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勇者側で召喚されたはずの俺が魔王側にいるんですけど!?  作者: YoneR
第一章

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街へ(2)

すみません。早いと言っていたのに遅くなりました。代わりに今回は長いです。六千五百字!

「ねぇ、これはどう?」

「これはー?」

「こっちもありかな?」

「あー、はいはい。とっても似合ってますよ。ネーア様。」


俺たちはデキレッタ一行との一件の後、近くの屋台のおじさんから道を聞き、ここノースハザードの、俺たちがさまよっていた南西部とは真逆の北東部にあった服屋にたどり着いた。ネーアは方向音痴らしい。


そして、服屋に入ってからおよそ3分ほどでネーアが俺の服を選び、今はネーアの服選び中だ。ネーアが自身の服を選びだしてから30分以上が経過している。


 はぁー。こりゃ完全にファッションショーだな。それにしてもなんでこんなに女性は服を買うのが好きなのだろうか。別に男性にも服が好きな人はいるが、俺には理解できそうもないな。


「むぅー、琉斗ちゃんと考えて返事してる?」

「考えてますよ。」


 どうしたら早く終わるのかを。


「うーん。いったん持ってきたやつは全部着終わったかな?あたし他のもとってきてみる。」

「そうか。じゃあ俺はほかのお店に行こうと思っ」

俺が店を後にしようとすると、ネーアは俺の買ったばかりのローブのフードを引っ張ってきた。

「ちょっと待った。何勝手にどっか行こうとしてるのよ。」

「はぁー。」

俺はため息をつく。


しかし、ネーアは俺の思っていたのとは違う反応をした。

「・・・もしかして、あたしとの買い物楽しくない?」

そう少しうつむき加減になって言った。


「別にそうはいってない。むしろ、今までの中でもかなり楽しいほうだ。だが、さすがに飽きてくるだろう?」

「そっかー。」

「それにだ。俺が今から行こうとしているのは、魔道具店だぞ。あのトカゲがいた・・」

そういうとネーアの顔がだんだんと青ざめ始めた。

「まぁー、俺は待っててもいいんだがネーアも一緒に来るか?」

「ぜ、ぜっっっったいに行かないから。あんなところ。さっさと行ってきなさい。」


俺が行こうとしている魔道具店はここに来る途中に見つけた店だ。



数時間前


「うーん!これおいしい!」

「そうか。それは良かった。」

ネーアは木の棒がついてる透明な糸がたくさん集まったものを食べている。俺がいた世界での綿あめのようなものだ。違いは何かソースのようなものをかけて食べることくらいだ。あと、原材料は砂糖よりも甘さが抑えてある。子供に人気だった。ふわれーと、という名前だ。


「こっちの世界に来てから魔王城でしか食べてなかったけど、これからは街で食べるのもありだなー。」

基本的に召喚人は魔王城で朝、昼、夜の三食を無料で食べることができる。ただし、一部の高級料理は別代金を払う必要がある。たいていの召喚人は魔王城で食べている。


 ようやく機嫌が直ったか。子供のお菓子で機嫌が直るってどうなんだか。そういえばネーアって何歳なんだろ?


ネーアはデキレッタ一行との一件のあと少し落ち込んでいたように見えた。そこで、俺が元気づけるため、尻尾を思いっきりもふもふしたら、尻尾はネーアの弱点だったらしくふにゃふにゃふにゃとなって座りこんでしまい、きつく睨まれた。その後、力が抜けたといって俺におんぶをせがんできたが、さすがに大勢の前でおんぶをするのは恥ずかしいのでこのお菓子を買ったのだ。


