第117話 巫女との面会(4)
「「「ッ・・・・・・・・!?」」」
その衝撃の言葉に、光司、陽華、明夜は目を大きく見開き、衝撃を受けた。
ただ、この場の誰も本人さえも気がついてはいないが、陽華だけはある種のショックを受けたような顔色も混じっている。
「おや、それは私も初耳でありますね」
3人とは違い、新品は無表情でそう言ったが、どうやら新品も風音からそのことを聞くのは初めてのようだ。
「ほ、本当にスプリガンと会ったんですか!? 彼は何か言ってましたか!?」
「ちょっと陽華、落ち着きなさい」
前のめりな姿勢で風音にそう聞く陽華。少し暴走気味の親友を珍しく明夜が押さえる。明夜の言葉に冷やされたのか、陽華はハッとした顔になり、申し訳なさそうに「ごめんなさい・・・・・!」と風音に頭を下げた。
「気にしないで。先ほどのお2人の話から、あなたたちの思いは伝わっています。スプリガンに助けられたあなたたちからすれば、スプリガンに関する情報をどのようなものであれ欲しいでしょうし」
風音が優しげな目を陽華と明夜に向けた。この2人にとって、スプリガンという存在は特別なのだろう。
「すまない、連華寺さん。よければ、昨日君がスプリガンと出会った時の状況を聞かせて欲しい」
光司が真剣なそれでいてどこか恐い表情で、風音にそう言った。どうやらこの2人とは違い、光司はスプリガンのことをあまりよくは思っていないようだ。光司とつき合いの長い風音はそう思った。
「ええ。といっても会ったのは一瞬だったし、言葉を交わしたのも二言、三言くらいよ」
そう前置きして風音は昨日のことを話した。闇奴との戦いの最中、闇奴の首が突然消し飛ばされた事。そして、その攻撃を行ったのが、金色の瞳の黒衣の怪人であったこと。
その怪人が自らのことを「スプリガン」と名乗ったことを。
風音が語ったのはここまで。その後、邂逅した【あちら側の者】の事については、一切を語らなかった。
「それは確かに奴・・・・・スプリガンだね」
姿を確認したことのある光司が間違いがないといった感じで頷いた。
「スプリガンは、連華寺さんを助けたんですね!」
陽華がどこか嬉しそうにそう言った。だが、その言葉を聞いた風音は分からないといった感じで首を横に振った。
「それは・・・・・・・分からない。結果的に彼は私を手助けしてくれたけど、その意図は私には何も分からなかった」
「・・・・・・・・そうですね。私達は彼のことについて何も知りません。でも、どのようであれ私たちが助けられたのも事実です」
明夜が風音の意見を認めつつも、強い意志を宿した瞳でそう断言した。いつものポンコツ加減はどこへやら、そこには非常に珍しい月下明夜がいた。
「だから少なくとも私と明夜は彼のことを信じています。・・・・・・・確かに、1度はスプリガンから攻撃も受けたけど、それでも・・・・・・・です」
明夜の隣の陽華も、明夜と同じく強い意志を宿した瞳を浮かべている。その強い意志とは、「信じている」という意志だ。
このようなことはソレイユにも述べた。その時からではないが、スプリガンに何度も助けられている2人は彼のことを信じている。
1度の攻撃が何だ。それ以上に彼は自分たちを助けてくれた。
「・・・・・・真っ直ぐな目。あなたたちは本当に彼を信じているのね。そして、彼に助けられることがもうないように、彼に追いつくために、強くなりたいと心の底から思っている」
風音は目を閉じた。2人の純粋な思いが伝わってくる。その思いが力になることを風音は知っている。
「・・・・・・・・あなたたちの思いしかと受け取りました。では、今のあなたたちの実力を、私に見せてください」
「「え?」」
陽華と明夜が意味が分からないといった感じの表情を浮かべる。いったいどういうことだ。闇奴が現れた時に、風音も同行するということだろうか。
「会長、それは・・・・・・」
「連華寺さん、まさか・・・・・・」
だが、新品と光司はその意味を正しく理解していた。真剣な目で2人は風音を見据えた。
「ええ。2人が予想している通りです」
風音は再び瞳を開き、戸惑っている陽華と明夜を真っ直ぐに見つめた。
「――お2人には、私と闘ってもらいます」




