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勇者側で召喚されたはずの俺が魔王側にいるんですけど!?  作者: YoneR
第一章

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家臣1人目

ちょっと短め。

〖フィシア視点〗


 やばい、やばい、やばい。


私は布団の中にもぐりながら、かなり焦っていた。


 だって、こんな速く攻略が終わることを予想するなんて無理。私悪くない、私悪くない・・・。


審査状態にあった琉斗という人が、あっという間に家臣を得るための経験値を獲得してしまったのだ。


私の世界は向こうの世界に一度救われたことがあるらしい。

それで、ある一定の強さ、経験値を持った人に家臣として仕えるようになったそう。


私は家臣学校の生徒の1人。


家臣学校とは名前の通り、優秀な家臣となる人を育成するための学校。


私はその中でも魔法科所属。5才で入学してから今の15才になるまで一度も首席から陥落したことがない。


つまり私は優等生。


私は天才。


私はあまりに優秀であるがために今まで一度も審査状態になったことがなかった。


主となる人の力量に合った人が家臣として選ばれるから。


審査状態とは自分たちがその人に仕えてもいいかどうか、その性格や見た目、行動を見て判断するためのシステム。


仕えたてもいいと思ったらその決定をし、その人の経験値が家臣を得るために必要な量を獲得したときに向こうの世界に行く。

反対に仕えたくないと思ったら同じようにその決定をし、別の人が審査状態となる。


私はどちらかというと誰にも仕えたくない派。家に引きこもって魔法の研究をしていたい。


だけど、世界の雰囲気としては、審査状態になったらできるだけ仕えろという感じ。


だからいい人そうだったら仕えようと思ってた。


琉斗は敵には容赦ないけど、味方からは好かれている。特に問題ないと思った。


とある大問題を除いて。



 なんで、男・・・・。普通主人と家臣って同性しかありえないのに。男の人、怖い。いやだ。怖い。



私は男性恐怖症。それもかなりの。


男の人が近くにいるだけですごい緊張状態になるし、気分が悪くなる。


そして何より恐い。


目を合わせるなんて絶対に無理で、顔を見ることもできない。


それなのになんでか男の人は私をめっちゃ見て来るし、話しかけて来る。


視線が怖い。お願いだから話しかけてこないで。


肩に手を置かれたときなんかは気絶しそうになった。


それ以来私は授業には出ず、家に引きこもって魔法の研究をして、テストだけは先生と2人きりで後日受験。


 どうしよう。どうしよう。決定していないままだとその人は激しい頭痛がするって聞いた。たぶん琉斗が座り込んだのはそのせい。



「フィシアー!遊びに来たよー!・・・って、何やってるの?」

「ん、ミフリー?」


突然部屋の扉が空き、1人の少女が入ってきた。


私はそれを見て少し安心する。


頭の上にかわいらしい獣耳がついていて、お尻からはふわふわの尻尾が生えてる。茶色のショートヘア。

イタチの獣人の女の子。


私の唯一の友達、親友のミフリー。


武闘科所属でぶっちぎりの首席。


ちなみに私は頭から2本の触覚が生えていて、後ろには透明な羽がある虫人。


「どうしたのー?風邪?そんなに布団にくるまってー。まぁ、いっつもくるまってるけどさぁ。」

「ん、実はね。」


私はミフリーに今の状態を説明した。


「えー!?フィシアが審査状態になるなんてどんな人なんだろ!?っていうか早くしないとまずいよそれ!」

「うん。」

「なんでなんで!?何をそんなに迷ってるの?悪い人じゃなさそうなんでしょ?」

「悪い人じゃなさそう。むしろ優しいほう。」

「それならどうし――」

「男の人。」

「え!」


ミフリーがとても驚いた顔をしてる。


「ははぁーん?」

「?」

「ついにフィシアにも春がきたのかぁー。」


 ん?どゆこと?


「いやだってさ。あれだけ男嫌いのフィシアが行くかどうか悩んでるんだよ?これはなかなかに大事。」

「だって、基本的に審査状態になったら行けって・・・」

「でも絶対参加のちょっとした首席会議でもフィシア参加しないじゃん。」

「・・・」

「どんな人なの?熱血系?清楚系?やっぱりイケメンなの?」


ミフリーの熱意がすごい。


「ええと、清楚系、だと思う。顔は、イケメンなほう?」

「へぇ~、やっぱり!」

「ミフリー、どうしたらいいと思う?」


 わからない。確かに今まで会ってきたたいていの男の人より抵抗はないけど、それでも怖いのは怖い。


「すぐに行くべきだねっ!」

「・・・」

「とにかく、今その人は頭痛に襲われてるはずだからどちらにせよ決定はしないといけない。それに、その頭痛がフィシアのせいだって分かると行ってから怒られるかもしれないでしょ。」


 たしかに。


「そ・れ・にー!せっかくの初恋相手になるかもしれないんだから!」


 えー。正直、恋愛には興味ない。


「ささっ、早く行って来たら。」

「でも、そうしたらミフリーに会えなくなる・・・。」

「大丈夫!もしその人が嫌になったら適当な理由つけてこっちに戻ってきたらいいし、」


本来はそんなこと許されてない。


「それにフィシアが選ばれるぐらいの人なら私も選ばれるかもしれないよ?」


 そうなったらいいなー。


「ん、じゃあ、行ってみる。」

「よぉし!それなら持ってくものの整理からだね。」

「ん、急がないと。」


============================


「ええっとー、フィシア?」

「ん?」

「ちょっと多すぎない!?」

「全然。むしろ少ない。」

「うそー。だって部屋からあふれ出てるよ?」


たくさんの魔法の研究に使うものとかで部屋があふれかえってる。


「ほんとなら収納の中身全部持っていきたいけど、世界の移動の負荷になるからだいぶ諦めてる。」

「てか、そろそろ行かないと本当に怒られるんじゃない?」


 あ、忘れてた。


「このぬいぐるみとか――あ、いるんですね。」

「絶対必要。」

「もう、これだけあるんだったら負荷限界超えてるから全部持ってったら?」


 ん、それ名案。


「わかった。そうする。」


私は決定を確定する。


「え、半分冗談だったのに・・・。まあいいや、それじゃあ、またねフィシア。」

「ん、また。ミフリー。」

「向こうに言ったらまず誤った方がいいよ。結構頭痛長かっただろうから!」

「分かった。」



 どうしよう。ミフリーが来て落ち着いてたけどやっぱり怖い。大丈夫かな?やっぱり怒られる?


「大丈夫。最悪逃げ帰ってきたらいいんだからさ。」


私の不安な気持ちが分かって、ミフリーが抱きしめてくれた。


「うん。ありがと。大好き。」


私もミフリーを抱きしめ返す。



そして、私は向こうの世界に行った。


着地は大失敗だったけど。



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