第1224話 スプリガンVSレイゼロール、最後の戦い1(2)
「・・・・・・・・『終焉』の力を取り戻した我と現在対等に戦っている貴様の強さは認めてやろう。だが、それでも・・・・お前では我には勝てない!」
レイゼロールはその身に全ての身体能力を高める力を使用した。今まで使っていた常態的な身体能力強化や『加速』『硬化』に加えて、目の強化に四肢への『破壊』の付与。そして、影人に向かって駆けながら、周囲から複数の闇の光線をスプリガンへと放った。
「いいや、勝つんだよ。勝たなきゃ死んでも死にきれねえからな!」
レイゼロールと同じく全ての身体能力を高める力をその身に施した影人も、レイゼロールへと向かって再び駆ける。同時に、右手の『世界端現』の力は解除した。
「『世界端現』。影闇の鎖よ、出でて我が意に従え!」
影人は一定の力を消費して、会得した『世界端現』の力を使用した。影人の言葉に反応し、影人の周囲の空間から闇色の鎖が数本出現した。一見すると、いつも影人が呼び出している鎖に見えるが、これはただの鎖ではない。影人の『世界』、『影闇の城』に存在する強力な鎖だ。『影闇の城』の城主たる影人の命令に従う、この世には存在しない鎖。『世界』の欠片。
「行けよッ!」
影人は鎖に自身のイメージを伝えるようにそう叫ぶ。すると、鎖は1人でに動き始めた。
「フッ・・・・・!」
「シッ・・・・・!」
その間に、レイゼロールと影人は交錯し近接戦に入った。互いに神速の速度から繰り出される打撃を、目を闇で強化した2人は当然のように反応し、迎撃し回避する。結果、1周回ってレイゼロールと影人の近接戦は、2人にとって普通の近接戦へと化していた。
「はっ、相変わらずだな俺たちの近接戦は・・・・!」
「ふん、やけに饒舌だな今日の貴様は・・・・・!」
拳と拳を交えながら、影人とレイゼロールはそんな言葉を交わし合う。そして、影人は右の蹴りを放ちながら更にこう言った。
「饒舌にもなるぜ。今日で終いなんだからよ・・・・! 来いよ影闇の鎖!」
影人がそう言うと、闇色の光線を弾いていた鎖たちがレイゼロールへと襲い掛かった。同時に、影人は畳み掛けるように拳や蹴りによる連撃を放った。
「ふん、この程度で・・・・・・」
レイゼロールがその場から瞬時に消える。瞬間移動だ。単純に回避の択としても強力極まりない。
(背後に気配はない。となると・・・・)
影人は上空を見上げた。すると、上空20メートル辺りの場所にレイゼロールがいた。
「・・・・・・やっぱり上だよな。だが・・・・」
影人はニヤリとした笑みを浮かべると、上空のレイゼロールには聞こえない声でこう呟いた。
「影闇の鎖は既にお前を囲んでるぜ」
影人が呟いた通り、影闇の鎖は瞬間移動したレイゼロールに対応するように、いつの間にかレイゼロールを捉えようと移動していた。
「なっ・・・・」
瞬間移動した自分をもう捉えようとしている鎖に、レイゼロールが驚いたような顔になる。そして、鎖はレイゼロールの体に触れ――
「ちっ」
――る前に、レイゼロールは幻影化の力を使用した。レイゼロールの肉体が、陽炎のように揺らめき霧のように変化しその実体を失う。全ての力を取り戻した今のレイゼロールからしてみても、幻影化は相変わらず力を多量に消費する奥の手だが、ここは使用すべきだと考えた。
幻影化は力を多量に消費する分、一種の無敵状態へと肉体を変化させる技だ。鎖に実体がない物は捕らえられない。レイゼロールはそのまま幻影化した体で鎖の範囲外に逃れようとした。




