第1251話 始まりの記憶2(3)
「・・・・・そこの柱の裏にいる方。お待たせしました。どうぞ出てきてください」
「っ・・・・・」
影人がそんな事を考えていると、ソレイユがそう言った。どうやら、最初から影人の事には気がついていたようだ。影人は少し緊張しながらも、柱の裏から出た。
「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? う、嘘・・・・・そんな、そんなはず・・・・・」
「っ・・・・・?」
柱の裏から出てきた影人の姿を見たソレイユは、なぜか呆然としていた。初対面のソレイユが、なぜ自分を見て呆然としているのか影人には全く分からなかった。もしかしたら、前髪が人よりも長い事に驚いているのだろうか。
「あの・・・・・俺の姿が何か?」
「あ、いえ・・・・・すみません。余りにも、その・・・・・知っている方に瓜二つだったもので」
影人はソレイユの驚き様についそう聞いてしまった。影人からそう言われたソレイユは、ハッとした様子でそう言った。
「そうよ、彼のはずがない・・・・彼はもう既に・・・・」
ソレイユはボソリとなぜか悲しそうな表情でそう呟いたが、影人にはその意味は分からなかった。
「・・・・・・・・・取り乱してしまい申し訳ありませんでした。知らない人間をこの場所に転移させる時、私には基本的にその人間の性別、年齢くらいしか分からないもので・・・・」
「はあ・・・・・」
ソレイユの言葉は変わらず普通の人間である影人には分からなかった。
「・・・・・それで、ソレイユさん。あの、俺は元の世界に帰してもらえるんですか? もちろん、あなたやあいつらの事は誰にも話しません。絶対に」
影人はソレイユにそう言った。ちゃんと自分はその事は分かっていると。影人の言葉を聞いたソレイユは、「ええ、それはもちろんです」と言って頷いた。
「私があなたを転移させたのは、単純に闇奴から助けるためです。もちろん、あの2人もそのつもりで助けました。・・・・・光導姫になってほしい話もするつもりでしたが」
「・・・・・だけど、男の俺は光導姫にはなれませんよ。だから、早く返してもらえると助かります」
先ほどのソレイユの説明を聞いていた影人は、ソレイユにそう言った。
「・・・・・・・・・もしかしたら、これは運命なのかもしれませんね。彼と同じ姿の人間がたまたま、私の前に現れた事は・・・・・」
「?」
ジッと影人を見続けていたソレイユが、ボソリと何か言葉を呟いた。影人はその呟きの正確な内容は聞こえなかった。
「お名前を伺ってもいいですか?」
「俺の・・・・・ですか? 帰城影人ですが・・・・・」
唐突にソレイユに名前を聞かれた影人は、疑問を抱きながらも自分の名前を述べた。
「帰城影人さん、あなたは陽華と明夜と同じ服を着ていますね。彼女たちとは知り合いなのですか?」
「いや、ただ通ってる学校が同じってだけで、知り合いではないですが・・・・・・・・・一応、俺が一方的に2人を知っているだけです。彼女たちは、俺の学校では有名ですから」
「そうですか・・・・・」
「・・・・・あの、この質問に何の意味が・・・・・?」
さっさと帰してほしい影人は、ソレイユとの会話など望んではいなかった。その事を暗に言葉に込めながら、影人はソレイユにそう聞いた。
「すみません、一応聞いておきたかっただけです。それで帰城影人さん。あなたを地上に帰す前に、少しだけ私の話を聞いていただけませんか?」
「っ・・・・・!」
ソレイユのその言葉を聞いた影人は、なぜか嫌な予感がした。




