第1214話 絶望(4)
「っ・・・・・好き勝手に・・・・・!」
「言ってくれる・・・・・わね・・・・・!」
その言葉を聞いた陽華と明夜は、悔しさと怒りが混ざったような顔でヨロヨロと立ち上がった。全身に激しい痛みと倦怠感を感じるが、レイゼロールの言う通り最低限は動けそうだ。
「そこまで言うなら・・・・・明夜!」
「ええ。どっちにしても、もうこれしか手段はないわ・・・・・やるわよ陽華!」
2人は互いの名を呼び合うと、レイゼロールの方に向かって手を突き出した。陽華は右手を、明夜は左手を。
「輝け、私のこの想い。全てを明るく照らす太陽のように――」
「輝け、私のこの想い。全てを優しく照らす月のように――」
陽華と明夜がそれぞれ言葉を唱え始める。すると、陽華と明夜の全身にオーラが纏われた。陽華にはクリスタルレッドの。明夜にはクリスタルブルーの。
「この右手に宿れ、我が光よ。我を支えろ、光の片翼よ――」
陽華の左手のガントレットが光となって陽華の右手に宿る。そして陽華の左半身、その背に光り輝く片翼が顕現した。
「この左手に宿れ、我が光よ。我を支えろ、光の片翼よ――」
明夜が地面に突き刺していた杖が光となって明夜の左手に宿る。そして明夜の右半身、その背に光り輝く片翼が顕現した。そして、2人は光が宿った手をお互いに重ね合わせた。
「「届け! 私たちの浄化の光! いっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
陽華と明夜がそう叫ぶと、2人の重なった手から凄まじい光の奔流が放たれた。陽華と明夜が2人で放つ、光臨状態の最大浄化技。極限の光の奔流がレイゼロールを襲わんとする。
「そう、それだ」
レイゼロールは向かって来る極光のように輝く奔流に対し表情を変えずにそう呟くと、その光に向けて右手を向けた。
「闇よ、光を喰らえ」
一撃を強化する言葉を呟き、レイゼロールは右手の先から先ほどと同様に闇の奔流を放った。激流と化した闇が極光と衝突した。瞬間、激突点を中心として凄まじい風が巻き起こる。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」
全ての力を込めて、陽華と明夜は声を上げた。これが自分たちに出来る最大最強の技。この技が通らなければ終わりだ。だから、2人はこの技に全てを懸けた。
「絶対に負けない・・・・! この世界のためにもッ! みんなのためにもッ!」
「私たちはみんなの想いを背負ってここにいるんだから!」
陽華と明夜が正の思いを燃やす。2人の思いが力となり、光の奔流を強める。
「・・・・流石に闇臨状態のダークレイを追い詰めただけはあるな」
強くなった光の奔流に、少し闇の奔流が押され始める。レイゼロールも、2人の最大浄化技にそんな感想を漏らした。
「だが・・・・・・それでも我には届かない」
レイゼロールは更に闇の力を闇の奔流に込めた。すると、闇の奔流がその形を変え始めた。闇の奔流は巨大な闇色の右手に変化すると、その掌で光の奔流を受け止めた。
「「ッ!?」」
その変化に陽華と明夜が驚いたような顔になる。レイゼロールは自身の翳した右手をグッと握った。
「潰れろ」
レイゼロールの右手に連動するように、奔流が変化した闇の手も光の奔流を握り締め始めた。そして、
「・・・・・・・・終わりだ」
闇の手は光の奔流を握り潰した。陽華と明夜の最大浄化技は、レイゼロールに無効化されてしまった。