「よーし!じゃ行こっか。」

「ああ、そうだな。」

ここで年齢を聞いてまた機嫌が悪くなるのは面倒なのでまた今度にする。


「はいっ。じゃあおんぶして。」

「・・・え?」

これは完全に予想外だった。


「おまえなぁ。こんな人通りの多いところでおんぶされて恥ずかしくないのか?ていうか、おまえって何歳なんだ?」

年齢を聞かないでおこうとしたのはやめた。こういう聞き方だったら大丈夫だろう。


「ん?18才よ。っていうかあたしはおまえじゃなくてネーアって名前があるんだからおまえって呼ばないでよね。」


 ・・・まじか。絶対に年下だと思っていたのにまさかの年上とは。


俺は17才だ。


「それを言うならネーアだって俺のことあんたとしか呼ばないじゃないか。俺のことをちゃんと名前で呼ぶならこれからは一切おまえ呼ばわりしない。」

「分かったわよ。・・・りゅ、琉斗。」

ネーアはどこか恥ずかしそうにそういう。


「で、さっきの質問だけどあたしは別に恥ずかしくないよ。」

「はぁ。まあいい。わかったよ。おんぶしてやる。」

「やった!」

尻尾をぶんぶん振っている。


 なんでそんなにおんぶされたいのだか。


そうして俺はネーアを背負って街を歩きだした。


「ねぇ、あの店なんのお店だろう。」

ネーアが指を指したのはどこか古びた感じのする『リルメ』という看板を掲げたお店だ。一応外から中を見ることができるようにはなっているのだが、店内が暗すぎてどんな商品を置いてあるのかが一切わからない。


「入ってみるか?」

「うん!」

俺はネーアを背負ったままその店に入った。


「どうぞいらっしゃいませ。お客様。どのようなものをお探しですか。」

そう言って俺たちを出迎えたのは、茶色よりも少し暗めの色をした翼をもつ年をとった男の獣人だった。左肩に黄色の目をした青緑のトカゲが乗っている。


「いや。特にこれといって探しているものがあって入ったわけじゃないんだ。ここはなんの店なんだ?」

「ああ、なるほど。ここは魔道具などを販売する店です。魔道具を傷つけないために暗光石のライトを使用しているので、外からは非常に見えにくくなっています。」


【魔道具】

 様々な効果が付与された道具のこと。たいていのものは魔石がエネルギー源となっている。銅貨3枚程度のものから白金貨300枚程の値が付くものもあり、価値はものによって大きく異なる。


【暗光石】

 光を吸収する鉱石。ただ、その吸収速度は遅く、ゆっくりと光が移動する様子を観察することができる。魔道具店などのライトに使用される。


「そういうことだったのか。俺たちは召喚人なんだが何かおすすめの品はあるか?」

「ああ、なるほど。あなた方は召喚人なのですね。でしたらあれなんかはいかがでしょう。少々お待ちください。」


召喚人については全世界にその話が広まっている。異世界人だということに異様な目つきで見られにくいのは魔王やその家臣たちによる配慮のおかげだろう。召喚前から召喚人がどのような者たちであるかについての情報を広めていたということは宮廷魔導士リーゼの話から聞いている。


「このネックレスはいかがでしょう。魔力量上昇(小の5)、魔法耐性(軽)、あと魔力を注ぐと赤く光るためライトとしても使用できます。」

青い一つの宝石のついたネックレスを持ってきた。


「へぇー。試しに魔力を注いでみていいか?」

「ええ、もちろんです。」


俺は試しに魔力を3注いでみる。

すると青い宝石が赤く輝いた。かなり暗かったおよそ学校の教室1.5個分ほどの広さの店内が赤い光で満たされる。


「おおー。結構いいんじゃないか。これいくらだ?」

「金貨4枚と銅貨7枚です。」


 ううーん。俺たちが魔王から与えられたお金は銀貨30枚と金貨40枚。これが高いのかどうか相場がわからないが、買ってみてもいいのではないだろうか。


俺たちの世界では価値の高いほうから白金、金、銀、銅というイメージが強いが、この世界は金より銀のほうが希少で価値が高い。銅貨10枚で金貨1枚、金貨50枚で銀貨1枚、銀貨20枚で白金貨1枚だ。


