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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1325/2051

第1325話 魅入られた者(1)

「おーい、影人。早く起きろよ。もう少しで朝飯だぞ」

 旅行2日目、朝7時過ぎ。歯磨きを終えた影仁は、隣の部屋の襖を開け、未だに眠っている影人にそう声を掛けた。

「・・・・・・ん? うん・・・・・・」

「あー、ダメだ。こりゃ言うだけじゃ起きないな」

 寝ぼけた声を漏らした影人を見た影仁は、軽くため息を吐くと影人の側まで行った。そして、隣に座ると両手で影人の体を揺すった。

「ほら起きろよ寝坊助さん。起きないとヒドイぜ。こちょこちょするぞー?」

「ん、んん・・・・・・」

 だが、影人はなおも目を覚さなかった。こうなれば仕方がない。影仁は両手を軽く動かすと、影人が寝ている布団の中に両手を入れ、影人の脇腹や脇を掻いた。

「っ・・・・・・!? あは、ははははッ! くすぐったい! な、何だいきなり!?」

 その効果は覿面てきめんで、影人はすぐに目を覚まし笑い声を上げた。

「ほれほれ〜」

「くっ、はははは! お、おい父さん! やめろよ!」

「中々起きなかったお前が悪いんだ。もうしばらく笑えよ。これは罰だからな〜」

 影仁は笑い転げる影人をニヤニヤとした顔で見つめる。影人と影仁のやり取りを隣の部屋から見ていた日奈美と穂乃影は、「朝から何やってんだか」「楽しそう」とそれぞれ感想を漏らした。

「はぁはぁはぁ・・・・・・こ、この、朝一からよくも、こんなに笑わせやがったな・・・・・・」

 数分後。ようやく影仁の手から解放された影人は、疲れたような顔を浮かべ、影仁にそう言った。

「言っただろ。中々起きなかったお前が悪いって。それに朝から笑うって事はいい事だぜ。朝は1日の始まり。始まりが明るいなら、その後もきっと明るいさ」

「な、何だよそれ・・・・・・」

 笑いながらそんな事を言う影仁に、影人は意味が分からないといった顔を浮かべた。よく分からない理屈だ。

「人間はイメージの生き物だからな。そう思えばそうなのさ。ほれ、早く顔洗って歯磨いてこい」

「はあー・・・・・・分かったよ」

 影仁の言葉に頷いた影人は、立ち上がると部屋を出て共用の洗面所へと向かった。

「しかし・・・・・・何であいつあんなに眠たがってたんだ? 一応、睡眠時間は足りてるはずだが・・・・・・まるで、夜更かしでもしたみたいだったな」

 影人は朝が決して強いタイプではないが、それほど弱くもない。普通に声を掛ければ起きて来る。だが、今日は中々起きなかった。影仁には、それが少しだけ不思議だった。

「・・・・ま、気にするほどの事でもないか。さーて、朝飯は何かな。楽しみだ」

 影仁はそう呟くと、日奈美や穂乃影がいる部屋に戻った。

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