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勇者側で召喚されたはずの俺が魔王側にいるんですけど!?  作者: YoneR
第一章

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カラズにて

カランッ


俺はギルドの扉を開けた。

すると、何人かの知っている顔があった。


「あれ?琉斗君じゃない。久しぶりーってほどじゃないか。数日ぶり。こっちおいでー。」

「こんばんわー。」

「よっす。」

「うん。」

「・・・。」


召喚順4、8、9、12、29番の人達が大きなテーブルに集まってお酒や料理を食べている。


「・・・それじゃあお邪魔させてもらいます。」

俺としては断りたかったのだが、そもそも断れるような雰囲気ではなかったので仕方なく誘われるがままに席に座った。


ここにいるのはすべて俺より召喚順が上の人だ。


「琉斗くーん。家臣集めは順調?今カラズに来たってことは前の街のダンジョンクリアしたってことでしょ?」

そう言って俺の隣の席からお酒を突き出してきているのが、虫人の美女、召喚順4番のミルフェルン。きれいな薄橙色の髪で、茶色に近い色の虫人特有の目だ。


「まあまあですね。あと、俺はお酒飲みませんよ。」

「えーっ、そんなぁー。おいしいよ、お酒。ていうか同じ魔人同士なんだからもっと気楽に話さない?」

ミルは酒好きだ。最初を除いて、酒を飲んでいない状態で会ったことがない。


 それもそうか。ミルがそれでいいならそうしよう。


俺は、長い付き合いになりそうな人には普通の話し方、少しだけの関係の人や面倒ごとになりそうなときには敬語で話している。

だが、やはり敬語で話すのはめんどくさい。


「分かった。それで、ミルさんはどんな感じなんだ?というかこれはどういう集まりだ?」

「うんうん。そっちの方がいいわ。」

ミルが満足げにうなずき、再びお酒を突き出してきたが、突き返した。


「むー。」

「俺たちはパーティーを組んで中迷宮攻略を目指してんだ。俺はジェクだ。よろしくな琉斗。」

不満げに口先をとがらせているミルの代わりに答えたのが召喚順8番の男だ。

頭の左側から血のように赤い角が1本生えている。


「俺は半鬼って種族だ。」

俺が角を見ていることに気づいてか、そう答えてくれた。


俺はよろしくと言いながら握手をした。


「あ、そっかー。私は琉斗君と話したことあるけどみんなは初めてかー。じゃあ、私が紹介してあげる。まず、この子はユユリ。私と同じ世界から来た子よ。」

「よろしくー。」

召喚順29番。ピンク色の髪で、さらに薄いピンク色の目をしている女の虫人だ。


「よろしく。」

「で、そっちの無口がテーツ。」

「・・・。」

無言でお辞儀してきたのが、召喚順9番の虎の獣人だ。見るからに力が強そうである。


俺もお辞儀をする。


「で、最後がクレイ。」

「よろしく。」

体全体が透き通っており、とても薄い青色の髪と目をしている女だ。死霊なのだろう。とても澄んだ声をしていた。


「よろしく。」

「うんうん。私たちはジェクが言っていた通り、パーティーを組んで一緒に中迷宮攻略をしているの。今で4分の3ぐらいかしらね。琉斗君はどんな感じ?そういえばネーアちゃんは?どうしてこの街に来たの?」

「俺はキリトの中ダンジョンを攻略して、それで大ダンジョンでも大丈夫そうだと感じたからこの街に来た。キリトの大ダンジョンは時間がかかるからな。」


本当は中迷宮も2つともクリアしているのだが、それを言うことはできないためそう答えた。


ここカラズには大ダンジョンが1つ、中迷宮3つ、大迷宮1つ、そして超迷宮が1つある。


実際の目的は大ダンジョンではなくミルたちと同じ中迷宮だ。迷宮内で出くわさないように気をつけないといけない。


「それで、ネーアはその大ダンジョンに間違えて入ってしまって今は大ダンジョン攻略中だ。一度入ると攻略まで出られなくなるからな。」

「なるほどねー。よかった。ネーアちゃんと喧嘩でもしてきたのかと思った。」

「ん?そのネーアってのは誰のことだ?」

ジェクが聞いてきた。


「ネーアちゃんは召喚順が琉斗君の前の、狐の女の子のこと。ジェクも知っているんじゃない?ほら、前に集められた時に琉斗君に泣きついてた子よ。」

「あー、あいつか。」

そう言って指を鳴らす。


「あの子結構かわいいよねー。ねぇ、琉斗さんとはどういう関係なの?かなり仲が良さそうだったけど。」

「うん、思いっきり抱き着いてた。」

(なっ!?ちょっと!我が王、どういうことですか!?聞いてる話と違うんですが!?)

