第1261話 約束(3)
「そうだ! 暴走してるあいつを止めるためには、光の力であいつを浄化するしかない! 人の心の光であいつの絶望の闇を晴らすしか! だが、俺はあいつを浄化出来ない! だから、お前らがやるんだよッ!」
「で、でも私たちなんかじゃ・・・・・・・・」
「レイゼロールに、私たちの光は届かなかった・・・・所詮、私たちなんて・・・・」
影人の叫びを聞いた陽華と明夜は、その顔を不安げなものにさせた。影人が来る前、2人はレイゼロールに手も足も出なかった。光臨状態の最大浄化技も全く届かなかった。それが2人の自信を打ち砕いていた。
「はっ、そうだな! 確かにてめえらはまだ新人の部類で、正直俺もレイゼロールを浄化出来るなら『聖女』だと思ってた! だがなあ!」
影人は無限に自身を襲ってくる『終焉』の闇を、自身の『終焉』の闇で弾きながら、言葉を叫び続ける。
「今ならソレイユが言ってた意味が何となく分かる! レイゼロールを浄化出来るのはお前らしかいない! 時には傷つきながら! 俺みたいな奴まで最後の最後まで信じ続けられて! 真っ直ぐな思いと優しさを持ったお前たちが! お前たちが人の善意の光をあいつに届ける資格がある! お前たちしかいないんだ!」
「「っ!?」」
その言葉を受けた陽華と明夜の表情が変わる。影人に2人の表情は見えない。だが、影人は言葉を畳み掛けた。
「俺は影からずっとお前たちを見てきた! もし自分たちが信じられないなら俺の言葉を信じろ! お前らが信じ続けた俺がそう言ってんだ! だから・・・・・・!」
影人は有らん限りの声でこう叫んだ。
「頼む! レイゼロールを救ってやってくれ! 俺と一緒に!!」
「「あ・・・・・・・・」」
それは陽華と明夜がずっと聞きたかった言葉。スプリガンといつか肩を並べて戦いたい。スプリガンに追いつきたいと思っていた少女たちが、ずっと聞きたかった言葉だった。その瞬間、陽華と明夜に一切の迷いはなくなった。代わりに、爆発的なまでの嬉しさと自信が2人の中に満ちていく。
そして、2人の胸部に暖かな輝かんばかりの光が生じた。
「っ・・・・・明夜、この光は・・・・・」
「うん、陽華・・・・・今なら・・・・・」
自身の胸に灯った光。それを見た2人は互いに見つめ合った。そして、次の瞬間には、明るい自信に満ちた表情を浮かべた。
「明夜今なら行けるよ! スプリガンが私たちに立ち直る言葉をくれたから! 光臨の・・・・・その先に!」
「ええ、私たちの想いは限界を超えた! 今なら行ける陽華!」
2人は互いに頷き合うと手を前方に突き出し、それを重ねた。陽華は右手を。明夜は左手を。2人の中には、唱えるべき言葉が浮かんでいた。
「「我らは光の臨みを越える。全てを照らし、全てを優しく包む光。その光に、我らはなる!!」」
2人が言葉を唱えると同時に、2人の胸の光が輝きを増す。そして、2人はこう言葉を放った。
「「光輝天臨!!」」
2人がその言葉を放つと同時に、2人の胸の光が世界を白く照らした。その光に周囲にいた者たちや、光導姫や守護者の視界を通して観察していた、ソレイユやラルバも目を細める。全てを暖かく照らし、優しく包む光が世界に放たれる。そして数秒後、光が収まるとそこには変化した2人の姿があった。




