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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1303/2051

第1303話 封じていた過去(5)

「・・・・・・その自己紹介って、俺らもした方がいいのかシトュウさん?」

「いえ、それは構いません。この2人が神だという事は既に気づいていましたし、そこの2人も何者かは分かります。『終焉』の力を司る女神レイゼロールと、あなたは異世界の吸血鬼ですね?」

「ふん・・・・・・」

「ええ、大正解よ」 

 影人の質問に首を横に振ったシトュウは、その目をレイゼロールとシェルディアに向けた。シトュウに正体を言い当てられたレイゼロールとシェルディアは、それぞれそんな反応を示した。

「・・・・・・じゃあ、まずは俺から質問だ。シトュウさん、いったい何があったんだ。消えたはずの俺はなぜ蘇って、零無の奴も・・・・・・一応、あいつが色々と言っていたが、あんたの口から正確な事を聞きたい」

「・・・・・・いいでしょう。では、何が起きたのかをまずは説明しましょう」

 今までの状況の整理のためにも、そう質問した影人。影人の言葉に頷いたシトュウは、零無が蘇り影人を蘇らせるまでの一連の事を皆に説明した。

「つ、追放された先代の『空』・・・・・・? 彼女が唯一執着していた影人を、彼女が蘇らせた・・・・・・?」

「しかも、その先代の『空』を子供の頃の影人くんが封じていた・・・・・・? しょ、正直訳が分からないというか、理解が追いつかないというか・・・・・・」

 シトュウの説明を聞いたソレイユとラルバは、呆気に取られたようにそんな感想を漏らした。

「・・・・・・影人、さっきソレイユがお前を殴った理由がようやく分かった。後で話がある」

「私もよ。正直ちょっと・・・・・・いや、かなり怒ってるわ」

「うっ・・・・・・」

 一方、レイゼロールとシェルディアは自分たちが影人を忘れていた理由を知り、厳しい視線を影人へと向けた。2人からそう言われた影人は、気まずそうな顔を浮かべた。

「・・・・・・分かってるよ。ちゃんと後でレイゼロールと嬢ちゃんには怒られる。・・・・・・でも、今はそれよりもあいつの、零無の事だ。あいつは悪意だ。他者をただ自分のために蹂躙しているとも知らずに蹂躙するような奴だ。この世に・・・・・・いちゃいけないような奴だ。あいつをどうにかしないと・・・・・・」

 影人は厳しい顔を浮かべながら、そう言葉を漏らした。その影人の言葉を聞いたソレイユは、影人にこう聞いた。

「影人、失礼かもしれませんが・・・・・・過去に彼女と、零無さんと何があったのですか? 正直、私には未だによく分からないのです。なぜ、先代の『空』ともあろう存在が、あなたに執着しているのか。なぜ、あなたは彼女をそんなに嫌っているのか。そして、なぜあなたは彼女を封印したのか・・・・・・私には何も分かりません」

 ソレイユの質問は、ここにいる全ての者を代弁するものだった。過去に影人と零無の間に何があったのか。今回の一連の事は、そもそもの原因がそこにある。全ての因縁がそこにあるのだ。

「っ・・・・・・正直、この事は話したくないんだ。本当に。あいつとの記憶は俺にとって忌むべき記憶。俺はずっとその事を記憶の底の底に封じて来た。だから、シトュウさん。あんたが俺の代わりに話してくれないか? あんたなら、俺の過去を知ってんだろ?」

「確かに、私はあなたが零無を封じたという事実は知っています。しかし、その過程は知りません。なぜ彼女があなたに執着し、あなたが彼女を封じるに至った経緯を、私は知りません。なので、酷ですが・・・・・・あなたの口から、過去の事を話してほしいです」

 どこか震えたような声でそう言った影人に、シトュウは少しだけ申し訳なさそうな顔を浮かべ、そう言葉を返した。全知の力があれば、その過去を詳細に知る事が出来たが、今のシトュウにその力はない。シトュウが知っているのは今言ったように、影人が零無を封じたという事実だけ。その背景までは、当時のシトュウは知ろうとは思わなかった。そこには、一種の恐れがあったからだ。

「そう、なのか・・・・・・ああ、だったら仕方がないよな。あいつとの話は、墓場まで持っていくつもりだったんだが・・・・・・こうなったら、話すしかねえよな・・・・・・」

 影人は大きなため息を吐いた。ここで意地を張って話さないという選択肢はない。零無の事は共有する必要があるからだ。影人は覚悟を固め、自分が封じていた過去の事を話し始めた。

「・・・・・・忘れもしない。あいつと会ったのは今から7年前。俺が小学5年生の、ある夏の日の事だった・・・・・・」

 影人は自分の心の奥底に封じていた零無との記憶を、自身の心の禁域の鎖を完全に解きながら、あの日の事を思い出した。

 零無と出会ったあの日の事を。自分が、この長い前髪で視界を縛ろうと決意したあの日の事を。


 ――語られるは、とある少年の物語。帰城影人がずっと自分の中に封じ続けてきた、ある悲劇の記憶。今の帰城影人を帰城影人たらしめ、そして決定づけたその根源たる出来事。


 帰城影人の過去が――いま明かされる。

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