第137話 あえての結果(1)
「レイゼロール様、どうか私めに許可を頂きたく存じます」
世界のどこか。辺りが暗闇に包まれた場所。フェリートは石の玉座に座る主人に向かって平伏の姿勢を取っていた。
「・・・・・・・・・・スプリガンへのリベンジか」
自分にひれ伏すフェリートにレイゼロールは無表情にそう答えた。
「はい。このままでは終われないという私のくだらない感情もないとは言い切れません。何百年経とうとまだ若輩の身です。しかし、それ以上に許せないのは、彼の者がレイゼロール様に傷を負わせたことです」
声に怒りの感情を乗せて、フェリートは顔を上げた。スプリガンから受けた傷を修復するために弱体化していた力も、もう完全に戻った。なれば、自分の為すべき行動は1つだ。
「・・・・・・・・・・・いいだろう、と言ってやりたいがダメだ。許可は与えられん」
だが、レイゼロールの裁定はフェリートの意志とは相容れなかった。
「っ・・・・・・・・・・なぜですか、主よ」
「シェルディアが奴を個人的興味から追っている。今はそれで十分だ。それに、スプリガンはあまりに未知数に過ぎる」
レイゼロールは無意識に右手を腹部に当てた。その部位はレイゼロールがスプリガンからダメージを受けた箇所であった。
「あの時の奴の力が何なのかはわからんが、結果だけを見るなら奴は我を撤退させた。・・・・・・・・まだ時ではないのだ、フェリート。今は溜飲を下げろ」
「・・・・・・・・・・・わかり、ました。それがレイゼロール様の意向なら私はそれに従います」
フェリートはポーカーフェイスでそう言って頭を下げた。そして、立ち上がり暗闇へと消えていく。
「フェリート、お前の忠心は我に届いている。だから、早まるなよ」
「もちろんでございます。では・・・・・・・失礼いたします」
振り返りニコリと完璧な笑顔を浮かべると、レイゼロールの執事である青年の姿をした闇人は、暗闇へと完全に姿を消した。
「・・・・・・・・・・・・・厄介なことになるかもしれんな」
フェリートのあまりに完璧な笑顔を見たレイゼロールはポツリとそう呟いた。
(シェルディアがスプリガンと相対し、気まぐれから奴を生かせば、我も対応を考えねばならないか)
それ以外にも、レイゼロールがいずれ目障りな存在になると考えている新人の光導姫2人は結局まだ消せていない。レイゼロールの計画は今のところ、スプリガンに邪魔され続けている。
(いずれ奴らを召集せねばならんか・・・・・・・・・)
フェリートとシェルディアを抜いた残り8人の最高戦力のことを考えながら、レイゼロールは静かに石の玉座でこれからのことを思考した。




