第1383話 デートと女子高生たちは賑やかに(5)
「あー楽しかった!」
「本当にね。いい服も買えたし、今日は大満足だったわ」
そして約2時間後。遊びを満喫した陽華と明夜は、ニコニコとした顔でそんな感想を漏らした。陽華、明夜、影人、レイゼロールの4人はショッピングモールの外に出ていた。
「はあ、はあ・・・・・・なぜ我がこんな事を・・・・・・」
「人生は何が起きるか分からない。まあ、そんな事もあるだろうぜ」
一方のレイゼロールは疲れたような顔を浮かべ、そんなレイゼロールに影人はニヤニヤとした顔でそう言った。
「で、今日はどうだった? 多少は楽しかったか?」
影人は続けてそう聞いた。影人の問いかけに、レイゼロールは一瞬押し黙っていたが、やがてこう答えを述べた。
「・・・・・・ふん。楽しいなどとあったものか。だが・・・・・・悪くはなかった」
「「っ!」」
「うん・・・・・・そうか」
レイゼロールの答えを聞いた陽華と明夜は驚いた顔を浮かべ、影人は暖かな顔でそう呟いた。
「え、えへへ! そう言ってもらえると嬉しいな!」
「ええ。今日は本当に楽しかったわ。ありがとうね、レイゼロール」
「ふん・・・・・・」
嬉しそうな顔でそう言った明夜と陽華。2人からそう言われたレイゼロールは、軽く顔を背けた。
「じゃあ、私たちはこの辺で! バイバイ、レイゼロール、帰城くん!」
「また会いましょ!」
陽華と明夜は元気いっぱいに手を振りながら、人はどこかへと歩いて行った。
「おう、じゃあな。さて、もう夕方だし・・・・・・俺らも適当に散歩したら解散するか」
「・・・・・・任せる」
影人とレイゼロールは、並んで夕方の街を歩いた。春特有の暖かな風が吹き、その風が影人とレイゼロールを揺らす。その心地いい風を感じながら、2人は互いに無言で歩く。しかし、その沈黙は決して重苦しい空気を生まなかった。
「・・・・・・あの2人を誘ったのは我のためか、影人。お前の事だ。どうせ、我に分かりにくいお節介を焼いたのだろう。自分以外の人間とも、触れ合ってほしいとか、そのような感じのな」
沈黙を先に破ったのはレイゼロールだった。レイゼロールは影人の顔を見ないまま、突然影人にそう言って来た。
「何だ、バレてたか」
そして、レイゼロールにそう言われた影人は、あっさりとその指摘を認めた。
「舐めるな。今日奴らと出会ってから、お前は無駄に明るく振る舞っていた。無駄にな。お前の振る舞いは怪しい以外の何者でもなかったぞ」
「無駄にって2回も言うなよ・・・・・・でもまあ、お前の言う通りだ。今日はちょっと明るく振る舞ってた。はっ、やっぱキャラじゃなかったか」
「当然だ。ハッキリ言うと、少し気持ち悪かったぞ」
「いや、それは言い過ぎじゃねえか・・・・・・?」
レイゼロールからそう言われた影人は少しショックを受けたような顔になった。
「・・・・・・我が言いたいのは、別にお節介などいらんという事だ。つまりは、余計なお世話だ」
「また大分とハッキリ言うな。・・・・・・まあ、お前の気持ちは分かるぜ。俺もどっちかって言うと、お前側だし。でもな、レイゼロール」
影人はそこでレイゼロールの方を見ると、自然と笑みを浮かべながらこう言葉を述べた。
「お節介を焼くのは、お前が大事な奴だからだぜ。じゃなきゃ、誰がお節介なんて面倒なもん焼くかよ。お前の気持ちも分かるが、まあちょっとは俺の気持ちも汲んでくれよ」
「っ・・・・・・!?」
影人にそう言われたレイゼロールは、どこか衝撃を受けたような顔になると、顔を俯かせた。
「・・・・・・分かっている。お前のその気持ちは、正直に言うと・・・・・・嬉しいのだ。本当に。ただ、我はまだ素直に中々そう言えなくて・・・・・・」
レイゼロールは恥ずかしそうに、小さな声でそう言うと、意を決したように顔を上げ、こう言った。
「だから・・・・・・ありがとう、影人。今日は・・・・・・楽しかった」
「はっ、あいつらにも素直にそう言ってやりゃよかったのによ。だけど、今はそれで充分だな。ああ、そいつはよかった。俺も楽しかったぜ」
影人は笑みを浮かべ、レイゼロールの言葉を受け止めた。影人の笑みを見たレイゼロールは、自身も自然と笑みを浮かべていた。
美しい夕日が2人を照らす。夕日に照らされ中、影人とレイゼロールは肩を並べ合い、ただ歩き続けた。その2人の後ろ姿には、確かな絆が見て取れた。
――レイゼロールと影人のデートは、こうして幕を閉じた。




