第1223話 スプリガンVSレイゼロール、最後の戦い1(1)
「まだまだ行くぜッ!」
レイゼロールの頬に拳を穿った影人は、1度『世界端現』を現象化した拳を引き、そのままレイゼロールの腹部に拳を放とうとした。
「っ、調子に乗るな・・・・!」
2撃目は受けまいと、レイゼロールは周囲の空間から闇色の腕を複数呼び出した。
「乗らなきゃお前には勝てないだろうがよ・・・・!」
それに対応するように、影人も周囲の空間から闇色の鋲付きの鎖を呼び出す。鎖は闇色の腕を縛り付け動きを奪う。
「俺は誓ってるんだよ。遠い遠い昔に。お前を助けるって、お前を救うってな! そのために、まずはお前に勝つんだよ!」
「訳の分からぬ事をほざくな!」
影人の言葉に、レイゼロールは苛立ったようにそう言葉を返す。そして、瞬間移動で影人の背後へと移動した。
(どうやって『終焉』の闇を弾いたのかは知らんが、鍵はその闇を纏わせた右手だろう。ならば、それ以外の場所ならば・・・・・・!)
レイゼロールは『終焉』の闇を纏わせた右手を貫手の形にして、影人の背中に放った。スプリガンはまだ瞬間移動には対応出来ていないはず。ロシアでの事を思い出しながら、レイゼロールはそう考えた。
「はっ、悪いがそいつはもう対応済みだ」
だが、影人はニヤリと笑い背後のレイゼロールにそう言うと、体を瞬時に横に移動させその攻撃を回避した。
「っ・・・・!?」
「瞬時に消えて姿が見えねえなら、後ろか上しか移動場所はないだろ・・・・!」
レイゼロールの方に振り向いた影人は、周囲の空間に約1000本ほどのナイフを創造し、それをレイゼロールに向けて放った。
「くっ・・・・・・・・」
レイゼロールは仕方なくそのナイフの群れを回避し、あるいは迎撃しながら一旦後方へと下がった。そして、『終焉』の力も1度解除する。これ以上の連続使用は流石に危険だからだ。レイゼロールの全身から立ち昇っていた闇が消え、瞳の色もアイスブルーへと戻った。
(よし、ちゃんと反応出来た。嬢ちゃんとの地獄の特訓の成果だな・・・・・・・・)
1度レイゼロールに距離を取らせた影人は、内心でホッとしたようにそう呟いた。影人はこの2ヶ月間ほど、シェルディアと『世界端現』を会得するための修行をしていた。まあ、最近はシェルディアから教わった事を1人で反復しているだけだったが。シェルディアがこの戦場に最初からいて、影人だけが途中から参戦したのはそういう理由からだった。
そして、影人はその修行と同時にシェルディアから戦闘の修行も受けていた。その修行内容は、真祖化したシェルディアとの手合わせ。もちろん制限はなしだ。影人はシェルディアを殺す気で攻撃し、シェルディアは影人を殺さない程度に攻撃する。ルールというルールはそれだけ。影人が傷を負えば、シェルディアが無限の生命力を与え回復させる。その繰り返し。はっきり言って地獄だった。影人は何度も死の淵を見た。
しかし、その修行の結果、影人の戦闘におけるセンスや勘、反応速度は修行前と比べ飛躍的に上昇した。レイゼロールの瞬間移動に反応出来るようになったのは、そういった理由からだった。
「貴様・・・・強くなっているな、あの時よりも・・・・」
「ああ、柄にもなく修行したからな。2ヶ月前の俺だとは思わない方がいいぜ」
自分を睨んでくるレイゼロールに、影人はそう言葉を返した。強くなりたいと修行し努力するなど、帰城影人という人物の柄ではない。しかし、影人は修行し努力した。全ては過去でのレイゼロールとの約束を果たすために。




