第69話:明らかに異常ですわ――。
「ハァ……! ハァ……! ハァ……!」
ラース先生は立っているのもやっとの、満身創痍ですわ。
もう魔力も完全にゼロでしょうし、本当にギリギリの戦いでしたわね……。
それでも勝ったのはラース先生ですわ!
今日はラース先生の、優勝記念日ですわッ!
「ハハハ! おめでとう神様」
フリードがラース先生に、握手を求めます。
「ありがとうフリード。僕が優勝できたのは、君とミストのお陰だ」
ラース先生はフリードと、固い握手を交わしました。
「いや、それは違うな。ミストも言ってたが、俺やミストはあんたが生み出した存在なんだから、優勝したのはあくまでも、神様の実力だぜ」
「はは、そうかな」
その通りですわ!
今回の大会で確信しましたが、今のラース先生はマジで、相当強くなってますわよ!
「じゃあな、後はお若い二人に任せてってことで」
「あ、うん」
フリードはわたくしにパチリとウィンクしてから、光の粒になって消えました。
んん??
今のはどういう意味です??
ま、まあいいですわ。
「ラース先生!」
「ニャッポリート」
結界が解除された途端わたくしは舞台に上がり、ラース先生のところに駆け寄りました。
「優勝おめでとうございますわッ!」
「ニャッポリート」
わたくしはラース先生の右手を両手でギュッと握り、精一杯の称賛を贈ります。
「……ありがとうございます、ヴィクトリア隊長。僕が優勝できたのは、ヴィクトリア隊長が僕をここまで鍛えてくれたからです」
「ラース先生……!」
ラース先生は天使のような笑みを浮かべながら、わたくしの目をじっと見つめます。
――この瞬間、またわたくしの心臓が、トゥンクと跳ねました。
はわわわわわわわ……!?
「……ところでヴィクトリア隊長、ゲロルト様としていた約束を、覚えておられますか?」
「え?」
約束?
――あっ!
そ、そういえばゲロルトはこの大会が始まる前に、「この中で勝った人間が、【武神令嬢】を妻とする!」って言ってましたわね!?
ということはわたくしは、ララララララース先生の、妻、に!?!?
えーーー!?!?!?
そそそそそ、そんなああああああ!!!!
急にそんなこと言われても、こ、心の準備があああああああ!!!!
「ふふ、冗談ですよ」
「ふえ?」
ラース先生??
「こんなズルい手段で、プロポーズはしませんよ」
「あ、そ、そうですか」
な、なぁんだ。
そりゃそうですわよね!
もう、ビックリしちゃいましたわ!
あれ?
でも何故でしょうか……?
少しだけ、残念な気もするのは……??
「――でも、いつかきっと」
「??」
ラース先生は真剣な表情で、わたくしをじっと見つめます。
ラ、ラース先生???
「ゲロルト様、しっかりしてください」
その時でした。
全身傷だらけで気絶しているゲロルトに、アメリーさんが駆け寄って、膝枕をしました。
やれやれ、お安くないですわね。
「さあ、これを飲んでください、ゲロルト様」
「「「――!!」」」
アメリーさんは懐から血のように赤黒い液体が入った小瓶を取り出し、その中身をゲロルトに飲ませました。
あ、あれは――!!?
「――う、ぐ、グアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「「「――!!!!」」」
ゲロルトの身体が見る見るうちに肥大化していき、悪魔のような風貌になりました。
ですが、今までに比べると、サイズが明らかに異常ですわ――。
優に4メートル近くはある、巨人になっております……。
「――くっ! そうか、貴様がそうだったのか――!!」
ラース先生が激しい怒りを滲ませながら、アメリーさんを睨みつけます。
アメリーさんはまるで、この世の全てを知り尽くした老博士のように優雅に立ち上がり、こう言いました――。
「ククク、その通りだよラースくん。私が【弱者の軍勢】の総帥、【好奇神】こと、ヨハン・フランケンシュタインだ」




