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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第127話 決着。新たな隣人(3)

「いやー、連華寺さんめちゃくちゃ強かったよね」

「ほんと、最後の龍とか反則もいいところだわ」

 影人が新たな隣人と話をしている間、陽華と明夜は公園のブランコに座りながら、昼間の模擬戦のことについて語り合っていた。

 陽華と明夜の家は昔からつき合いのあるお隣どうしだ。だから何か話したいことがあるときは、こうして夜の公園で話すということが2人の慣習になっていた。

「でも闘ってよかったよね。連華寺さんから色々アドバイスももらったし」

「うん。しかも週に1回だけど、私たちに稽古つけてくれるってことだし。本当にありがたいことだわ」

 模擬戦が終わった後、風音は2人に様々なアドバイスをくれた。それは戦闘の立ち回りについてのことや、光導姫の属性についてといったものだ。本来そのような内容は夏の研修で習うとのことだが、「これくらいは」ということで、話してくれた。

 しかも週末に1回だけだが、自分たちと模擬戦をしてくれるということになった。

 風音が言うには、「ぶっちゃけてしまうと、格上の相手と闘うことが1番手っ取り早く強くなれる」らしい。それはそうだろうが、どうして自分たちにそこまでしてくれるのかと問うと、風音は優しげな笑みを浮かべてこう言った。

「誰かのために強くなりたいという人に悪い人はいないから」

 どこか答えになっていないような気もしたが、それでも風音の優しさは陽華と明夜の心に響いた。

 そして今日はもう疲れているだろうからと、そこで今日は解散になったのだ。

 後は再び永島の運転するリムジンで、風洛高校の前まで送ってもらった。

 自分たちと風音を繋げてくれた光司はというと、どこか浮かない顔をしていたが、「君たちならきっと強くなれる」と自分たちに言ってくれて、今日はそのまま別れた。

「・・・・・・・私たちって本当に運が良いというか、恵まれてるわね」

「だね、いろんな人に助けられてる。・・・・・・でもさ、明夜。それってきっと感謝こそすれネガティブな気持ちを抱くのは違うよね。私、守る力を貰ったのに、守られてばっかりだってちょっと落ち込んでたけど、それももうやめる」

 吹っ切れたような表情を浮かべながら、陽華は親友の顔を見る。実はレイゼロールが襲来したときから、陽華は密かにそんなことを思っていた。だが、風音と闘って、その強さと優しさに触れてそんな考えはなくなっていた。

「・・・・・・・・そっか。陽華はやっぱり強いなぁ。その切り替えの速さが陽華の良いところだよね」

 ポツリと明夜みやがそう呟いた。幼馴染だからこそ、明夜には陽華の心の強さがよく分かる。昔から陽華は気持ちを切り替えるのが速いのだ。

「何言ってるの明夜。ポンコツなんだから、そんな難しいこと考えちゃ頭パンクしちゃうよ?」

「誰がポンコツよ!? ひどいじゃない陽華! 私せっかく真面目に話してたのに!」

 親友の不意打ちのような毒舌に、明夜は拗ねたような表情を浮かべた。普段はクールビューティー風の明夜だが、親友しかいない場では意外と感情的なのだ。

「あはは! そうそう、それでいいんだよ。明夜のいいところは、その単純さなんだからさ。だからさ、これからも単純にやることをやろうよ。・・・・・・私は明夜みたいに心が強くないから、時々落ち込んじゃうけど、その分ちゃんと気持ち切り替えるからさ。だから、これからも光導姫のお仕事がんばろう?」

「陽華・・・・・・・・・」

 陽華の明るくて暖かい言葉が、明夜の胸にみる。全く、この親友は昔から太陽のように暖かで優しい。言葉に出すのは恥ずかしいので、絶対に言わないが、陽華と親友になれたことは明夜の密かな自慢だ。

「・・・・・・・・そうね、頑張りましょう。あ、なら連華寺さんを超えるって意味でも、ランキング1位目指しちゃう? 目指すなら最強でしょ?」

「お、いいね! なら目指しちゃおう! でも、私達ランキング1位の人、どんな人か知らないけどね」

「それは連華寺さんに聞けばいいでしょ。ついでにランキングに入る方法とか、上げるやり方もね」

 2人は顔を見合わせながら、笑みを浮かべた。幼馴染で親友ということもあるが、それ以前に陽華と明夜は馬が合う。つまり、気が合うのだ。

「でさ、いつかあの人に・・・・・・・・・あの人の背中に追いつこう」

 そう言って陽華が拳を突き出す。あの人とは、固有名詞を出していないが、自分たちを何度も助けてくれた黒衣の怪人のことだ。

「ええ、追いついてやるとも。あのスプリガンにね」

 明夜は突き出された陽華の拳に自分の拳を、コツンとぶつけた。男っぽいが、これは昔から2人が約束をする時の仕草なのだ。

 そんな2人を祝福するかのように、優しい月の光が陽華と明夜を照らした。

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