第1359話 襲い来る現実、家族との再会(4)
「「・・・・・・」」
「ひ、久しぶり。いやー、実はさ――」
ジッと影人を見つめてくる2人に、影人は取り敢えず何か言葉を紡ごうとした。しかし、影人が言葉を述べる前に、
日奈美と穂乃影は影人に抱きついて来た。
「っ・・・・・・!?」
突然の抱擁に、影人は驚いたような顔になる。2人が抱きついて来て分かったが、日奈美と穂乃影はかすかに震えていた。
「本当に・・・・・・本当に全く意味が分からないけど、私はさっきまであんたの事を忘れてた・・・・・・でも、急にあんたの事を思い出して、それで急に、急に気持ちがパンクして・・・・・・!」
「わ、私も・・・・・・何でか、影兄の事を忘れてた・・・・・・今も正直何が起きてるのかは分からないけど・・・・・・!」
「・・・・・・」
日奈美と穂乃影の涙ぐむような声が、影人の耳を打つ。その言葉を、影人は黙って聞いているしかなかった。
「でも、またあんたに会えた・・・・・・まだ頭は混乱したままだけど、あんたに会えた・・・・・・だから、だからね影人・・・・・・」
「うん。今は、今はそれが全部。だからね、影兄・・・・・・」
日奈美と穂乃影は影人に抱きついたまま、こう言った。
「「おかえり」」
「あ・・・・・・」
その言葉を聞いた、いや2人からそう言われた影人は無意識にそう声を漏らした。瞬間、影人の中に暖かな感情が湧き上がってきた。影人は、その感情の感じるままに自然と笑みを浮かべると、
「うん・・・・・・ただいま」
自身の帰還を告げる言葉を呟いた。
「それで・・・・・・あんた、今までどこで何してたのよ? というか、まあ問題はそれだけじゃないけど・・・・・・とにかく、ちゃんと教えなさい」
感動の再会から約10分後。リビングのイスに座っていた日奈美は、テーブルを挟んで対面に座っている影人にそう聞いて来た。その顔は、取り敢えずはいつもの日奈美と同じように、影人には見えた。日奈美は仕事着であるスーツ姿で、日奈美の隣にいる穂乃影も制服姿だった。さっき聞いた話だと、2人とも普通に会社や学校に行く準備をしていたのだが、突然影人の事を思い出し混乱したため、今日は休みを取ったと言っていた。
「あー、ちょっと信じてはもらえないかもだけど、実は・・・・・・」
遂に日奈美の口から出たその質問。その質問に対する答えを、影人はつい先ほどまで全く思い付かなかった。だが、ほんの2分ほど前にビビッとある答えが閃いたのだ。正直、その答えを閃いた影人は、「俺は天才だ。やはり持っている!」と本気で思った。ゲボ吐くほど滑稽な奴である。
「俺、ずっと宇宙人に捕まってたんだ・・・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・は?」」
影人の答えを聞いた日奈美と穂乃影は、こいつ頭がイカれてるのか、的な顔を浮かべた。まあ、当然である。
「いや、気持ちは分かる。俺も逆なら絶対嘘だって思うし。でも、本当なんだよ。俺は宇宙人に捕まってた。たまたま奴らが地球にまた着陸した時に、必死の思いで逃げて来たんだ。それで、何とか帰って来れた・・・・・・そんな感じなんだ」
影人は真剣な顔でそう言葉を続けた。スプリガンを演じていた事などもあって、演技力は無駄に高い前髪である。普通ならば、こんなふざけた嘘の答えは言っている最中に笑ってしまいそうなものだが、前髪野郎は笑わなかった。多分、神経のどっかが普通におかしいのである。
「いや、ちょ・・・・・・は? 影人、あんたそれ本気で言ってるの? だとしたら、今すぐ病院に行きましょう」
「・・・・・・うん。前からおかしいとは思ってたけど、本当におかしくなったみたい」
影人の答えを聞いた日奈美と穂乃影がそんな言葉を漏らす。2人の反応は至って普通であった。
そして、前髪野郎は自分が天才だと思った答えを日奈美と穂乃影に述べた。




