第1356話 襲い来る現実、家族との再会(1)
「ヤバい、3ヶ月は普通にヤバすぎる・・・・・・! 前に過去から戻って来た時も、10日であんなに怒られたのに・・・・・・!」
シェルディアの言葉によって、現実に引き戻された影人は頭を抱えた。そうだ。しばらくの間この世から消えていた(物理的に)自分が、このまま普通に帰れるはずがないのだ。今ごろ、ソレイユやレイゼロール達と同じく、影人の母親である日奈美や妹である穂乃影も影人の事を思い出している事だろう。
しかも、今回は前回と違いシェルディアの予めのサポートの言葉はない。加えて、2人は急に自分の事を思い出し、今までなぜ自分たちが影人の事を忘れていたのかと混乱しているはずだ。その説明もどうしようと、影人は焦っていた。
「へ、へへっ・・・・あ、あのシトュウさん? その、真界の神の力でその辺どうにかなりませんかね? こう、ちゃんと整合性が取れたような現実になるとか・・・・・・」
影人はへつらうように笑いながら、シトュウにそう言った。その姿はあまりにも情け無い。そこらのクズのようである。最近は何だかんだ格好をつけたり、主人公っぽかったが、もともと前髪野郎は小物で厨二病でクズの、不良在庫のオンパレードみたいな奴だ。その不良在庫が久しぶりに本来の顔を出した。
「残念ですが、それは難しいですね。零無に力を奪われる前の私なら可能だったでしょうが・・・・」
「あ、あー・・・・・・そうですか・・・・・・」
ハッキリとシトュウにそう言われた影人は、ガクリと露骨に肩を落とした。
「ヤベェ・・・・・・本当にヤベェ・・・・・・マジでどう説明しようかな・・・・」
「・・・・・・よく分からんが、素直に説明すればいいのではないのか?」
再び頭を抱えた影人に、隣のレイゼロールがそう助言した。だが、レイゼロールの言葉を聞いた影人は首を横に振った。
「いや、それだけは出来ない。今まで俺が色々ドンパチしてて、しかもこれからも戦いに巻き込まれるのは確実だし・・・・・・それに、心配は掛けたくないんだよ。ただでさえ、数年前に父さんが失踪してるし、そこに俺の話なんかしたら・・・・・・まあ出来ないよ」
日奈美と穂乃影の事を考えながら、影人はそう答えた。こんな話をすれば、日奈美は悲しみ今すぐにでもそんな世界と関わるなと言うだろう。穂乃影は光導姫だったから、色々理解はしてくれそうだが、それでもやはり、日奈美と同じように関わるなと言うはずだ。
しかし、影人はまだ非日常の世界と関わらなければならない。なぜなら、零無と影人には因縁があり、零無が影人を目的としているのだから。どちらにせよ、影人は今非日常から逃げる事は出来ない。
「そうか・・・・・・難しいな」
影人の答えを聞いたレイゼロールがそう呟いた。おそらく、大切な人たちに迷惑や心配を掛けたくないという影人の気持ちを分かってくれたのだろう。
「ああ、マジで難しいんだよな・・・・・・うーん、本当にどうしよう。正直、帰りたくなくなって来たけど、生き返った以上は家には帰らないといけないし・・・・・・」
流石に影仁と同じように、行方不明になるわけにはいかない。ゆえに、影人は絶対に家に帰らなければならないのだが、どう説明をするべきか、その問題が影人を億劫に似た気持ちにさせていた。
「・・・・・・取り敢えず、帰ってみたらどうですか? あなたの家族は混乱しているかもしれませんが、きっとあなたを受け入れてくれるはずです。というか、これは一種の罰ですよ。あなたが勝手に消えた事の」
ソレイユは前半は真摯な言葉を、後半はチクリとする言葉を影人に言ってきた。その言葉を聞いた影人は、「うぐっ・・・・・・」と気まずそうな顔を浮かべた。




