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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1278/2051

第1278話 謎の女の暗躍(1)

「さーて、問題はなぜ現在の『空』が世界改変の力を使って影人の存在を消したかだな。ふむ・・・・」

 封印から解き放たれ、影人の事を思い出した女はそう呟いた。どれくらいの時間が経っているのか、封印から解かれたばかりの女には分からない。影人がなぜその存在を消されているのか、何があったのかも女には分からない。かつては全知全能であった女からすれば、それは皮肉な事だった。

「1番手っ取り早いのは、真界に行って現在の『空』から影人をなぜ消したのか聞く事だ。だが、今の吾は真界に踏み入る事を禁じられているからなぁ・・・・・・・・ちっ、全く困ったものだぜ」

 女は少し苛立ったように舌打ちをした。真界を追放された時は別に何とも思わなかったが、まさかここに来て真界に入れない事が響くとは。

「はてさて、本当にどうするか・・・・・」

 女は考えた。まず間違いなく、影人の事を知るためには真界に行き、現在の『空』から話を聞く必要がある。世界改変の力は、例外としてその使用者のみ改変の影響を受けない。この場合、真界の最高位の神『空』(あくまで確証はなく女の予想だが、恐らく間違いはない)だけは、影人の事を覚えているはずだ。女は聞かなければならない。『空』から影人の事を。

「・・・・・・・・・・」

 それから数時間、女はただ思考を続けた。封印が解けたからと言って、女にすべき事はない。既に粗方の事はやり尽くし、興味は失せている。女のただ1つの興味は、執着は帰城影人という人間のみ。それ以外は万事どうでもいい事だ。

 気がつけば、すっかり夜も更けた午前3時過ぎ。女に時間の感覚はほとんどないが、そんな時だった。女は突然どこからかこんな声を聞いた。


「――懐かしい気配を感じたので来てみれば、封印が解けたんですね。お久しぶりです」


 聞こえて来たのは挨拶の声。それは男の声だった。女は声が聞こえて来た方向、闇に包まれた神社の鳥居の方にその顔を向けた。

 男はコツコツとその足音を石畳に響かせながら、女の方へと向かって来た。男の姿が月明かりに照らされる。

 見た目は20代くらいの若者といった感じだった。髪は肩口にかかるくらいの、男にしては少し長い髪。顔は綺麗といった感じで、瞳の色は薄い灰色。服装は、灰色のシャツに闇に溶けるような黒いパーカーを羽織り、ジーンズ。足元はスニーカーで、ごく普通の若者に見える。女はその格好のせいで男が一瞬誰だか分からなかったが、その顔と薄い灰色の瞳を見て、すぐにその男が誰だか分かった。

「ああ、お前か。確かに久しぶりだな。最後に会ったのはいつだったか・・・・・・」

「最後に会ったのは、確か75年ほど前のフランスですかね。第二次世界大戦が終わったばかりの頃ですか。あの時は残念でしたね。今度こそ、この世界が壊れると思ったのですが・・・・・いやはや、何だかんだギリギリのバランスで、この世界は壊れませんね」

 女の言葉を捕捉した後に、やれやれといった感じで男はそんな言葉を漏らした。

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