第115話 巫女との面会(2)
「「えっ!?」」
2人はバッと自分たちの後ろに立つ新品の方を向いた。新品は変わらず無表情であったが、思い出したようにポンと手を打った。
「おや? ・・・・・・・・ああ、これは失礼しましたであります。まだお2人には自分が光導姫とは言っていなかったでありますね」
「もう芝居ったら・・・・・・・私が事前に今日来るお客様は、他校の光導姫と教えたのだから、そこは忘れちゃだめでしょう?」
「そこは素直にごめんなさいであります。うっかりでありました」
新品がペコリと頭を下げた。光司はそんな新品をフォローするように言葉を発した。
「僕たちが急かしてしまったこともあるから、仕方がないよ。それを言うなら、新品さんと出会った時に、2人に新品さんも光導姫だと説明しなかった僕も悪い」
「おお、そう言ってくださると、自分これ以上メンタルが削れなくて済むであります」
「もう大げさね・・・・・・」
新品の言葉を聞いた風音はため息をついた。表情と言葉が一致していない。
「ウチの者がすみませんでした。この子は色々と忘れっぽいし誤解されやすい子なのですが、決して悪い子じゃないんです」
風音が申し訳なさそうにそう言った。新品芝居という少女はつき合いのある風音から見ても個性的な少女なのだ。
「それはもちろんわかってます! というか、そんなことで謝ってもらわなくてもいいですよ! 私たち、ただただ驚いただけですし!」
陽華は変わらずに明るく笑顔を浮かべる。本当にそんなことは全く気にしていなかった。
「ええ、新品ちゃんが悪い子なんてありえませんよ。その証拠に私達はもうフォーエバーフレンドですし」
「おお、我がエターナルフレンドよ。さすが魂でわかり合った友であります」
明夜は芝居のことを愛称で呼んでみせた。芝居は相変わらず無表情であったが、感激したような声で明夜と再び硬い握手を結ぶ。
「そういうことだよ、連華寺さん。あまり気にしすぎなくても、ね?」
「ふふっ、ええそうね光司くん。私ちょっと気にしすぎていたみたい」
風音はようやく明るい笑みを浮かべると、少し砕けた口調で話した。
「改めて光導姫ランキング4位『巫女』の連華寺風音です。もしかしたら、私に出来ることは多くはないかもしれけど、精一杯あなたたちの力になるね」
「「はい、お願いします!」」
真面目な表情で2人は声を揃える。今日、ここに来たのは少しでもあの黒衣の怪人の背中に追いつくため。少しでも強くなるためなのだから。
「ただいま、影人」
「おう、おかえり嬢ちゃん。って、言うのも今日で最後だけどな」
シェルディアが戻ってきたのはいわゆる「お昼のおやつ」くらいの時間であった。母と妹はまだ帰ってきていない。
「滞在先は見つかったのか?」
リビングでバリボリとお菓子を食べながら、何とはなしにそう聞いてみる。一応、野宿ではないかとまだ疑ってしまうので、それを込めての確認だ。
「ええ、元々目処はつけていたのだけれど今日正式に決まったわ。ああ、野宿ではないからそこは安心して」
昨日、影人がプレゼントしたぬいぐるみを抱きながら、シェルディアがソファーに座った。ちょうど影人の真横だ。
「そ、そうか」
どうやら影人の思惑はバレバレだったようである。自分より年下にあっさりと思惑がバレるというのはどこか恥ずかしかった。
「じゃあ、夜にはお別れだな。母さん張り切ってたぜ。嬢ちゃんのためにうまい料理作るってな」
「それは楽しみにね。ねえ、影人。それは別としてあなたはやたらと私との別れを強調するけど、そんなに私と別れたいのかしら?」
不満そうな顔でシェルディアはジト目を影人に向けてくる。のんきにお菓子を食っていた影人は、「うぐっ!」と菓子を思わず飲み込んだ。




