表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1301/2051

第1301話 封じていた過去(3)

「っ・・・・・・」

 その声に聞き覚えがあった影人は、その声が聞こえて来た方に顔を向けた。声がして来た方は、鳥居の方だった。すると、そこには1人の女性がいた。桜色の長い髪が特徴の美しい女性が。

「ソレイユ・・・・・・」

 影人がポツリとその女性の名前を呟く。そこにいたのは、光の女神ソレイユ。影人にスプリガンとしての力を与えた者であり、また影人が消える前に最後に会った人物だった。

「・・・・・・」

 影人が消える前と同じ、桜色のワンピースを着ていたソレイユは、影人を睨みつけるかのように見つめると、スタスタとこちらに向かって歩いて来た。

「・・・・・・」

 影人もそんなソレイユを前髪の下の両目で見つめながら、ソレイユの方に向かって歩いて行く。ある覚悟を固めながら。

「「・・・・・・」」

 そして、両者は向かい合うように立ち止まる。両者の対面距離は約1メートルほどだった。そんな両者の様子を、レイゼロール、シェルディア、シトュウは静かに見守った。

「・・・・・・私、言いましたよね。さよならは言わないって」

「・・・・・・ああ、言ったな。それに対して、俺はお前にさよならの言葉を言った」

 どこか震えたような声で、ソレイユはそんな言葉を述べた。その言葉に対し、影人は静かにそう言葉を返す。

「・・・・・・私はさっきのさっきまで、あなたの事を忘れてた。でも、さっき突然あなたの事を思い出した。私は悲しくて、悔しくて、怒ったような気持ちになって・・・・・・気持ちがぐちゃぐちゃになった」

「・・・・・・そうか」

 影人はただ頷く。ソレイユは唯一、影人が消えた理由を知っている人物だ。自分が消える前に、泣き叫んでいたソレイユの事を思い出すと、影人は何も言えなかった。

「・・・・・・それで、突然あなたの事を思い出した私は、おかしいって思ってあなたの気配を探ってみた。私はあなたの気配ならすぐに分かるから」

「・・・・・・だろうな」

 ソレイユは影人に自身の神力を分け与え、スプリガンにした張本人だ。2人の間には繋がりができ、念話をする事も可能だった。そんなソレイユが、影人の気配を知らないはずがない。

「・・・・・・調べてみたら、ここからあなたの気配を感じた。でも、あなたはあの時に消えたはずだから、私信じられなくて・・・・・・でも、もしかしたらって思って、ここに来てみたら・・・・・・あなたが、あなたがいた」

「・・・・・・ああ」

「っ・・・・・・! ああですって・・・・・・? 私が、私がどんな気持ちで・・・・・・!」

 影人がそう相槌を打つと、ソレイユは怒ったような顔を浮かべた。そして、ギュウと両手の拳を握り締める。

「影人ッ! 歯ァ食い縛りなさいッ!」

 そして、ソレイユは感情を爆発させた。右手の拳を大きく引き力を込める。影人はただ直立不動で立つだけで、回避の動作は取らなかった。これは避けてはいけないものだからだ。

「はあッ!」

 ソレイユは振りかぶった右の鉄拳を、影人の左頬へと放った。思い切り。力の限り。

「っ・・・・・・」

 ソレイユの鉄拳を影人は甘んじて受けた。途端、影人の左頬に痛みと衝撃が訪れる。影人は踏ん張って、ソレイユの拳の痛みをしかと味わった。

「・・・・・・効いたぜ。お前の拳」

 ソレイユの拳を受けた影人は、ただ一言そう言った。その言葉を聞いたソレイユは、遂にその目から涙を溢れさせこう叫んだ。

「当たり前よッ! バカ! このバカッ! 本当に、本当に・・・・・・! また・・・・・・会えてよかった・・・・・・!」

「・・・・・・本当、悪かった。俺も、またお前と会えてよかったよ」

 ソレイユは影人の影人の胸にしがみついた。そんなソレイユを見つめながら、影人はそう言った。

「ううっ・・・・・・! ううっ・・・・・・!」

「・・・・・・」

 それからソレイユが泣き止む間、影人はただ無言でソレイユに自分の胸を貸した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