第120話 闘いとサプライズ?(3)
扇陣高校は、公立の学校であるが体育館が三棟ある。それは扇陣高校の広大な敷地面積があるからこそなのだが、なぜ公立の1高校がこのような広大な面積を誇っているのかは、近辺の人々の1つの謎だった。
その謎は一部の政府の人間や、実際にこの学校に通っている光導姫や守護者の生徒たちくらいしか知るよしはない。
「――光導姫と守護者のための学校でもある、この扇陣高校は光導姫や守護者をサポートするための施設がいくつかあります。その1つが今から向かう第3体育館」
生徒会室を後にした風音、光司、陽華、明夜は風音の先導でその場所に向かっていた。
「それはただの体育館ではないんですか?」
「うん、もちろんただの体育館としても利用は出来るんだけど、第3体育館の本当の用途は今から行う『模擬戦』などをするための場所なの」
明夜の質問に初めより砕けた口調の風音がそう答えた。
「だから他の体育館よりは頑丈だし、あそこにはソレイユ様とラルバ様の奇跡もあるから思い切り闘えるの」
「「ソレイユ様とラルバ様の奇跡・・・・・・・・?」」
その言葉の意味を陽華と明夜は理解出来なかった。いや、それをいうなら『模擬戦』という言葉も陽華と明夜には正確には分からない。2人に分かっているのは、自分たちの前を歩く日本最強の光導姫とこれから闘うということだけだ。
「それは見てのお楽しみ・・・・・・・ということにしておきましょう。ね、光司くん?」
「・・・・・・・・ああ」
風音が少し茶目っ気のある口調で、奇跡の正体を知っている光司にそう同意を求めたが、光司は先ほどからどこか浮かないような顔をしていた。
(本当にいいのか? 2人に模擬戦をさせて・・・・・・・)
光司はまだ風音と2人を闘わせてもいいのか、ということを悩み続けていた。
自分でも悩みすぎだとは思うし、新品に言われた通りだとも思うのだが、やはりその問いかけが光司の頭の中を支配していた。
「着きました。ここが第3体育館よ」
風音が校内の隅の方にある体育館の前で足を止めた。どうやらここが目的の場所のようだが、外から見たところただの体育館以外の何物でもない。
「この体育館は土足で入っても大丈夫だから、その点は心配しないで」
風音はそう言って体育館の扉を開けて中に入っていった。
3人も風音の後に続き体育館内へと足を踏み入れる。
中も変わったような所はどこにも見受けられない。普通の体育館だ。
そして体育館のステージの縁に新品がただずんでいた。
「来られましたか。準備は既に整っているでありますよ会長」
いやよく見れば、新品の足下に正方形で出来たキューブのような物体があった。
それは真っ白なキューブであった。大きさはそれほど大きくはない。
「ありがとう。では始めて芝居、モードはプラクティスルームでお願い」
「「?」」
陽華と明夜が頭に疑問マークを浮かべる中、新品は「了解であります」となぜか敬礼した。その際、光司が体育館の扉を完全に閉めた。
「おお光司様、これはかたじけない。なにせこれは密室でなければ使えませんからな。――では、『メタモルボックス』起動。モード、プラクティスルーム」
新品がそのキューブに手を触れながらそう言うと、突如としてそのキューブが眩い光を放ち始めた。
「な、何これ!?」
「何の光!?」
陽華と明夜が驚く中、光は体育館の中を満たしていく。そして一際強く輝いたかと思うと、そこは真っ白なだだっ広い部屋へと変化していた。
「「え・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」




