さて、これで明日ハブられてたら楽なんだがな。まあ、霧園は多分善人だからそうしないとは思うが・・・・・・はあー、面倒くせえ」

 影人が実に前髪野郎らしい捻くれた言葉を漏らし、正門を潜った時だった。後ろから、突然影人を呼ぶ声が聞こえて来た。

「おーい! 帰城さーん!」

「ん、春野?」

 影人が振り向くと、そこにはこちらに走って向かって来る海公の姿が見えた。海公を見た影人は不思議そうな顔を浮かべた。

「はあ、はあ、はあ・・・・・・」

「何か用か? というか、お前はあいつらとカラオケ行くんじゃなかったのか?」

 影人の側まで来た海公が膝に手をつき息を切らす。そんな海公に影人はそう聞いた。

「そ、それは断って来ました・・・・・・僕も、そんなに行きたくはありませんでしたから・・・・・・」

 息を整えた海公は膝から手を離し影人を見上げた。海公は男性にしては小柄で大体160センチあるかないかくらいだ。対して、影人は170センチはあるので、必然海公は影人を見上げる形になった。

「そうか。まあ、現実で女子複数の中に男子1人はキツいもんな・・・・・・」

 うんうんと思わず影人は頷いた。漫画やアニメなどではハーレムだとかで羨ましがられるかもしれないが、現実だと異性の中に1人というのは相当に堪える。

「いえ、確かにそれもあるんですが・・・・・・1番は、帰城さんに勇気をもらったからです!」

「は、はあ? 俺に勇気をもらったから・・・・・・?」

 どこか感動したような顔で、突然そんな事を言って来た海公に影人は戸惑った。影人には海公の言葉の意味が全く分からなかった。

「・・・・・・取り敢えず、ここだと色々邪魔になるから、適当に座れる場所に移動していいか?」

 話が見えないので話にどれだけ時間が掛かるか分からないという事に加えて、ここは人通りが多い正門付近。つまり邪魔になる。その事を考えた影人は海公にそう提案した。海公も「あ、はい!」と頷いた。

 それから影人と海公は風洛高校を出て、コンビニの近くにあった古びたベンチに腰掛けた。そして、影人は海公に先ほどの言葉の意味を訊ねた。

「で、俺に勇気をもらったってのはどういう意味なんだ? はっきり言って、俺は他人に勇気を与えられる人間なんかじゃないと思うが」

「い、いえそんな事はないです。少なくとも、僕は勇気をもらいました。ハッキリと自分の都合のために、霧園さんの誘いを断る帰城さんの姿に」

 海公は1度首を横に振りそんな答えを述べた。海公の答えを聞いた影人は、しかし尚も不思議そうな顔を浮かべたままだった。

「え? いや、あんなの別に普通だろ。嫌だったら断る。小学生でも知ってるぜ」

「知っていても、それをハッキリと言える人は現実には中々いないですよ。少なくとも、僕はそうです」

 海公は苦笑しながらそう言うと、ジッと地面を見つめながらこんな話を始めた。

「・・・・・・僕は自分のそういった意思が弱いところや、この容姿が嫌なんです。容姿に関しては、コンプレックスって言うんですかね。小さい時から、女性のような見た目だったので、色々と言われて来ました。毀誉褒貶っていう感じで。それに加えて、僕は今言ったみたいに意思が弱かったので、特に何も言えませんでした」

「・・・・・・」

 影人は黙って海公の話を聞く。こういった時は、ただ黙って聞いているのが1番いいからだ。

「高校生になってからは、みんな成長したからか可愛いとか、そういう容姿を褒めるような言葉ばかりになりました。でも、僕は正直に言えば嬉しくなかった。僕は自分の容姿が嫌いだから。僕は可愛いよりも、格好いいって言われたかった」

 そして、今まで地面を見つめていた海公は影人の方に視線を向けた。

「そんな時、僕はたまたま帰城さんの姿を学校で見かけたんです。たまたま見かけた帰城さんは、堂々としていました。多少は人目を引く見た目なのに。人の目なんか気にも掛けないで。その後も、色々な場面で帰城さんを見かけました。でも、いつだって帰城さんは堂々としていた。僕はそこに意志の強さを見ました。そして、僕はそんなあなたに・・・・・・尊敬の念を抱きました」

「・・・・・・なるほどな。だから、お前は俺が留年してるって知ってたのか。前から俺の事を意識してたから」

 その言葉を聞いた影人は、ポツリとそう呟いた。海公が影人が留年していた事を知っていた謎、それが今ようやく解けた。

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