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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第119話 闘いとサプライズ?(2)

「――ごちそうさまでした」

シェルディアとの一応の最後の晩餐を終えた影人は、食事への感謝を示すために手を合わせた。一応とは、シェルディアは今日で帰城家から出てはいくが、母親が「滞在している間はいつでもご飯を食べに来なさい!」などと言ってていて、シェルディアも「是非また」と言っていたからだ。間違いなく、シェルディアはまた来るという確信が影人にはあった。

 まあ、その前に自分がシェルディアの滞在先を訪れなければ、自分の横に座っているこの少女は拗ねると思うが。

 夕飯は主にシェルディアとの別れを惜しむ母の話であったが、他愛のない話もあった。何でも下で管理人と会ったところ、帰城家の隣の部屋に新しい住人がやって来るらしいという話を聞いただとか、スーパーの特売がどうのこうのといったどうでもいい話だ。

 そして、夕食後からしばらくしてその時は来た。

「――2日間という短い間だったけど、私に親切してくれて本当にありがとう。この恩は決して忘れないわ」

 影人、妹、母、の帰城家の全員にシェルディアはそう言って優雅にお辞儀をしてみせた。その立ち振る舞いは「淑女」といった言葉がピッタリだと影人は思った。

 シェルディアの言は、捉え方によってはどこか偉そうに聞こえる。だが、不思議とそこに不快感はない。シェルディアにはそのような不遜な言葉がどこか板に付いているような気がした。それに、短い間だったが、シェルディアが感謝しているのは本当だということくらいは影人にも分かった。

 母親は泣きながらシェルディアに抱きついた。シェルディアは最初意外そうに目を大きくしていたが、柔らかい笑みを浮かべるとその華奢な手を影人の母親の背に回した。

 普段は感情をあまり表に出さない妹も、シェルディアとの別れをどこか惜しんでいる様子だった。しっかりと握手を交わすと、「また来て」と言っていた。

「じゃあな、嬢ちゃん。お別れだ」

「そうね、一旦はお別れだわ。でも、きっとまたあなたと会うわ影人。だって、あなたが会いにきてくれるから」

 そして影人は玄関先までシェルディアの見送りを母親から言い付かった。影人がプレゼントしたぬいぐるみをしっかりと抱きながら、シェルディアはどこか嬉しそうにそう言った。

「まあ、それは言っちまったからかまわねえけど・・・・・・・・・・俺、嬢ちゃんがどこに滞在するのか知らねえぞ? 場所を教えてくれなきゃ行けないんだが・・・・・・・・」

 少し気恥ずかしさを覚えながらも、影人はシェルディアにそう言った。

 そう、まだこの時点でも、影人はシェルディアがどこに滞在するのかを聞いていなかった。ならばスマホや携帯といった通信機器を使えばいいという話に普通はなるのだが、シェルディアはそんな物を持っていなかった。何でも「縛られているようでいや」とのことだ。というか、そもそもシェルディアは日傘くらいしか所持していなかった。

 ゆえに影人はここでシェルディアから滞在先を聞かなければ、シェルディアがどこにいるのかという情報を得られなくなるということだ。

「ああ、それなら大丈夫。()()()()()()()()()()()()から」

「は・・・・・・・・・?」

 シェルディアもそのことはよく分かっているはずなのに、返ってきた答えは、はっきり言って意味の分からないものだった。

「嬢ちゃん、それはどういう意味――」

「じゃあね影人。()()()()

「あ、おい!」

 シェルディアは悪戯いたずらにそう笑うと、扉を開けて外に出て行った。

 影人も靴に適当に足を突っ込んで外に出る。影人の住んでいる場所はマンションなので扉を開ければ、そこはマンションの構内だ。

 シェルディアはちょうど、影人から1~2メートル離れた場所、つまり隣の空き部屋の前に立ち、こちらを見つめていた。

(ああ、そういやあそこ、空き部屋じゃなくなったって母さんが言ってたな・・・・・)

 確か夕飯時に母がそんなことを言っていた。ただ、明らかにそれは今どうでもいいことだ。

「ふふっ、ふふふっ!」

 シェルディアは何かワクワクしているような、または何かを堪えきれないといった感じの笑い声を上げると、どこからか鍵を取り出した。

 その鍵はどこか見覚えのある鍵だった。

(鍵・・・・・・・・?)

 それは影人が必ず知っている鍵とほぼ同じだった。だが、この時点では影人はまだその事に気がつかない。後、3秒ほどすれば確実に気がつけたのだが。

「おやすみなさい」

 少女はそう言って、その鍵を使い、()()()()()()()()()()()()

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は!?」

 数秒間、突然の出来事に沈黙しても、状況が理解し難かった影人は、マンション内に響き渡るほどの大声でそう叫んだ。

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