第1228話 スプリガンVSレイゼロール、最後の戦い2(2)
「ほざけ! お前は資格者ではない!」
『終焉』の闇で自身に向かって来る影を虚空に消しながら、レイゼロールは影人へと接近した。
「はっ、そうかよ! だがそういうところもガキだな! 誰かが誰かを助けるのに、救うのに資格がいるかよ!」
近づいてきたレイゼロールは『終焉』の闇を纏う右の拳を放って来た。影人はその拳を左手で受け止める。
「ッ、そのうるさい口を閉じろ!」
レイゼロールは四肢に『終焉』の力を纏い、凄まじい連撃を放った。影人はその連撃に対応するべく、一定の力を消費し自身の『世界端現』の効果を拡大させた。
「『世界端現』。終わりを弾け我が両足よ!」
両足にぼやけた闇が纏われる。これで影人も四肢に『世界端現』を発動させた事となる。影人はレイゼロールの四肢を使った連撃を、自身の四肢を使って捌いた。
「いいや、閉じないね! 今までこっちの形態じゃあんま話してなかったんだ! 最後くらいは話させろよ!」
素の自分を出しながら影人はそう言った。今まではスプリガンは謎の怪人という事で、クールな感じを演じていたが、もはやそれも必要はない。影人はこの最後の戦いが始まって以来、スプリガンとしてではなく帰城影人として言葉を述べていた。
「ならば、我が強制的にその口を閉じさせてやる! 貴様を殺してな!」
レイゼロールの連撃が更にその激しさを増す。触れれば問答無用で死ぬ、死の連撃。それが神速の速度で、嵐のような速度で放たれているのだ。普通ならば即死で、影人も四肢以外に『終焉』が触れれば当然死ぬ。しかし、そんな緊張感の中でも、影人は激しさを増したレイゼロールの連撃に対応した。これも、シェルディアとの修行の成果といえば成果だった。
「はっ、その割には動きが・・・・・単調になってきてるぜ!」
影人は右手でレイゼロールの左拳を逸らすと、レイゼロールの腹部に自身の左の拳を放った。レイゼロールはその一撃を避けようと、体を動かす。影人の拳は空を穿つが、すぐに影人は左手を開きそこに闇色のナイフを創造すると、そのナイフでレイゼロールの胴体部を切り付けた。
「っ・・・・・!」
「だからこんな攻撃にも当たる」
互いにほぼ同条件での近接戦。その近接戦で影人がレイゼロールに傷を付けた。それは、確かな変化であった。
「ガタガタだな、レイゼロール。俺の言葉に揺さぶられて、動きが変わって来てるぜ。戦いやすい動きに」
「黙れ! 調子に乗るなッ!」
苛立ったようにレイゼロールが声を上げる。レイゼロールは腹部の傷を即座に回復させ、変わらず凄まじい連撃を影人に放って来た。
「我の想いが貴様如きの言葉で揺らいでいるだと!? ふざけるな! ふざけるなよ! どれだけの想いで、どれだけの時をかけて我が今まで生きてきたか! 貴様如きに我の何が分かる!? 貴様ごときにッ!」
レイゼロールが叫ぶ。レイゼロールの精神が、感情によって揺り動く。その揺らぎは『終焉』の力を通して、儀式に使用されている『終焉』の闇にも揺らぎを与える。『終焉』の闇は徐々にその揺らぎを大きくし始めた。
「ああ、分かるかよ! 俺にはお前の痛みも苦しみも悲しみも分からねえ! だがなあ! これだけは言えるぜ!」
影人はレイゼロールの叫びにそう言うと、こう言葉を叫んだ。
「自分の苦しみを人に理解してもらいたいなら! まずはその奥にしまってるもんを全部吐き出せよ!」
影人は一歩レイゼロールに踏み込み、右拳をレイゼロールの左頬に放った。レイゼロールは「ぶっ!?」と声を漏らすと、後方へと殴り飛ばされた。




