第1221話 絶対を切り裂く者(4)
「あー、ここであいつかよ・・・・ちくしょう、もうちょっと前だったら戦えたのによ・・・・なあ、響斬」
「ははっ、確かにね・・・・・・でも、流石に今は戦えないよ。ぼかぁ、限界越えまくったし。まあ、それは君も同じはずなんだけど・・・・冥君、何で歩けてるのさ?」
冥に肩を貸されて無理やり歩かされていた響斬は、冥にそう聞いた。気を失っていた響斬は、冥に叩き起こされたのだ。
「ちょっと寝転んで休んだら回復した。だがまあ、俺もお前に肩貸して歩くのが限界だ」
響斬の言葉に、髪を下ろしたストレートの長髪姿の冥はそう言葉を返した。冥の言葉を聞いた響斬は「いやー、流石の戦闘民族っぷり・・・・・」と苦笑した。
「というか、こんな時にこんな事言うのあれだけどさ・・・・・・・・今の冥くん、ぱっと見、美女だよね。いや、すんごい別嬪さんだよ本当に」
続けて、響斬は冥の顔を見ながらそう言った。元々、綺麗な顔をしていた冥だったが、髪を解いた今は凄まじく美人に見える。これは少し危ない。イケナイ感情を抱きそうだ。響斬は本気でそう思った。
「あ? 何だ殺されてえのか響斬てめえ!」
「いや、素直な感想・・・・・って痛い痛い! 拳をグリグリするのは止めてくれよ!」
左の拳で自分のこめかみをグリグリと押してくる冥に、響斬は悲鳴を上げた。
「おやおや、あちらは賑やかですねー。ねえ、ゾルダートさん?」
冥と響斬のやり取りを見て、そんな感想を漏らしたのは、真夏によって戦闘能力を奪われたクラウンだった。クラウンは少し離れた安全な場所から、戦場を観察していた。他にやる事もないからだ。
「あー、うるせえよピエロ野郎・・・・・俺は、お前と違って死ぬほど疲れてんだよ」
一方、クラウンの隣に大の字で寝そべっていたゾルダートは、本性を曝け出した口調でクラウンにそう言葉を返した。メリーによって胸部を剣で貫かれ、銃で蜂の巣にされたゾルダートは、最後の回復の力を使って傷をある程度まで回復させていた。その代わり、全ての闇の力を使ってしまいクラウン同様に今日はもう戦えないが。
「おや、そのようですねー。いつもの取り繕うような薄っぺらい態度が剥がれていますから」
「はっ、言いやがるじゃねえかよ・・・・・・1番薄っぺらいお前が」
「ええ、ワタクシめは道化師ですからー。薄っぺらくない道化師なんて、道化師じゃありませんよ」
ゾルダートにそう言われたクラウンはニコリと笑った。そして、未だに戦っている闇人たちやレイゼロールに視線を向けるとこう言葉を述べた。
「はてさて、この世界の運命はどうなるやら・・・・ワタクシめは出来ればハッピーエンドを望みますが、落伍者である私たちに出来るのは、ただこの戦いの行く末を見守るのみですねー」
「けっ、ハッピーエンドなんざ訪れるとは思えねえがな。だがまあ・・・・敗者に口なしだ。これ以上、何も言わねえよ俺は」
「おや、存外に殊勝な事で。ですが、それでもワタクシはハッピーエンドを望みますよ。そうでなければ・・・・・・・・」
クラウンはふっと少し悲しげな笑みを浮かべると、こう言った。
「あまりにも悲しいじゃないですか」




