第1375話 ドキドキ!? レイゼロールとのデート(1)
「――ってな感じだ。だから、俺も最初嬢ちゃんが吸血鬼だとか、お前サイドにいたとかは知らなかったんだよ。嬢ちゃんと会ったのは、本当にたまたまだったんだ」
土曜の昼下がり。レイゼロールと共に、特に行くあてもなくぶらぶらと歩きながら、影人はシェルディアが影人の家の隣に住み始めた経緯を、レイゼロールに説明していた。
「・・・・・・なんというか、お前は本当に奇妙なくらいに縁を持っているな。過去での我との出会いもそうだったが・・・・・・」
「いや、そこだけはマジでそう思うぜ。絶対、俺は呪われてる・・・・・・それで、嬢ちゃんは何か俺を気に入ったみたいで隣に住み始めたってわけだ。で、最初はそうとは知らなかったんだが、途中からキベリアも嬢ちゃんと一緒に住み始めた」
軽く同情するような顔を浮かべたレイゼロールに、影人は大きく頷いた。そして、そう補足した。
「そう言えば、お前はシェルディアと戦ったと言っていたが、あれは本当か? 今思えば、我の元に潜入するための嘘にしか思えんのだが・・・・」
「ああ、それはマジだぜ。あの時は俺がスプリガンとして嬢ちゃんに誘い出されてさ。そこで、初めて嬢ちゃんの正体を知ったんだ。それで、俺が勝手にブチギレて戦いになった。いやー、嬢ちゃんには悪い事した。あと、あの戦いは本当に地獄だったぜ・・・・・・」
「勝手にブチギレれた・・・・・・? それは、またなぜだ?」
「あー・・・・・・俺には零無との事があったからな。純粋な人外って事実とか、また騙されてたとか、そんな事でな。まあでも、今は嬢ちゃんと仲直りしたし何にも思ってねえよ」
「っ、そう・・・・か・・・・・・すまん」
その答えを聞いたレイゼロールが少し気まずそうに謝罪の言葉を述べた。昨日影人と零無の因縁を聞いたレイゼロールは、影人が零無の事にあまり触れたくない、という事を知っていたからだ。
「いや、大丈夫だ。お前がそういう意味で聞いたんじゃないって事くらいは分かってるし。・・・・・・それに、もう今までみたいにあいつの事を思い出さないって事は出来ないしな。あいつは復活しちまったし。・・・・・・俺も、ちゃんと向き合わなくちゃならないって事なんだろう」
「影人・・・・・・」
真面目な、それでいてどこか複雑な顔でそう呟いた影人。そんな影人を見たレイゼロールは一瞬悲しげな顔を浮かべたが、いつもの無表情に戻るとこう言った。
「ふん、安心しろ。この我がついているのだ。あいつは我が滅ぼしてやる」
「ははっ、ありがとうな。お前が味方ってのは、素直に心強いよ。悪いが、頼りにさせてもらうぜ」
影人は笑みを浮かべそう言った。それは影人の心からの言葉だった。
「さて、湿っぽい話はこれくらいにしようぜ。今日は遊ぶんだろ? なら、楽しくなくちゃだ」
「ふっ・・・・・・ああ、そうだな」
レイゼロールが小さな笑みを浮かべ、影人の言葉に同意する。その笑みを見た影人は「そうこなくっちゃな」と周囲を見渡した。
「さて、適当に歩いて来たが・・・・・・ここは駅前の近くか。取り敢えず、駅前の方に行ってみるか」
「任せる」
地元を自転車で回る事や散歩が趣味の影人は、この辺りの地理に詳しい。ゆえに、自分たちが今どこにいるのか分かった。土地勘がないレイゼロールはそう言葉を返す。
「んー、流石に休日。人が多いな」
数分後。駅前にやって来た影人は周囲を見渡すとそんな感想を呟いた。この駅前は、影人たちが住んでいる地域の中ではかなり賑わっている方だ。それは交通の便という事も関係しているが、駅前には大型のショッピングモールや、様々な店が立ち並んでいるからだ。老若男女問わず、多くの人たちが駅前には溢れていた。




