第1231話 スプリガンVSレイゼロール、最後の戦い2(5)
「え・・・・・?」
「あ・・・・・」
「なっ・・・・・」
陽華、明夜、光司の3人もレイゼロールに気がつき呆然とした声を漏らす。そして、瞬間移動したレイゼロールは、無防備な3人に向かってその身から噴き出す闇を放とうとした。
(マズイ、このままじゃ間に合わない!)
既に闇は放たれた。3人を守れる位置に今から移動しても間に合わない。数秒後には陽華や明夜、光司たちは死んでしまう。
(どうする、どうする。こいつらだけは死なせるわけにはいかない。だが、このままだと間違いなくこいつらは死ぬ)
眼の強化により、スローモーションに映る世界の中で影人は己の思考をフルに回した。どうすれば、この状況でも3人を救う事が出来るか。
(『終焉』の闇から身を守れるのは俺の『世界端現』だけ。俺の『世界』は全ての存在を殺す事に特化した『影闇の城』。その城内にいる存在は、生も死もない不安定な状態。だから、俺はその特性を自身の体に纏わせて『終焉』の闇を弾ける)
影人は自分の『世界』の特性を再確認した。この情報が全て。ここに何かヒントはないか。
(城内にいる存在は生も死もない不安定な状態にする。それは相手を殺すためだ。嬢ちゃんとの戦いでは、嬢ちゃんもその状態になっていた。なら、理論的にはこいつらにも俺の『世界端現』を纏わせる事は可能か? 俺は自分に纏わせるだけで精一杯で、他人に纏わせる事は出来ないと思っていた)
影人が『世界端現』を習得したのはついさっきだ。ゆえに、影人は自分の身にしか『世界端現』を纏わす事が出来ない。先ほど影人が『世界端現』は自分の身にしか纏わせられないと言ったのは、そういう理由からだ。
だが、理論的には陽華や明夜、光司に『世界端現』を纏わせる事が出来るのではないか。『世界端現』とは文字通り、『世界』をこの世界に現す業なのだから。
(解釈を広げろ。力はこの際惜しみなく使っていい。出来るはずだ。当然の如く。やれるはずだ。息を吸うように。そうして、俺の『世界』を思いのままに操れ)
影人はその理論に懸ける事にした。影人は右手を3人の方に向かって伸ばした。そして、極限の集中を伴い、『世界端現』の力を使用する。次の瞬間、影人は凄まじい力を消費する感覚を味わった。
しかし、その結果、影人は3人の全身に『世界端現』の闇を纏わせる事に成功した。
「わっ、何これ!?」
「真っ黒な闇・・・・・?」
「っ、これは・・・・・?」
自身の体に突如として闇が纏われた事に陽華、明夜、光司は驚いた。3人の全身に『世界端現』が纏われた事によって、レイゼロールから放たれた闇は全て弾かれた。
「はっ、土壇場での1発だったが何とか出来るもんだな・・・・・!」
その光景を見た影人はホッとしながらそう呟いた。危なかった。本当に。だが、どうにか3人を守る事は出来た。影人は心の底から安堵した。
「・・・・・ああ、貴様ならば必ずどうにかすると思っていた」
そしてその瞬間、なぜかレイゼロールの声が影人の後ろから聞こえてきた。




