第1211話 絶望(1)
「絶望なんて絶対にしない・・・・・!」
「諦めない限り、希望を捨てない限り・・・・・道は必ずある・・・・・!」
陽華と明夜はレイゼロールにそう言葉を返すと、互いに行動に移った。陽華は再びレイゼロールへと接近し、明夜は杖をレイゼロールに向ける。
「水氷の礫よ、敵を撃て! 水氷の茨よ、敵を縛れ!」
明夜の魔法が発動し、数百もの水と氷の礫と数十もの水と氷の茨がレイゼロールを襲う。凄まじい物量攻撃だ。
「この程度で・・・・」
レイゼロールは幾重もの闇の風刃を創造し、その風刃を以て明夜の水氷の礫と茨を全て切り裂いた。
「光炎よ! 渦巻く灼熱の奔流となって全てを焼き尽くせ!」
レイゼロールに接近した陽華が、両手をレイゼロールへと向ける。すると、陽華の両手の先から光炎の奔流が放たれた。
「・・・・・・・・」
レイゼロールは自身を襲わんとする光炎の奔流を一瞥すると、無造作に自身の左手を向けた。すると左手の先に闇色の渦が現れ、光炎の奔流は全てその渦に吸収されてしまった。
「ッ・・・・・・!」
陽華が少し厳しい表情を浮かべる。すると、レイゼロールの両側面から光司と壮司が接近し、その武器を振るった。
「はぁぁッ!」
「シッ!」
光司の剣撃と壮司の斬撃がレイゼロールを襲う。レイゼロールはその両者の一撃を、『硬化』した両手で受け止めた。続けて、右手で光司の剣の刀身を、左手で壮司の大鎌の刃を握る。そして力を込め、それらを握り砕いた。
「「っ!?」」
「ふん・・・・・」
武器が壊された事に驚く光司と壮司。武器を握り砕いたレイゼロールは、そのまま光司と壮司の右手首を握りべキリと2人の骨を握り砕いた。
「「っ〜!?」」
突如、右手首に走った激痛に光司と壮司が声にならぬ悲鳴をあげる。2人は反射的に持っていた剣と大鎌の持ち手を離した。
「・・・・・地が天に届く事はない」
レイゼロールは虚空から無数の闇色のナイフを召喚すると、そのナイフに光司と壮司の体を突き刺させた。刃物が肉を貫く音が次々に聞こえる。赤い血が飛沫となって周囲に飛び散る。レイゼロールはその血飛沫から自分を守るように、薄い闇色の膜を全身に纏わせた。光司と壮司は全身を赤く染めながら、膝から地面に崩れ落ちた。
「香乃宮くん!? 『死神』さん!? このぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
その光景を見た陽華がショックを受けた顔になる。そして、陽華はレイゼロールに突撃し、右拳を放った。レイゼロールはその拳をパシッと自身の左手で受け止めた。まるで、キャッチボールのボールを受け止めるような気軽さで。
「っ・・・・・!?」
「・・・・・こんな拳で何をするつもりだ?」
レイゼロールは陽華の拳をつまらなさそうに見ると、右手に一撃を強化する闇を纏わせた。
「お前の最大の一撃を打ってこい。ダークレイ戦で見せたあの一撃を。・・・・・打たなければ、すぐにでも殺す」
レイゼロールは陽華の右拳を離すと陽華にそう告げた。




