第1238話 スプリガン、死す(5)
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
そして、地上の現実世界。レイゼロールの暴走した『終焉』の力は世界各地へと広がり始める。『終焉』の闇は空を黒く夜のように覆い始める。
「な、なんやこれ・・・・・・・・」
「い、いったい何が・・・・・・・・」
「っ、これは・・・・・・・・」
それは日本にも既に届き始めていた。大量発生した闇奴と戦っていた、火凛、暗葉、典子といった陽華や明夜の友である光導姫たち、
「空が暗くなっていく・・・・」
同じく闇奴と戦っていた、影人の友である光導姫アカツキこと暁理も、
「何が・・・・起きてるの・・・・?」
闇奴と戦っていた、影人の妹である光導姫影法師こと穂乃影も、
「これって・・・・」
「何なんだよ・・・・」
世界中で戦っていた光導姫や守護者たち、それに一般人である全世界の人々も、暗くなる空に不吉な予感を抱いた。
――世界が滅亡するまでの時間は、もうあまり残されてはいなかった。
「・・・・・・・・・・・・どこだ、ここ?」
周囲が真っ暗な空間。そこにいた影人は、どこかぼんやりとした気持ちでそう呟いた。そして自分の体に視線を落とす。今の影人は風洛の制服姿だ。周囲は暗いが、影人がぼんやりと発光しているため、自分の姿は見る事が出来た。
(俺の精神の奥底にあった空間に似てる・・・・あれ、俺何でこんな所にいるんだ? 俺は確か・・・・何か大切な事を忘れてる気が・・・・)
だが思い出せない。ぼんやりとした靄が頭の中に掛かっているような感じだ。
「――ああ、よかった。何とか繋がりを辿れたみたいだ。君が『終焉』の力を受けて死んだ事が、不幸中の幸いだった」
「っ・・・・・・・・?」
影人が考え事をしていると、突如として前方の闇からそんな声が聞こえて来た。影人は、反射的にその声のした方に顔を向けた。
「初めまして、帰城影人くん」
そこにいたのは、肩口くらいまでの白髪にアイスブルーの瞳をした男だった。顔が中性的で凄まじく整っているため、一見すると女性に見えるが、声は間違いなく男だった。黒と金の美しいローブを纏ったその男は、影人と同じく全身が淡く発光していた。男は柔和な笑みを浮かべながら、影人の名を呼び挨拶をしてきた。
「誰だ、あんた・・・・・・・・? 何で俺の名前を・・・・それに俺が死んだって・・・・・・・・」
間違いなく初対面の男にそう聞き返した影人は、男の先ほどの言葉の意味がどういう事なのか分からなかった。だが、突然
「っ・・・・!?」
影人は自分がレイゼロールに殺され、敗北した記憶を思い出した。
「そうか・・・・・俺は・・・・・死んだのか・・・・・」
「そう。残念ながら、君は既に死んでいる。ここは現世とあの世の狭間の空間。人間によっては、煉獄と呼ばれるような場所だよ。もしくは夢と表現するのが感覚的には1番近いかもしれないね」
影人の呟きに男は頷き、ここがどこであるのかを説明した。
「・・・・・・・・そうかよ。で、既に死人の俺にあんたはいったい何の用なんだ? そもそも、あんたは誰だ? 天使か悪魔か? あの世への水先案内人か?」
「僕はそのいずれでもないよ。まあ、僕の事は一旦置いておこう。それよりも、もう1つの問い。僕が君に何の用があるのか、それについて話そうか」
男は影人の問いに首を横に振ると、こう言葉を続けた。
「一言で言うと僕は、君にこれからの道を示しに来たんだよ。帰城影人くん」
謎の男は意味深な笑みを浮かべた。