「ネーア。これ買ってみるか?俺としては買ってもいいと思っているけど。」

「・・・・」

「・・・ん?ネーア?どうかしたのか?」


ネーアからの返事がない。


 そういえば店に入った時から一言も話していなかった。それに俺にしがみつく力が強くなっている気がする。


「・・・出て」

「え?」

「・・・早く、外、出て」

ネーアが俺の耳元でささやく。


「・・・ああ、わかった。悪いけどネーアの調子が悪いようなんで一旦帰ります。」

「ああ、なるほど。ではまたのご来店をお待ちしております。」

肩に乗っているトカゲが俺に舌でちゅろちゅろと挨拶をする。

俺は手を振り返しながら店の外に出た。




「なぁ、大丈夫なのか?体調悪いなら部屋まで送っていくぞ。」

俺は近くのベンチにネーアを下ろしながらそう言う。

「ううん。体調は大丈夫。」

ネーアの声のトーンが戻ってきている気がした。

「なら、どうしたんだ?」

「あたし、トカゲとかそういう系は絶対に無理。」

「あー。」

ネーアは爬虫類が大の苦手であるということが分かった。



俺はフードを被った尻尾のはえた人とすれ違いながら店を出た。


魔道具店「リルメ」に向かう。


 せっかくだからこの世界に来て初めての魔法を使ってみるか。

そう思い俺は初めてのギミックの生成をする。


「陰なる移動」


俺の体全体を黒い魔力が覆い、一瞬で俺は魔道具店の横の細道に転移した。


〚陰なる移動〛

 体に陰をまとい、任意の場所へ移動する。ただし、日光が強い場所への移動は成功確率が50%へと半減する。――――。


俺は本日2回目の魔道具店への来店をする。


「どうぞいらっしゃいませ。本日2回目のご来店ですね。お連れ様は大丈夫でしたか。」

「ああ、大丈夫だ。非常に言いにくいことなんだが、どうやら爬虫類が苦手らしくてな。」

「ああ、なるほど。このリルメが苦手だったのですね。」


どうやら肩に乗っているトカゲの名前はリルメらしい。そこから店の名前を付けたそうだ。言葉の初めに『ああ、なるほど』をつけるのはがこの人、ウィドレートさんの口癖のようだ。


「いくつか買いたいものがあるから用意してほしい。もしなかったら別の店を紹介してくれ。」

「ああ、なるほど。かしこまりました。ただ、この店にないものをそろえているお店はなかなかないと思いますよ。」

俺はいくつかの魔道具と魔石を購入した。俺が頼んだものでこの店にないものはなかった。


「全部で銀貨25枚と金貨13枚、銅貨7枚になりますが、銅貨の分はサービスしておきます。しかし、これほどの量をどう持って帰られるおつもりで?」

「ああ、それは問題ない。サービスはありがたくいただく。」


俺はまた、新しくギミックを生成する。


「陰なる収納」


俺は右手を開いて前に出す。

俺が購入した商品が黒い魔力で覆われ、蒸発するかのように消えた。


〚陰なる収納〛

 ありとあらゆるものを収納する。容量に制限なし。収納されたもの同士が混ざり合うことはない。


「おお。召喚されてまだ2日なのによくギミックを使いこなしていますな。」

「まぁな。まだ生活の役に立つというギミックだけだが。」

「またのご来店をお待ちしています。」


俺は店を出ようと、扉を開ける。

すると何かにゴッと当たった感触がした。


「うぅー、いったぁー。」

「・・・なんでここに来ているんだ?」

「えぇっと、それは・・・」

扉の先にいたのはネーアだった。

俺を見て一瞬喜びを見せ、その後すぐに視線を逸らす。

「さみしがり屋。」

「ち、ち、違うし!!」


============================


「ねぇ、あたしたちっていつか勇者側の人たちと戦わないといけなくなるんだよね。」

「帰るためにはそうしないといけないようだな。」

 俺は向こうの世界じゃ死んだも同然の召喚のタイミングだったからべつに帰りたいとは思っていないが。


「でも、勇者側に召喚された人たちもあたしたちと同じ世界の人だからなんかいやだなぁ。」

「まぁ、相手がどんなやつなのかにもよるけどな。」

この世界は命の価値は軽い。


「うーん。それはそうだけどさ、それにそもそも、あたしたちってまだ何の訓練とかもしてないよね。」

「まずはこの世界に慣れろってことだろ。ただ、自主練ぐらいはしてみてもいいかもな。というか、俺はもうしてるぞ。」

 ついさっきな。


「えぇー!何抜け駆けしてんのよ。」

「別に抜け駆けはしていない。俺が勝手にしてても自由だろ。」

「それはそうだけどさ。・・・あたしを誘ってくれてもいいのに。」

ネーアは自分を誘ってくれなかったことが不満なようだ。


「じゃあ、今からしてみるか。」

俺はネーアの肩に手を回す。

「うへぇっ!」

 別に肩に触れたくらいでそんなに驚かなくてもいいのに。


「いくぞ。」

「えっ、ど、どこに?」


俺は〚陰なる移動〛を使う。

俺とネーアの体が黒い魔力で覆われる。


一瞬で武器屋の前に着く。


「ほら、着いたぞ。」

「す、すごーい!今のなにー!?」

「俺のギミックだ。陰なる移動という名前だ。」


【ギミック】

 その人の魔法属性の技。火球(ファイアボール)などのようにありきたりなものは他人と同じことがあるが、基本的にはその人のオリジナル。ストレンジスキルほどの自由度はないが、自分の考えた魔法が使える。名前は考えられた能力によって自動的に決まる。また、そのギミックに熟練すると、自然とギミックが発現、進化する場合がまれにある。


