第1227話 スプリガンVSレイゼロール、最後の戦い2(1)
「先ほどから我を救うなどと・・・・・・急に訳の分からない事を言うな!」
レイゼロールは態度に少し不愉快さを滲ませながらも、精神は氷のような冷たさを維持しながら『終焉』の闇を影人に放った。
「『世界端現』。我が両手よ、終わりを弾け」
影人は自身の両手に『終焉』の力を弾く『世界端現』を発動させると、その両手で『終焉』の闇を弾いた。
「戸惑ってるのかよ? 俺にそう言われる事に。まあ、お前の気持ちは分かるけどよ」
影人は周囲に闇色の銃の群れを創造し、レイゼロールに向けてそれらを発砲させた。一瞬にして100、1000を超える音速の弾丸がレイゼロールを襲う。
「確かに戸惑いもある。だが、お前はソレイユの神力を与えられた者だ。お前とソレイユの関係は知らんが、ソレイユと同じ、我を救うという目的を抱いてるのは、別にそこまでおかしな事ではあるまい」
弾丸の群れを全て『終焉』の闇で無力化しながら、レイゼロールはそう返答した。
「だが、我が貴様の言葉に感じている最も大きな感情はそれではない。我が1番抱いてる感情は・・・・・不愉快さだ・・・・!」
「っ・・・・・?」
ほんの少しだけ感情を揺るがせながら、レイゼロールはその漆黒の眼で影人を睨んだ。レイゼロールの続くその言葉を聞いた影人は、どういう事だといった感じの顔を浮かべた。
「我を助ける。我を救う。・・・・・その言葉を我に吐ける者は、ただ1人の人間だけだ・・・・! 我が遥か昔に約束を交わした人間、エイトだけが我にそう言える! お前如きが、ソレイユさえも、我にそう言う資格はない! ゆえに、不愉快だ・・・・!」
出来るだけ感情を動かさないように努めながら、レイゼロールは自身の本心を吐露した。そう。自分を救えるのは、レイゼロールが約束を交わし唯一心を開いた人間であり、人間たちに殺された今は亡きエイトだけ。レイゼロールが今蘇らせようとしている、兄のレゼルニウスですら、それは違うのだ。
「っ!?」
その言葉を聞いた影人は衝撃を受けた。レイゼロールは未だに影人との約束を覚えていた。金の瞳を大きく開けながら、影人はほんの少しの間、衝撃が体に行き渡るのを感じていた。
(ああ、そうか。お前はずっと、ずっと俺の事を、俺との約束を覚えてくれてたんだな・・・・・・)
気がつけば、影人は少し口角を上げていた。影人は嬉しかった。ただ嬉しかった。レイゼロールがあの森での、あの美しい夜空の下での約束を覚えていてくれた事が。そう言ってくれた事が。
「はっ、そうかよ。・・・・だったら、問題はないぜ」
そう問題はない。何もない。影人がレイゼロールを助け、救う事に。
「お前は、存外にバカな奴だよレイゼロール。寂しいなら寂しいって、素直に言えば言いのによ」
「なっ・・・・・・・・」
急にそんな事を言われたレイゼロールは、呆気に取られたような顔になる。影人はニヤリとした顔になると、こう言葉を続けた。
「永劫に近い時を生きてきた神でも、人間のガキと何にも変わりはしない。お前はガキだよ、レイゼロール。自分の本心すら素直に吐けない、ただのガキだ」
「っ、貴様如きが・・・・・・知ったような口を利くなッ!」
影人のどこか煽るような言葉に怒りを抱いたレイゼロールは、再び『終焉』の闇を放ち、複数の闇の雷を影人に放った。レイゼロールの感情を受け、儀式に使用されている『終焉』の闇は少し不安定になったが、すぐにレイゼロールが怒りを無理やり収めたため、何とか問題は起きなかった。
「利くさ。この世でただ1人、俺だけがお前にそう言えるんだからな!」
影人は闇の雷を回避し、『終焉』の闇のみを両手で弾きながらそう叫んだ。そして、闇色のスプリガンの姿を象らせた影を複数召喚し、レイゼロールに突撃させた。




