「青の炎」 貴志裕介
この作品は「倒叙推理小説」というものに当てはまるそうです。
この倒叙推理小説について、詳しいことは解説で書かれていましたが、簡単に言うと、犯人側の視点で描かれるタイプの推理小説ということになります。
作品の主人公である櫛森秀一は、普通の高校生。隠れてお酒を飲んだりちょっと悪いこともしているけれど、表面的にはどこにでもいるような男子です。
けれど、母親と妹と平和に過ごしていた日常を壊す、母親の元夫の曾根という男がやってきたことから、彼のささやかな平和は脅かされることになります。
そしてついに、母と妹を護るために、彼は曾根を葬り去る計画を立てたのでした。
倒叙ものの醍醐味は、やはり犯人側の内面が詳細に描かれるところにありますね。
普通のミステリーだと犯人が明かされるのは終盤。そこまでの心理は探偵役が担うことが多いはずです。
しかしこの犯人側の心理というのは共感されにくいというところが難しいと思うのですが、こちらの作品は母と妹を護るという正義感から殺人へと繋がっていくところがうまくその辺りを自然に扱っているなと思いました。
あとは秀一と紀子というクラスメートの女の子の微妙な関係が、ある意味青春小説で、後半にかけてはせつなさが加速しましたね。
途中まではやはり共感しにくい部分も多かったのですが、ラストにはせつなくなりました。




