第1368話 再会する光と影(3)
「なん・・・・・・で・・・・・・帰城くんは、何で・・・・・・!」
「あなたは・・・・・・あなたって人は・・・・・・!」
そして、2人は影人を強く、強く見つめると、その目から涙を流した。
「何で帰城くんは全部1人で抱え込むの!? 帰城くんは分かってるの!? どれだけの人があなたに助けられて来たか! どれだけみんながあなたに感謝してきたか!」
「あなたは、あなたは優しすぎるのよッ! でも、私はあなたのその優しさが好きで、嫌いよ! あなたの行為は、みんなの事を考えての事なんだろうけど・・・・・・! でも、あなたはみんなの事を考えてない!」
陽華と明夜が涙を流しながら、影人に溢れ出る思いをぶつけた。その思いは影人がたった1人で全てを背負い消えた事に対する悲しみと怒り。影人にそんな選択をさせた自分たちの不甲斐なさ。そして、影人の悲しすぎる優しさに対する思い。その他様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざった、どうしようもないような感情だった。
「「「・・・・・・?」」」
陽華と明夜の大声に、ファミレス店内の客たちが不思議そうな、或いは不審そうな顔を浮かべた。だが、陽華と明夜はそれどころではなく、影人に自分たちの思いをぶつけ続ける。
「分かってる! あなたにそんな選択をさせたのは、私たちが不甲斐なかったから! あなたは私たちのせいで、その道を選んだ! 分かってるの・・・・本当は、こんな事言っちゃいけないって! 八つ当たりだって! でも、でも・・・・・・!」
「せめて、言ってほしかった・・・・・・! 相談してほしかった! 分かってる! これは私たちの言い分だって! でも、いつもあなたに助けられていた私たちは、あなたの力になりたかった! だって、だって、あなたは・・・・・・!」
陽華の言葉を引き継ぐようにそう言った明夜が、涙が溢れる瞳で影人の顔を見つめた。明夜の隣にいる陽華も。そして、2人は、
「「私たちの大切な人だから・・・・・・!」」
そう言った。
(ああ、そうか・・・・・・そう言ってくれるのか、お前たちは・・・・・・)
大切な人。ヒーローや憧れ、などといった言葉ではなく、いっそ陳腐なまでに聞こえるその言葉。だが、最も身近で、本当に大事な人にしか言わない言葉。
「はっ・・・・・・本当、お前たちはバカなくらいに善人だよな・・・・・・」
気がつけば、影人はポツリとそう言葉を漏らしていた。無意識に小さな笑みも作りながら。
「「っ・・・・・・?」」
影人の呟きを聞いた2人が、意味が分からないといった顔になる。まあ、わからないだろう。捻くれ屋の言葉の正確な意味は。
(ありがとうな朝宮、月下。こんな俺のために泣いてくれて。怒ってくれて。絶対に口では言えねえが、お前らのその気持ちは、本当に嬉しいぜ)
傲慢な言い方にはなるが、それでこそ朝宮陽華と月下明夜だ。誰に対しても真摯になれる。誰よりも真っ直ぐで優しい心を持ち、折れない本当の強さを持ち、最終的には、全ての光導姫や守護者の想いを纏め、絶望の底の底に沈んだレイゼロールを人の光で浄化した2人。
そして、
(やっぱり、お前たちは・・・・・・俺が守るべき宝だよ)
こんな自分が守らねばと無意識に思っていた少女たち。最後まで陽華と明夜を守れてよかった。それは、明確な自分の誇りだ。少し、いやかなり傲慢で恥ずかしいが、影人はそう思った。