ここで、今まで特に話しかけてこなかったフレアが念話を送ってきた。

イヤリングの中に入っている。


ちなみにエミュリア、フィシアは宿にいる。


俺たちがカラズについたのは、キリトからはまあまあ離れているため出発してから2日目の夕方だった。


宿をとって、夕食をギルドで買おうとしてきたらミルに捕まったというわけだ。


「ただの友達だ。」

「ほんとに?」

(本当ですか?)

ユユリとフレアの声がはもった。


 フレアはわかるが、なぜユユリまで疑ってくる?


「ああ。普通よりもかなり速く仲良くなったから何かあるんじゃないかと思われるのは仕方ないのかもしれないが、他に同じ世界から来た人がいなかったという理由で仲良くなっただけだ。あと、ネーアがよくくっついてくるのはさみしがり屋だからだな。」

「それだけじゃないと思うけど・・・」

「そっかー。じゃあ特に進展はなかった感じかー。てっきりあの感じだと、友達以上恋人未満ぐらいにはいってると思ってたのになー。」

「私もそう思ってた。」

(ここまで周りに言われる関係って・・・。エミュにミィにフィシアに・・・我が王の女たらし!)

(いや、そもそもフレアと出会ったのはネーアが大ダンジョンに入った後だから女たらしにはならないだろう。)


ただ、俺の周りに女子が多いとは感じている。

完全にたまたまだ。


(まあ、そうですけど・・・。)

フレアは少し嫉妬しているようだった。


 はぁ、少しあれだが、フレアの機嫌を直すためだからな。



「ミルさんたちには俺とネーアが恋人のように見えてたのかもしれないが、まったくもってそういう関係ではないし、そもそも俺には恋人がいる。」

「「「えっ!」」」

驚きの声が上がる。


「琉斗君!?それ本当に言ってるの!?」

「この世界での!?」

「本当なの?」

「ああ、この世界に恋人がいるぞ。」


(我が王・・・。)

(俺の恋人はフレアだろ?)


フレアがこう言ってほしいのはなんとなく分かった。


(ふふ、うれしいです!ありがとうございます!)

かなり喜んでくれたようだ。


「うわぁ・・・ネーアちゃん絶対泣いちゃう。」

「かわいそう。」

「うん。どんな人なの?独占欲強い?」

「なあ、いい加減琉斗の恋愛話はもういいだろ?ったく、異世界ハーレムつくりやがって・・・。」


 つくってない。


「さっきからテーツが黙って黙々と食べてる。話題を変えようぜ。」

『黙って』と『黙々と』の意味が重複しているが、実際そんな感じだった。みんなは話に夢中になって全く進んでいないのに、テーツだけは食べ進めていた。


「・・・みんなが話し過ぎなだけだ。料理が冷めるぞ。」

「私としてはネーアちゃんのためにもっと聞きたかったのだけど・・・。はぁ、まあそうね。料理が冷めちゃうとよくないもんね。」

「あ、俺はご飯を食べに来たんじゃなくて買いに来ただけだから帰ってもいいか?」


エミュリアとフィシアが待っている。

あまり遅くなるといけない。


「何で?って、うわぁー。」

「そうかよ。さっさと帰ってイチャイチャしてろ。」

完全に恋人と食べるために買って帰るのだと勘違いされている。


否定するとじゃあ誰と食べるんだと聞かれそうなのでそのままにしておいた。


「じゃあ、琉斗君またねー。また今度ゆっくり話そうね。あと、ネーアちゃんにも変わらず優しく接してあげてね。」

「ああ、友達なのは変わらないからな。」

「ばいばい。」

「ばいばーい。」

「・・・また。」



俺は夕食を買ってギルドを出た。


(我が王?)

上機嫌な声でフレアが話しかけてきた。


(ん?)

(帰ったらイチャイチャしましょうね♪)

(・・・あ、ああ。)



============================



「あーあ、琉斗君帰っちゃった。一緒にお酒飲みたかったのになー。」

「仕方ないだろ。恋人がいるならそっちが優先になる。」

「へぇ~、ジェクって案外そういうとこはしっかりしてるのね。」

「確かに。」

「・・・意外ではあるな。」

「おいおい、俺をなんだと思っている。」

そう言ってジェクはおもむろに手のひらを見た。



少し目を見開く。



「それじゃあ、なんか恋愛話になったからみんなの現状でも話す?」

ユユリがそう言った。

「いいわねー。じゃあ、言い出しっぺのユユリから話してよ。誰が良さそうに見えてるの?」

「んーっとね。」

「ちょっと待て。そういうのは異性のいない場で話すもんじゃないのか。」

「べつにいいんじゃない?ジェクも気にしないでしょ?・・・ジェク?」

「・・・あ、悪い。で、なんだって?」

「だからー、―――」


ジェクは驚きを隠しながら話に戻った。


(しっかし、あいつも同じだとはな・・・。これはどうなっている?)



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