第1225話 スプリガンVSレイゼロール、最後の戦い1(3)
「・・・・無駄だ。影闇の鎖は、どんなモノだろうが確実に捕らえる」
しかし、その光景を見ていた影人は、ただ事実を述べるかのような淡々とした口調でそう呟く。すると、影人が述べたように、影闇の鎖は幻影化したレイゼロールに巻き付き始めた。鎖が幻影化したレイゼロールに触れた瞬間、レイゼロールの幻影化は解除され、レイゼロールは実体を取り戻す。
「っ!? 幻影化を無効化しただと・・・・!?」
鎖に捕らえられ、空中で動きを奪われたレイゼロールはいっその事、ショックを受けたような顔でそう言った。おそらく、レイゼロールは幻影化にある種の絶対の信頼を置いていたのだろう。その幻影化が無効化された事が信じられない。その気持ちはよく分かると、同じくソニアに幻影化を無効化された影人は思った。
「・・・・・・影闇の鎖は、生と死の境界が不安定な『影闇の城』の場内に存在する捕縛の鎖。元々、不安定なモノを捕らえる鎖なんだよ」
レイゼロールには相変わらず聞こえないだろうが、影人はそう呟きながら右手を捕縛されているレイゼロールに向けた。そして、影速の鎖は純粋な力以外では壊す事は出来ない。例え、『破壊』の力であっても。
(・・・・悪いな、レイゼロール。今から俺はお前を傷つける・・・・・・・・)
影人は右手の先に闇色の剣を創造しながら、内心でそう宣言した。正直に言えば、過去でレイゼロールと過ごした影人からすれば、出来ればレイゼロールは傷つけたくはない。過去での思い出が影人の中に蘇る。
だが、これは戦いだ。やらなければ勝つ事は出来ない。影人にとっての勝利は、不老不死のレイゼロールをどうにか殺す事ではない。レイゼロールを救う事だ。そのためには、ある程度までレイゼロールを弱らせなければならない。
レイゼロールを救うために、レイゼロールを傷つける。この矛盾を飲み込まなくてはならない。そして、帰城影人という少年は、その矛盾を飲み込める少年だった。
「剣よ、闇の女神を貫け。併せて、現れろ『影速の門』」
剣に一撃を強化する言葉を乗せ、剣の先に黒いゲートのようなものを出現させる。未だに身動きが取れないレイゼロールに向けて、影人はその剣を発射した。
「行け」
その言葉と同時に、闇の剣がレイゼロールに向けて放たれる。剣は「影速の門」を潜り、爆発的に加速し、レイゼロールの胸部へと穿たれた。
「がっ・・・・・!?」
『硬化』の力のおかげで貫通こそしなかったが、一撃を強化され「影速の門」で爆発的な速さを持った剣は、レイゼロールの胸に深々と刺さった。赤い血が上空から雨のように地上へと降り注ぐ。
「・・・・・もう一丁だ」
影人は氷のように冷めた声でそう言うと、また右手の先に剣と「影速の門」を創造した。そして、また一撃を強化する言葉を述べると、少し狙いを下にして剣を発射させた。
「がふっ・・・・!?」
今度は腹部に剣が着弾し、レイゼロールはまた苦悶の声を漏らした。また多量の赤い血が噴き出し、赤い雨が降った。




