第1382話 デートと女子高生たちは賑やかに(4)
「わあ、これ可愛いわね! ねえねえ、どう思う陽華?」
「うん、凄くいいと思う! あ、でも値段がちょっと高いかな」
数分後。1階のとある服屋で明夜と陽華がキャッキャとそんな言葉を交わし合っていた。明夜の手には薄い青色のワンピースが握られていた。
「・・・・・・女子だな。俺は服なんざ正直どうでもいいから、あそこまではしゃげないが」
その様子を見ていた影人は小さな声でそう呟いた。影人は自分の見てくれに興味はないので、服も基本的には動きやすい物しか着用しない。そのため、服に対して思うところが基本ないのだ。
「ふん、よくもまあ服程度であれだけはしゃげるものだな」
影人の隣にいたレイゼロールも、影人と似たような感想を漏らした。
「俺としては、お前も多少はしゃいでもらいたいがね。大体、お前はいつも仏頂面だからな」
「余計なお世話だ。大体、それを言うなら――」
レイゼロールが少しムッとした顔で影人に言葉を返そうとすると、陽華と明夜の方から突然こんな声が聞こえて来た。
「あ! この服、レイゼロールに似合うんじゃない!?」
「そうね。あれだけの美人なら絶対似合うわ。ねえ、レイゼロール。ちょっとこっちに来て、これ試着してみてくれない?」
「・・・・・・・・・・・・は?」
明夜にそう言われたレイゼロールが、意味が分からないといった顔を浮かべる。そんなレイゼロールを見た影人はニヤニヤとした顔になると、レイゼロールの背を軽く陽華と明夜の方に向かって押した。
「ほれ、言われてるんだ。さっさと行って来いよ」
「っ、影人。貴様・・・・・・!」
影人に押されたレイゼロールが、ギロリと影人を睨んでくる。だが、影人は知らぬ存ぜぬといった感じでその視線を無視した。
「ほら早く来て!」
「うんうん! 大丈夫、絶対に似合うから!」
「き、貴様ら・・・・・・! ええい、離せ!」
「「いいから、いいから」」
そうこうしている内に、明夜と陽華がレイゼロールに近づき、ガッシリとレイゼロールの両腕を握る。レイゼロールは軽い悲鳴を上げながらも、陽華と明夜に試着室に連行されていった。
「ははっ、凄え光景。ちょっと前までなら、考えられなかった光景だぜ」
その光景を見ていた影人は、どこか嬉しそうに小さな笑みを浮かべた。あのレイゼロールが、陽華と明夜に試着室に連行されている。何とまあ、不思議な光景だろうか。レイゼロールも本気で嫌ならば、少し力を出せばすぐに逃れられるだろうに。それをしないと言う事は、レイゼロールにも人間に対する少しの譲歩があるという事だろう。もしかしたら、違うかもしれないが。影人はそう思う事にした。
「・・・・・・見てるか、レゼルニウス。あいつは元気でやってるよ。だから・・・・・・安心して、これからも見守ってやれ」
影人はポツリとそう呟くと、暖かな表情で3人を見つめた。
それから、
「きゃー可愛い! ほら、レイゼロール次はこれ着てみて!」
「なっ・・・・・・!? や、やめろ。我は着せ替え人形では――」
「いいから、いいから!」
レイゼロールは明夜と陽華に色々服を着せられたり、
「負けないよ!」
「それはこっちのセリフよ陽華! 最速の女こと月下明夜とは私の事よ!」
「はっ、真の最速が誰か教えてやるよ。スト◯イト・クー◯ーを受け継ぐ男、『影速の疾走者』とはこの俺帰城影人だって事をな!」
「おい、待て。これはどうやって動かすのだ?」
陽華、明夜、影人、レイゼロールの4人でレースゲームをしてみたり、
「ほら、レイゼロール! スタンプ貯まってたから、クレープ奢るよ! ここのクレープとっても美味しいんだから!」
「ふむ・・・・・・確かに美味いな」
「まあ、食いしん坊の陽華のお墨付きだからね」
「ちょっと明夜! 言い方!」
陽華と明夜の2人がレイゼロールにクレープを食べさせたりと、色々遊んだ。




