第1212話 絶望(2)
「な、何のつもり・・・・・?」
「言っただろう。絶望を教えてやると。さっさとしろ」
戸惑う陽華にレイゼロールは無感情に言葉を返す。陽華は後方にいた明夜の方に顔を向けた。レイゼロールの言葉を聞いていた明夜は、真剣な顔で頷いた。
「・・・・・やるしかないわ」
「・・・・・分かった」
明夜にそう言われた陽華はレイゼロールから少し距離を取った。
「光炎よ! 我が右手に纏え! 全てを浄化し焼き尽くす程に、燃え狂え!」
陽華が叫ぶと、陽華の右手に光り輝く炎が纏われた。篝火のようなその炎を纏わせた右手を掲げながら、陽華は言葉を続ける。
「光炎よ! 我が手に宿れ!」
陽華の右手のガントレットの甲についていた装置のようなものがカシャリと開閉する。中には透明の宝玉のようなものがあった。陽華の手に纏われていた光炎は、その宝玉へと吸い込まれ始めた。そして、宝玉は全ての炎を吸い、その色を真紅へと変えた。
陽華の右手のガントレットの色がクリスタルレッドに変化し、真紅の宝玉の周囲に太陽のような光輪が出現する。陽華は完成した自分の拳を握り締め、レイゼロールに向かった。
「この拳が! 私のッ! 最大の一撃だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
陽華の光臨状態最大の一撃がレイゼロールに放たれた。
「・・・・ならばその一撃、砕いてやろう」
レイゼロールはその右拳に対して、闇を纏わせた右の拳を放った。結果、陽華の右拳とレイゼロールの右拳がぶつかった。
「ッ・・・・・・・・!」
「・・・・」
光の力纏う拳と闇の力纏う拳が激突し合い、2人の拳を中心として力場が発生し、衝撃波が巻き起こる。陽華とレイゼロールは互いの拳を押し続けた。
「ぐっ・・・・!」
「ふん、この程度か」
力を込め顔を歪ませる陽華に対し、レイゼロールは変わらず無表情だ。そして、レイゼロールは右腕に軽く力を込めた。
「貧弱な拳だ」
その結果、レイゼロールの拳が陽華のガントレットを押し込み、ガントレットはヒビが入り砕け散った。
「あ・・・・・・・・」
ガントレットが砕け散り、陽華は思わずそんな声を漏らす。大技の反動で隙を晒した陽華に、レイゼロールは一歩踏み込み、そのまま闇纏う右拳を陽華の腹部に穿った。
「がっ・・・・・!?」
内臓か何かだろうか。陽華は自分の体の中で何かが潰れる音を聞いた。何かが破裂するような感覚もした。意識が半ば暗闇へと落ちる。レイゼロールは右手で倒れんとする陽華の首根っこを無造作に掴んだ。
「陽華!?」
「お前も最大の一撃を撃ってこい。こいつをすぐに殺されたくなければな」
陽華の名前を叫ぶ明夜に、レイゼロールは冷たくそう告げた。それは脅しだった。




