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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第116話 巫女との面会(3)

「けほっけほっ! いや別にそんな意図はないぞ! 俺はただ事実を述べただけであってだな・・・・・・・・・・・・・・まあ、正直に言うと嬢ちゃんといた時間は楽しかったから、多少は暇になるかもだな」

 影人はそれは違うと弁明したが、素直に「寂しい」とは言わなかった。別段、影人はシェルディアとの別れを寂しいとは思わない。出会いがあるならば別れも必然訪れる。それは普通のことだ。

 ただ、シェルディアといて楽しかったのは本当だ。だからそういった面ではシェルディアがいなくなるのは、少々退屈になるとは思った。退屈、というよりかはシェルディアが訪れる前の日常に戻るだけなのだが。

「ふーん・・・・・・・・・あなた、年の割に妙に達観しているわね。そこは少し面白くないわ」

「嬢ちゃんがそれを言うかよ・・・・・・・」

 影人からしてみれば、年の割に妙に達観していたりするのはシェルディアの方だと思うのだが、シェルディアはそう感じたらしい。

「まあ、そんなにむくれるなよ。いつまで東京にいるかは知らないけど、滞在中にまた遊びに来たらいいじゃねえか。その時はまた歓迎するからよ」

「あら、あなたから私に会いに来てはくれないの?」

「・・・・・・・・・・・・わーったよ。俺からも会いに行くから機嫌直せ嬢ちゃん」

「そう? なら約束よ」

 シェルディアは先ほどまでの態度はどこへやら、上機嫌になって笑顔を浮かべた。

(こりゃ遊ばれたな・・・・・・・)

 まだシェルディアとは2日ほどのつき合いだが、分かったことが1つあった。それはシェルディアの笑顔の種類だ。

 影人が分かっている笑顔の種類は2つ。年相応の明るい笑みと、どこかミステリアスな少女らしからぬ笑みだ。前者は昨日シェルディアにプレゼントを贈った時に、シェルディアが浮かべていた。だが今の笑みは明らかに後者であった。

 つまりシェルディアのむくれたような様子は演技であったということだ。

「・・・・・・・・・・・ったく、嬢ちゃんも人が悪いぜ」

「聞こえてるわよ影人。心外ね」

 ぼそりと呟いたその言葉をシェルディアは聞き漏らさなかったようだ。余裕のある表情でシェルディアは影人をたしなめた。

「そいつは悪かったな。――さて残りの時間、嬢ちゃんは何をしたい?」

「決まってるわ。このままあなたとお話よ」

「はっ・・・・・・・・・・・・本当、嬢ちゃんは変わってるぜ」

 そんな言葉とは裏腹に、影人の口角は少し上がっていた。








「「――だから、私達は強くなりたいんです」」

 扇陣高校の生徒会室に陽華と明夜の声が響いた。その言葉を締めくくりとして、陽華と明夜がどうして強くなりたいか、なぜ風音の元を訪れたのかの理由は全て話し終わった。

「・・・・・・・・・そう、ですか」

 2人の話を聞き終えた風音が一言、そう言った。その表情は真剣そのものだった。

「こう言っては何ですが、お2人は光導姫の中でも異常な経験をしておられますね」

 光導姫という通常から考えれば特殊、異常と言っても良いかもしれない存在になったにも関わらず、2人の体験はおよそ光導姫になって約1ヶ月半の新人が経験するものでは決してない。

「いやはや本当に・・・・・・・・・普通の光導姫はまだその段階でフェリートやレイゼロールといった化け物たちと邂逅しないでありますよ」

 なし崩し的に話を聞いていた新品もそのような感想を漏らした。というか、新品はまだフェリートやレイゼロールを直接見たことがない。

「・・・・・・確かに連華寺さんと新品さんの言うとおり、彼女たちは凄まじい敵たちと邂逅してきた。それもここ最近でだ。でもそれよりも異常な事態と言えば――」

「スプリガンなる者の存在・・・・・・・ですね」

 風音が光司が言わんとしていることを察し、その名を出す。光司も「・・・・・ええ」と複雑な表情になりながら頷いた。

「スプリガンの噂は私も守護者の方達から聞きました。ですが、私はあくまで噂だと思っていたんです。闇の力を操る謎の怪人・・・・・・・こう言っては何ですが、()()()()の噂と同じくにわかには信じられませんでした」

()()()・・・・・・かい?」

 光司が違和感を覚えたようにそう聞き返した。語尾が過去形になっている。

「うん。私は昨日・・・・・・・・・スプリガンに出会ったから」

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