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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
110/2051

第110話 あちら側の者(4)

「ただいまー」

 プレゼントを自分の部屋に隠して、影人はリビングへの扉を開けた。スマホで時刻を確認してみると、6時半を少し過ぎたところだった。

(けっこうな時間だな・・・・・・まあ、仕方ねえか)

 今日は中々な1日だった。光導姫に自分の姿を確認させたり、プレゼントを選んだり、学校ではシェルディアから逃げ出したりと、けっこうてんこ盛りだった。

「あら、影人。遅かったわね」

「ああ、ちょっとな。――って、何してんだ嬢ちゃん?」

「見て分からない? 料理のお手伝いよ」

 母親と一緒にエプロンをつけて、髪を料理のためかポニーテールに纏めたシェルディアが楽しそうにそう言った。

「そ、そうか。別に無理に手伝わなくていいんだぞ?」

「無理にじゃないわ、私がお願いしたのよ。私は別に食客ってわけじゃないしね」

 どうやら無理矢理にではなかったようだ。まあ、影人の母親もそこまで図々しいわけではない。だが、絶対に嬉しそうに1度断り「じゃあお願い!」と言ったに決まっている。

「ふふっ、影人はそこで待っていなさいな。私、頑張るから」

 そう言って、シェルディアは母親の料理の手伝いへと戻っていった。






「嬢ちゃん、ちょといいか?」

「何かしら?」

 夕食を食べ終えた影人は、リビングでくつろいでいたシェルディアに声を掛けた。ちなみに、肝心の料理だが普段と変わらなく美味しかった。まあ、シェルディアは本当に手伝いだけに徹していたから、そこまで劇的に味が変わるということはなかったのだろう。

「悪いが、部屋まで来てくれないか?」

「ええ」

 もう少し事情を突っ込まれるかとも思ったが、二つ返事でシェルディアはそう言ってくれた。

 シェルディアを部屋に案内して、影人は先ほど買ったプレゼントをシェルディアに渡した。

「? これは?」

「その・・・・・・・今日のお礼だ。謝罪と感謝を込めてのな」

 恥ずかしそうに影人はなんとかシェルディアに言葉を伝える。今日の自分は弁当を届けに来てくれたシェルディアから逃げ出した。人として褒められた行動では決してない。その謝罪の意と、まだ出会って数日と経たない自分に弁当を届けに来てくれた感謝の意、その2つを込めて影人はプレゼントを手渡したのだ。

 さすがにリビングで渡すのは、妹と母親がいるので恥ずかしかったし、絶対に母親から、からかわれそうだったので嫌だった。

「・・・・・・・・開けても?」

「ああ。・・・・・・・・その趣味じゃなかったらごめんな」

 シェルディアは丁寧に梱包を解いていった。影人が緊張しながら見守る中、プレゼントの中身、白い猫のぬいぐるみであるソ○ダが姿を現した。

「わあ・・・・・・・可愛いわね」

 ジッと黒い目でシェルディアを見つめるシマシマパンツを履いた不思議なぬいぐるみをキラキラとした目で見ながら、シェルディアはそう呟いた。

 その喜び方は年相応の少女そのものだった。

「そ、そうか・・・・・・・」

 どうやらシェルディアもこれを可愛いと感じるようだ。影人はそうでもなかったが、これは感性の違いなのだろう。

「とても、とっても嬉しいわ影人。本当にありがとう、大事にするわ」

 ギュウとぬいぐるみを抱きしめながら、シェルディアは言葉通りとても嬉しそうに笑顔を浮かべた。

「なら、よかった。もしかしたら、ぬいぐるみなんていらないんじゃないかと思ってたから・・・・・・・・」

 思わずホッと息を吐く。どうやら本当にシェルディアは嬉しいようだ。これはタカギ玩具店の店主に感謝しなければいけない。

「そんなことないわ。私、可愛いものは好きだし。それに、あなたからプレゼントだもの。何を貰っても嬉しいわ」

 そう言うとシェルディアはぬいぐるみを影人のベッドに置いて、影人に抱きついてきた。

「な・・・・・・じょ、嬢ちゃん!?」

「ふふっ、こんな気持ちになったのは何年ぶりかしら。ありがとう、影人。私に優しくしてくれて」

「き、気にするなよ・・・・・・・・・そ、それと俺なんかに抱きついてもいいことないぜ? は、早く離れた方がいい」

 子供に抱きつかれただけだ。そう言い聞かせようとしても、心臓は鼓動を速め、顔も熱くなってくる。言葉も震えた。

「もう少し、もう少しだけこうさせて。あなたを感じさせて。私、本当に嬉しいのよ」

 影人の体温や鼓動を感じながら、シェルディアは安らかな顔をしていた。最初はただの人間だとしか感じなかったが、いつの間にか、自分はこの人間のことをとても気に入っていたようだ。

「・・・・・・・・・・・・わかったよ」

 そう言われてしまえば、影人はそう言うほかなかった。










「まさか、あなたが来ているなんて・・・・・・・・」

 神界。ソレイユは数時間前に聞いた巫女からの報告を思い出しながら、無意識にそう呟いていた。

 影人の会話の最中に自分に会いに来たのは『巫女』だった。その事じたいは、ソレイユは巫女がやって来るかもしれないと考えていたので、さして驚きはなかった。恐らくスプリガン、影人のことについての報告だと思っていた。

 巫女の報告の内容はソレイユが予想していたとおりスプリガンに関するもの。だが、それとは別にもう1つ報告があった。

 それは巫女を持ってしても、暴力的なまでの力の差を感じさせる少女の姿をしたものについての報告だった。

 突如として、世界が夜に変わり、その中心に君臨していた()()についての見た目についても巫女は教えてくれた。

 曰く、豪奢なゴシック服を纏ったブロンドヘアーを緩くツインテールに結った14~15ほどの見た目の少女。

 人外。【あちら側の者】。人とはことわりを別にした者。

 彼女を表す言葉は数多くあるが、ソレイユは彼女の固有名を知っていた。

真祖しんそが1人・・・・・・・・・シェルディア」

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