「どうやってギミックを作ったのかのか教えてよね。」

「ああ、また今度な。とりあえず今日はここで武器を買って帰らないか。日がかなり落ちてきた。」

「分かった。絶対に教えてよね。」


俺たちは武器屋「キーラル」に入った。


「へい!いらっしゃい!カップルでご来店とは珍しいこった。」

俺たちを出迎えたのは、身長が2メートルはこえているであろう石人の若い男だった。

石人(せきじん)

 皮膚が岩石で覆われている人。一般に体が大きい。魔王国のみに住んでいる。工事や鍛冶、盾兵などの職業についているものが多い。


「かっ、カップル!?」

ネーアがひどく動揺している。


「いや、別にカップルじゃない。」

「・・・・・」

「それで、今日はどんな得物を買いに?」


 さーて。どんな武器がいいだろうか。正直まだ、まったく戦闘スタイルが決まっていない。


「まだ決まっていないんだ。何か俺たちにおすすめを紹介してほしい。」

「そういうことなら任せておけ。魔法属性は?」

「陰だ」

「光よ」

そう言うと石人は目を丸くした。


「へぇー!二人とも珍しいな。陰も珍しいが、光はここ魔王国じゃなかなか見かけないぞ。」

「俺たちが、召喚人だからって理由もあるかもしれないがな。」

「おー!お前たちが召喚人か!」


その石人は俺たちと話しながら武器を選んでくれている。


「まずは陰のにいちゃんのほうから。この武器はどうだ?」

そういって渡されたのは刀身が黒く、刃渡りが少し長めの刀だ。

受け取ってみると見た目から予想していたよりもはるかに軽く、だが、それでなお力を感じられた。


「そいつは俺がうったものだ。自信作だぜ。魔力量1000まで耐えられるぞ。あと、速度上昇(中の4)がある。」


なかなかにいいものだと感じた。


「で、光のねえちゃんにはこれだ。」

ネーアには刀身が透明の少し曲がりのある刀が渡された。


「そいつは俺の師匠がうったものだ。魔力量は4000まで。光魔法との相性がとてもいい。」

「へぇー!ねぇ、琉斗。これよさそうじゃない?」

ネーアも気に入ったようだ。


「この二つを買う。いくらだ?」

「本来なら合計銀貨7枚、金貨37枚なんだが、召喚人だから特別に銀貨5枚、金貨25枚にまけておいてやる。」

「よし、それで買おう。」

俺はネーアの分もまとめて払う。


「えっ、琉斗。あたしお金にまだ困ってないから払うよ。」

「別に気にしなくていい。俺が払おうと思っただけだ。」


俺は店を出ようとする。


石人がネーアに何やら話している。

「ねえちゃん、なかなかいい彼氏を見つけたじゃないか。」

「なぁっっ!べっ、別に彼氏じゃないし!」

「だが、その気はあるんだろう?」

「っっ!!」

「ははっ、次来た時に進展あったら聞かせてくれよ。」


ネーアが俺のところへ戻ってきた。なぜか顔が真っ赤になっている。


「じゃあな。俺の名前はログスだ。また来てくれよ。」

「ああ。」

「・・・」


============================


俺とネーアは魔王城の入り口まで戻ってきた。


「ねぇ、琉斗。この後何食べる?」

「・・・悪いネーア。俺、どっかに魔道具店で買ったものを置いてきてしまったみたいだ。いつになるかわからないから一人で食べて部屋に帰っててくれ。」

「えぇー。まぁ、仕方ないか。わかった。じゃ、また明日ー。」

「ああ、また明日。」


ネーアは魔王城へと去っていく。


「ネーア。」

俺はそれを呼び止める。


「ん?どうしたの?」

「部屋の戸締りはしっかりとしろよ。」

俺は真剣な声色でそう言う。


「・・・?わかった。」

ネーアは俺の言葉に疑問を浮かべたようだったが、素直に返事した。


「じゃあ。」

「うん!」


俺は夜の帳がおりた街に戻っていく。








俺の後を二つの影が追っていた。




今の琉斗のレートカード

《名前》 瀬川琉斗

《ランク》 勇者 ℤランク

《魔力量》 12800

《魔法属性》 陰

《ストレンジスキル》 (指定なし)

《家臣》 (未)

《ギミック》 ・陰なる移動 ・陰なる収納



ちなみに段落が下がってるところは琉斗の心の声、=の仕切りは時間経過、♢の仕切り内は以前の出来事を表しているつもりです。

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