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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第108話 あちら側の者(2)

 よく考えればサイフを家に忘れていたことを思い出した影人は、一旦家に戻った。プレゼントをするにしても金がいるからだ。サイフの中に目を通すと、3000円少し。これくらいなら高いものでなければ、ちゃんと買えるだろう。

 喉が渇いたため、リビングにも足を運んだがシェルディアはいなかった。どこかに出かけているのだろうか。

 サイフを持って、再び家を出た影人は悩んだ末ある場所を目指した。

 家から自転車で15分ほどの場所、人通りの多い大通りから1本それた道にある少しボロめの、よく言えば老舗風のオモチャ屋である。看板にはかすれた文字で「タカギ玩具店」と書かれている。

「ここに来るのもけっこう久しぶりだな・・・・・・」

 最後に来たのはいつだったか。確か2~3年前だった気がする。

 この個人店は影人が小さい頃に親に連れてきてもらった所なのだが、それ以来ちょくちょく通っていた場所だった。

 店の前に自転車を止めて、影人は店内に入った。

 中は前に来た時とあまり変わっていないように思える。個人店ならではの古い玩具もあれば、最新と思われる玩具もある。奥のスペースには様々なプラモデルの箱もある。

(そういや、最近プラモ作ってないな・・・・・・)

 そんなことを思いながら影人は店内を物色していく。その時、やっと客がいることに気がついたのか女性の声が聞こえてきた。

「いらっしゃい。ん? 見ない顔だね。ご新規さん?」

 声がして来た方向を見てみると、レジのスペースに女性が1人、椅子に腰掛けていた。

 雑誌を開きながら、こちらに視線を向ける女性はまだ若いように思えた。

 どことなくサッパリとした雰囲気で、髪はそんに長くはない。たぶん肩口くらいだ。薄いメイクのその女性は美人といわれる類いだろう。そして、座っている場所的にその女性はこの店の店主か店員だ。

 そのことに気がついた影人は疑問の声を上げた。

「あれ? ・・・・・・・・・確かここっておじいさんが1人でやってる店じゃありませんでしたっけ?」

 そう小さい頃から3年ほど前まで、ここにちょくちょく通っていたから、影人はこの店が優しかったおじいさんが1人で切り盛りしていると言っていたことを覚えていた。自分が通っていないこの2~3年でおじいさんに何かあったのだろうか。

「ああ、じいちゃんの頃のお客さんか。実はじいちゃん去年に引退してさ。あ、何かあったとかじゃなくて、私がこの店を受け継いだの。だから、純粋な引退ね。そういうわけで、今はじいちゃんの孫の私がここの店主。髙木たかぎ水錫みすずっていうのが私の名前。よろしく少年!」

「は、はあ・・・・・・・」

 気さくな笑みを浮かべて、そう言った現店主のテンションが妙に高かったので、影人は少し気後れした。

「そうですか・・・・・・・元気ならよかったです」

「あはは、元気も元気。ここしばらくは将棋友達とずっと将棋打ってるし」

 カラカラと笑いながら、前店主のことを話す水錫。一応、前店主のことを心配していた影人はホッと胸をなで下ろした。

「で、君は何を買いにきたんだい? 風洛の制服を着てるってことは高校生だろうし、高校生となるとやっぱりプラモデル?」

「いや、また組みたいなとは思いましたけど、今日はそうじゃなくて・・・・・・・その、悩んだ末にここに来たといいますか」

「ん? どういうこと?」

「ええと、実は・・・・・・・」

 影人は水錫に事情を話した。事情を聞いた水錫は「ふむふむ、なるほど」と相づちを打って言葉を続けた。

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