第135話 留学生 アイティレ・フィルガラルガ(3)
「『提督』が日本にやって来ました」
「・・・・・・・・・それで?」
「それでではありません影人! 前に言ったでしょう! 提督はあなたを敵と認定する可能性の高い光導姫だと! もしかしたらあなたを倒すために、彼女は来日したのかもしれないんですよ!」
目の前の淡いピンクの髪の女神は、普段と変わらぬ様子の影人に声を荒げた。
「そうかよ・・・・・・・・・」
そんなソレイユの言葉に影人は少し不機嫌そうにそう言った。
今日は休日。最近は忙しかったから、今日は1日自由に出来ると思っていたら、ソレイユが念話で「緊急の用件があるから、神界にきてほしい」と伝えてきたので、面倒に思いながらもここに足を運んだというわけだ。
しかし、いざその緊急の用件を聞いてみれば、ただそれだけのことだった。自分を敵と認定するかもしれない光導姫が、日本に来日したから危険だということだ。
「・・・・・・・・・別によ、ただの留学じゃねえのか? そいつはお前のところに日本に留学するって言ってきたんだろ? 穿った見方のしすぎじゃないか?」
「もちろん、その可能性もあります。しかし、私が言ったような可能性もあります。そのような可能性が少しでもある場合は、油断はできません。・・・・・・・・そして、もし『提督』があなたと敵対した場合、彼女は恐ろしく強いということも問題の1つです」
真面目な顔つきでソレイユはそう言うが、影人にはまだソレイユが考えすぎではないかと思ってしまう。
「・・・・・・・まあ、お前の考えも分かるには分かるが、色々疑問はあるぞ? お前の考えが正しいとするなら、そいつが日本に来た理由は今のところ俺の存在が日本でしか確認できないからとする。でも何でそいつは東京に来た? お前、俺が東京で確認されたって情報を手紙に書いたのか?」
「いいえ、私はスプリガンが出現したのは日本としか手紙には書いていません。考えられるのは、ラルバが手紙に記したかもしれない事ですが・・・・・・・・しかし、彼女が東京に留学したのは、東京に光導姫と守護者のための学校があるからではないかと思われます。実際、彼女はそこに留学しているようですし」
「そう言われると不自然じゃねえな・・・・・・・」
影人にはソレイユの言う光導姫と守護者の学校名や、その学校が東京のどこにあるかも分からないが、そういった学校があるということは、以前にソレイユから聞いたことがあった。
「・・・・・・じゃあ、2つ目の疑問だ。そいつはどうやって俺に接触しようとしてる? まあ、これもお前の考えが正しいってう仮定の上だがな」
「そこはあなたの噂を信じてじゃないですか? 私は手紙にはスプリガンは闇奴と光導姫や守護者のいる場に現れる謎の怪人と書きましたから。『提督』も日本にいる以上は日本での光導姫としての活動が主になります。だからその時にあなたが現れるのを待っているとか?」
「えらく不確実だな・・・・・・・まあ、俺の存在自体が今のところ不確実みたいなもんだが。ああ、そうだ。けっこう気になってたんだが、スプリガン時の俺の写真って撮られたりしてないのか? 俺はけっこう街の中で戦うから、監視カメラとかに映ってるとか」
「それはあり得ませんから、心配しなくて大丈夫ですよ。あなたがスプリガン時に纏っている服装は、カメラや写真などには写らない効果があります。光導姫や守護者の場合は、政府が民間に出回らないように処理していますよ」
「まじかよ・・・・・・・・どんだけ万能なんだあの服装」
知られざるスプリガンの服装の効果に影人は驚いた。自分が思っている以上にあの服装はすごいものであったようだ。例えるなら、「このターン○すごいよぉ! さすがターン○のお兄さん!」といった感じだ。まあ、スプリガンに弟はいないのだが。
「・・・・・・・どっちにしろ、そいつの目的がただの留学かお前の言うとおり、俺を狙って日本に来たのかは分からん。そこでだ、あえてそいつに餌をまいてやりゃあいい」
ニヤリと笑みを浮かべながらそう言った影人に、ソレイユは疑問から眉をひそめた。




