第131話 提督襲来(4)
「なに、ソレイユ様から援軍を頼まれただけだ。闇奴が段階進化したようだから、彼女たちの手に余るかもしれないとな。直接お言葉を聞いたわけではないが、そのような思いと共にこの座標へと送っていただいた」
よく通る明瞭な声で2人に事情を説明すると、提督はチラリと傷つき倒れている2人を見た。
「よくここまで耐えた。30秒ほどであの闇奴を浄化するから、もう少し待ってくれ。結界の外で政府の車が待機しているから、そのまま治癒系の光導姫の元へ連れて行ってもらうといい」
「ッ!? あり、がとう、ございます・・・・・・! しかし・・・・・!」
「いくら、御身といえども・・・・・・1人では・・・・・・!」
提督からの労いの言葉に2人の胸に嬉しさが込み上げる。だが、いくら提督といえど段階進化を起こしたあの闇奴を浄化するのは、1人では厳しいのではないかとディレーヴァとべーリーは感じた。
「問題ない。今言っただろう? 30秒あれば充分だ。なにせ、奴は雑魚だからな」
「――――!」
雑魚呼ばわりされたことに怒ったわけではないだろうが、提督に触手を全て打ち抜かれた闇奴は、全ての触手を再生させ、提督に触手を伸ばした。
「ふん、取り柄はその気持ちの悪いものと再生力だけか」
提督が見下すようにそう呟く。何十と自らに迫る触手を、提督はつまらなさそうに再び全て撃ち落とした。
「――! ――!」
「終わりだ」
そして浄化の力を宿した銃弾の嵐が闇奴の本体を襲った。
「――!」
闇奴は体を蜂の巣にされて光に包まれた。そして、そこには1人の大柄な男性が気を失って地面に伏せていた。闇奴の浄化に成功したのだ。
「「!?」」
「30秒もかからなかったか。君たちが闇奴を弱らせてくれたおかげだな」
つい先ほどまで自分たちを苦しませていた闇奴を、数秒ほどで浄化してみせた『提督』にディレーヴァとべーリーは畏敬の念を抱く。確かに何度か再生などをさせたから多少は弱っていたとは思うが、それでもだ。
これが『提督』。ロシア連邦最強の光導姫。
「同士たちよ、立てるか?」
「は、はい・・・・・・・・なんとか」
「大・・・・・・丈夫です」
提督の言葉に、2人はよろよろとだが立ち上がってみせた。光導姫と守護者の肉体でなければ間違いなく死んでいた。
「そうか。肩を貸してやりたいが、私は情報部に呼ばれていてな。すまない、許してくれ」
「いえ、そんなことは・・・・・・・!」
「私は守護者ですが、提督の強さに感動しました・・・・・・!」
2人とも『提督』と会えたことで一時的に感情が昂ぶっているのだろう。途切れ途切れであった言葉が、通常通りに戻っている。
「そうか、ありがたい言葉だ。では、私はこれで失礼する」
そう言い残して光導姫『提督』はどこかへと足早に去っていった。




