第130話 提督襲来(3)
「――! ――!」
べーリーが切断することに成功した両腕からもすぐさま触手が生えてきた。
闇奴は自分の両腕を切断したべーリーに対し怒ったのか、ディレーヴァに拘束されている以外の触手は全てべーリーへを矛先にした。
「ぐ・・・・・・・」
「やらせるかぁッ!」
ディレーヴァが全ての力のリソースを割き、新たに木々による攻撃を行おうと杖を振るおうとする。そのため、元々触手を拘束していた枝の力が弱まる。闇奴はまるでそれが狙いであるかのように、拘束を無理矢理破り、ディレーヴァの腕に絡みついた。
「ッ!? 離せ!」
「――!」
闇奴はディレーヴァを嘲笑うかのように、気味の悪い声を上げ攻撃の手段を失ったディレーヴァを触手で嬲る。
「ぐぅっ!? あ、あああああああああああッ!」
「ディ・・・・・・・レーヴァ!」
闇奴はまるで鞭のように光導姫に触手を叩きつける。悲鳴を上げるディレーヴァを、べーリーは助けようとなんとか立ち上がる。先ほどの闇奴の攻撃は、いくら守護者の肉体といえども、無視できないダメージを与えられた。
斧を持ち上げべーリーはよろよろとディレーヴァの元へと向かった。
「? ――!」
闇奴はまだ動くことのできるべーリーを察知して、適当な数の触手をべーリーにあてがった。
「くっ・・・・・・・!」
べーリーは自分に向かってくる触手を切り払おうと、斧を振るった。1,2本なら対応は出来たが、ダメージを負った体ではそれが限界だった。
残り無数の触手が、べーリーを殴打した。
「~~~~~ッ!」
べーリーは声を上げず必死にその殴打に耐えようとするが、6~7発目で地面へと叩きつけられた。
「う・・・・・・・・うう」
「――!」
闇奴はボロボロになったべーリーの元に、同じくボロボロになったディレーヴァを放り投げた。2人がうめき声を上げながら、それでも立ち上がろうと必死に力を振り絞る。闇奴は2人にとどめを刺すべく、全触手を2人に放った。
「ここ・・・・・・までか」
「っ・・・・・・・せめて、君だけは・・・・・・!」
ディレーヴァだけでも守らなければとべーリーは考えたが、もう守るには間に合わなかった。
死が2人に迫る。無慈悲な触手が2人の命を奪おうとしたその時――奇跡は起きた。
何かの発射音が複数回聞こえたかと思うと、2人に迫ろうとしていた闇奴の触手が全てはじけ飛んだのだ。
「――! ――!」
闇奴は全ての触手がはじけ飛んだ激痛に悶えながら、耳障りの悪い悲鳴を上げた。
「「!?」」
突然の出来事にディレーヴァとべーリーの2人も驚いた。いったい何が起こったというのか。
「――間に合ったか」
コツコツという靴の音と共に、女性の声がその場に響き渡った。
倒れている2人の後方から、1人の少女が姿を現す。
軍服のような服を纏ったその少女は、あらゆる意味で人の目を引くような存在だった。
出で立ちは、白を基調とした軍服のような服と軍帽のような帽子を被っている。長い銀髪を揺らしながら、鮮やかな赤い瞳を闇奴に向ける少女は、まるで幻想のように美しかった。
だが、幻想ではないと示すかのように、少女の両手には現実を象徴するかのような、無骨な2丁の拳銃が握られていた。
「大丈夫か? 同士たちよ」
倒れている2人を闇奴から守るように、銀髪の少女はディレーヴァとべーリーの前に立ち塞がった。
その特徴的な服装と2丁の拳銃を見た2人は、驚いたように目を見開く。
「まさか・・・・・・・・あなたは・・・・・」
「なぜ・・・・・・・あなたがここに・・・・・」
2人とも直接その姿を見るのは初めてだったが、彼女を知っている。
ロシアの光導姫と守護者で彼女を知らない者はいない。その名は世界の光導姫や守護者にも轟いている。
正義と規律の銃撃者。純粋な戦闘能力だけでいうなら、光導姫としては最強クラスとまことしやかに噂される彼女の名は――
「「『提督』・・・・・・・・・!」」
光導姫ランキング3位『提督』。それが彼女の名であった。




